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ESGってなんでしたっけ?20220130解説

企業の非財務側面の評価軸として、すっかり定着しているESGです。1月下旬は、これを正面から取り上げたニュースが目に付きました。
週刊東洋経済1月22日号は、「特集 企業価値の新常識」、表紙には「非財務で生きる会社 死ぬ会社」と刺激的な文字が踊りました。

そこで、ESG関連ニュースはデイリーニュースには入れずに、まとめてみました。

そもそもESGとは?


ESGはEnvironment(環境)、Society(社会)、Governance(統治)の頭文字を並べたもので、企業の「非財務」側面の評価軸です。

「非財務」とは、直接お金で評価できない分野ということです。「財務」は毎年の決算書で評価できるし、そのやり方は会計のルールとして確立されています。

しかし、「非財務」の方は、未開拓というか、未踏の分野だったので、まずは基本的な考え方を確立する必要がありました。
そこで出てきたのがESGです。

といっても、SDGs同様、最近急に始まったブームのようにとらえている方もいるかもしれませんが、ESGというフレームが確立されたのは、実はかれこれ、もう20年近く前の2003-2004年ごろのことです。さらにルーツをさかのぼれば、1990年代のトリプルボトムラインという考え方に行きつきます(今回は端折ります)。

なぜESGの順番?

とにかく、企業評価の非財務側面の評価と言えば、ESGだ、ということで出回っているESGですが、どうして、E→S→Gの順番なのでしょうか?

3文字の順列組み合わせで言えば、ほかに、EGS、SEG、SGE、GES、GSEもあり得ます。

しかし、それらのでれでもなくESGであるのは、なぜなのでしょうか?

ESGのフレームを確立する議論の途中で出された文献を見てみると、ESGの順番や、表現には多少の振れ幅がありましたが、最終的にESGに落ち着いたのには、もっともな理由があると考えています。

頭の中で、3段重ねの鏡餅を思い描いてみてください(この記事のイラストを見てください)。

一番下の段の大きい餅が、E(環境)。すべての土台です。
その上に、S(社会)が存在します。
社会を土台として、経済活動が営まれ、その活動主体である企業が存在します。その、企業としての存在のありようが、非財務側面のG(統治)となります。
ついでに付け加えると、鏡餅の上にちょこんと乗っている「だいだい」が財務側面。
3段の鏡餅がかびたり、くさったり、小さくなったりすると、「だいだい」はころげ落ちてしまいますね。
で、この鏡餅を真上から見ると、同心円状になります。2次元の図で表現するなら、同心円が適切と考えています。

ESGがおろそか=墓穴を掘っている企業

つまり、企業が健全に事業活動を行う上で、土台となる、大事なものの順番から並べるとESGになる、と理解するとわかりやすいのではないでしょうか。

逆にいえば、ESGがおろそかな企業は、自らの存立基盤を危うくしているわけで、まさに墓穴を掘っているといえます。

そのような企業は、中長期的にみて、投資対象としてリスクを抱えていると評価されてしまいます。

そこで、とくに上場企業に対するESG情報の開示による説明責任(アカウンタビリティ)が厳しく強く求められるようになってきているわけです。

ルールは確立途上

ただ、そうはいっても、何をどこまでどのように情報開示すれば、ESGに関する説明責任(アカウンタビリティ)が十分に果たされたとするか、その手法論は確立の途上にあります。
会計(アカウンティング)のルールに比べると、まだまだ発展途上であり、評価結果も、評価機関によって異なります。

しかし、だからといって、何もしなくてよいというわけではなく、異論百出でありながらも、(とくに東証プライムに移行する)上場企業にとっては、ESG情報開示は進めなくてはならない目の前の実務的課題であり、企業価値を向上させる中ちゅき的な戦略的課題ともなってきています。

(そういうわけで、当社でも、そのサポートをしています)

最近の記事

・・・以上のような背景情報・予備知識をアタマに入れた上で、最近の記事、読んでいただくと、理解しやすくなるのではないかと思います。

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