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MLGsとは? 20220307解説

最近のデイリーSDGsニュースで取り上げた記事を眺めていて、思ったことがありまして。
その本題に入る前に、いきなりですが、質問です。「MLGs」とは何か、ご存知でしょうか?


???


答えです。

Meaningless Goals(MLGs):意味のない目標

・・・といっても、私が勝手に作った言葉です。ご存知でなくて当然です。無理にアルファベット4文字にしなくてもよいのですが、SDGsに似せてみました、それだけです。
※なお、たまたま同じ4文字になりましたが、滋賀県のMLGs(Mother Lake Goals)とは何ら関係がありませんので、念のため。

MFGsとMLGs

さて、会社でも、個人でも、将来の計画を立てる際に、目標を明確に設定する、というのは常識的に考えることですね。
しかし、目標には、意味のある目標(Meaningful Goals:MFGs)と、意味のない目標(Meaningless Goals:MLGs)がありえます。

MFGs

MFGsは、その「意味」がモチベーションの源泉となります。目標達成に近づけなければ、逆にモチベーションが高まります。なぜなら、成し遂げるだけの「意味」があるからです。できなければできないほど、どうにかしてできるようにしよう、と努力する方向になります。
そこで、意味のある目標を設定するためのSMARTルールとか、意味のある目標を確実に達成する目標管理プロセスとしてPDCAサイクルとかが編み出されました。
目標設定とか、目標管理とかいうとき、その目標には、やるだけの意味がある、つまりMFGsであることが、暗黙の前提となっています。
なお、目標なんかいらない、無理に立てなくてもいい、目の前のやるべきことをやればいい、という向きもありますが、その場合も、「目の前のやるべきこと」には、やるだけの意味があるという暗黙の前提があるはずです。
やるべきことに、期限と達成基準を設ければ、目標になります。期限と達成基準を設けなければ、任務になります。

MLGs

本線に戻ります。
目標を設定するとします。
しかし。SMARTルールなど知らなくても目標らしきものは立てられるし、意味のない目標でもPDCAサイクルらしき活動は可能です。

そのようにして、世の中には目標「もどき」とPDCA「もどき」があふれています。この目標「もどき」が、MLGsです。

セミナーなどで、MLGsの例として私がよく例に挙げるのが「勝ち抜きジャンケン大会」です。宴会の余興などで、2人1組から始めて、最後まで勝ち抜いた人が賞金や賞品をもらえるという、あれです。それなりに、盛り上がりますよね。勝ったら次も勝とうと欲が出るし、負けたらがっかりします(もしくは、別にもらえなくても悔しくないもんね、とか負け惜しみを言ったりします)。

ただ、だからといって、「勝ち抜きジャンケン大会」で勝ち続けることを人生の目標にしている人はいないですし、「勝ち抜きジャンケン大会」で生計を立てている人もいないでしょう(たぶん)。
「勝ち抜きジャンケン大会」で勝つことを業績目標として設定している会社も、そのための目標管理や教育訓練をしている会社もないでしょう(たぶん)。
「勝ち抜きジャンケン大会」が賞金の出る競技とか、宝くじのようなものになれば別ですが、、、それはほとんどギャンブルですね。

で、MLGsでも、瞬間的には、熱意をもって達成を目指すことは可能です。
しかし、そのために長期にわたり目指して努力せよ、となると、「いや、なんで?」となります。それはそうですね、意味がないわけですから。意味がないことを目標に掲げる理由がわかりませんし、意味がないことのために努力を継続する意味は、ますますわかりません。

SDGsはMFGs?MLGs?

さて、やっと本題です。
中小企業でも、SDGsの認知度が9割に達するようになりました。数年前は「非」認知度が9割でしたから、劇的な変化ではあります。
内容理解は4割、行動割合はもっと低いということになります。

中小企業9割SDGsを認知、内容理解は4割にとどまる

少し詳しく見てみましょう。
SDGs を経営に取り入れる意義や目的については、以下のような結果です(A)。

SDGs を経営に取り入れる意義や目的としては「企業の社会的責任」が 50.4%と最も高く、「企業イメージの向上」 (29.7%)、「従業員のモチベーションの向上」(27.6%)がこれに続く。

SDGs の取組みに向けた課題については、以下のような結果です(B)。

SDGs の取組みに向けた課題は、「何から取り組めばよいのか分からない」 ( 21.0% )が多 く、「取り組むことによるメリットが分からない」(19.3%)、「SDGsや取組方法に関する情報が少ない」(16.4%)などが続く。一方で、「特に課題はない、わからない」が全体の 36.5%を占めている。

結果A×結果Bで考察して言えるのは、どういうことでしょうか。

「企業の社会的責任」「企業イメージの向上」「従業員のモチベーションの向上」という意義や目的に対して、いちばん多い回答が「特に課題はない、わからない」。
これは、すでにその意義や目的が実現されているか(だとすれば素晴らしい!)、あるいは、「なんとなく」「世の中的には」そんなことじゃないかと思うが、「自社固有の意義や目的はない」、のいずれかでしょう。そして、まあほとんどの場合、後者でしょう。
思い切って断定的に言ってしまえば、多くの中小企業にとって、現状では、SDGsはMLGsだ、ということです。
MLGsなら、「何から取り組めばよいのか分からない」 、「取り組むことによるメリットが分からない」のは当然だし、そもそも「特に課題はない、わからない」のも当然でしょう。
ただし。SDGs自体が本質的にMLGsだ、というわけではありません。SDGsの意味は、2030アジェンダの前文に記載されています。

SDGs前文をガンダム風に〝超訳〟国連広報センター所長の感想は…?「領土もない、お金もない」から生まれた言葉

ほとんど誰も読まない2030アジェンダの前文、読んでもたしかにわかりにくいですが、上記記事に引用されているYoutubeの6分ほどの朗読(2倍速なら3分)を聞くだけでも、SDGsの意味に対する理解が深まると思います。

※外務省訳をちゃんと読んでみようという方は、こちらからどうぞ。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000101402.pdf

2030アジェンダは、①前文、②宣言、③SDGs、④実施手段、⑤フォローアップという構成になっています。
①前文、②宣言で書かれているのは、目的とビジョンです。これを実現するために、③SDGs(目標)と④実施手段が掲げられ、確実に実行していくための⑤フォローアップがある、という、いたって普通の計画書の建てつけです(むしろ、⑤があるところを見習うべき計画書が多いでしょう)。

ところが、なぜか①②④⑤なしで、独り歩きさせられているのが③SDGsです(その独り歩きせられているところだけを見て、SDGs批判を繰り広げる向きも少なからず見受けられますが、①②④⑤を見ていないという点では変わりません)。

少なくとも、①②は理解しておく必要があるし、〝超訳〟を視聴することで、その作業が「時短」できるかな、と思います。

ただ、SDGsは「人類や地球にとって」たしかに意味がある、MFDsだよね、という理解を得たとしても、ただちにSDGsがMFGsになるわけではありません。
「わが社にとって」SDGsがMFDsになるには、もう一段、「自社固有の意義や目的」が必要不可欠です。

【東京マラソン】大迫傑、キプチョゲに質問「どうしたら長く活躍できるか」回答は…

昨日行われた東京マラソン後の、大迫選手と優勝者キプチョゲ選手の問答をみてみましょう。ここにヒント、というかほぼ答えそのものがあります。

この日のテレビ中継にゲスト出演した大迫は、カメラの前に立ったキプチョゲに対し、「どうしたらコンスタントに長く活躍できるか」と質問。キプチョゲは「長く走り続けるにはプロフェッショナルであること、このスポーツを愛すること、自分がどこから来たのか、どこに行くのかを自覚して、自分を律して毎日走り、インスピレーションを与えること」と回答した。

https://www.nikkansports.com/sports/athletics/news/202203060000276.html

キプチョゲ選手のこの言葉、企業経営にそのまま当てはまるでしょう。
※Runには、「走る」だけでなく「経営する」という意味もありますから、まさにうってつけです。

「わが社がどこから来たのか、どこに行くのか」を自覚することが、スタートラインです。
これをすっ飛ばして、SDGsで「何をやればいいか」「何から始めればいいか」から始めようとしても「いや、なんで?」の疑問が必ず生じますし、最初から「いや、なんで?」と思っていたら、なんだかんだと理屈をつけて、スタートラインにつくことを避けようとするでしょう。冒頭の調査結果は、その代表的な「言い訳」リストです。

「どうしたらコンスタントに長く活躍できるか」

「どうしたらコンスタントに長く経営できるか」
の問いに置き換えて、真剣にその答えを考えてみましょう。

その答え(の案)ができたら、そこで初めて、SDGs17ゴールと169ターゲットのリストと照らし合わせてみてください。
必ずや、「あ、これだ!」と「インスピレーション」がひらめくでしょう。
その瞬間から、その会社にとって、SDGsがMLGsからMFGsに変わります。
逆に、それがなければ、そして、誰がどう考えてもなければ、その会社にとってSDGsはMLGsでしかあり得ない、というの結論を出すのが妥当です。
ただ。その結論に至ることは、まず、ないと思います。

最後に、SDGsをMFGsにした会社の例、最近の記事から。

タカヤマ、「見える化」でSDGsを推進

筆者プロフィール:「サステイナブル歴30年」の始まりは?


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