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Noプラスチック?Withプラスチック? 20220408解説

脱プラ関係ニュース(4月最初の1週間)いろいろ

2022年4月1日、プラスチック資源循環促進法が施行されました。で、関連のニュースがわんさか出ています。ためておきましたので、まとめて放出。その後に、思うことを少々、「環境問題の社会科」として書いてみました。

プラスチック資源循環促進法とは【2022年4月施行】事業者の役割を紹介

4月からプラ新法、「関心は日本が最下位」とWWF

今月から施行「プラスチック新法」暮らしに変化は…“ゴミ分別”変わる自治体も

プラスチックゴミ削減へ新たな法律 企業の対応は

「プラスチック資源循環法」施行 使い捨てプラの代わりに「マイ〇〇」の利用呼びかけも

プラごみ削減へ リサイクルしやすい素材の開発相次ぐ

減ゴミ・脱プラスチックを求める市民が作る、古くて新しい「パッケージ・フリー」なマーケット

“脱プラスチック”考える機会に 新入生に紙製クリアファイル

古米配合ブラシ 木製スプーン プラごみ削減知恵絞る

“プラスチック新法”きょうから施行 減らせる量は1%未満

環境問題の社会科

あの手この手で、いろいろ脱プラの手法が出てきているわけですが、そんなに目の敵にされるほど、プラスチックは悪者なの?とは思いませんか?
プラスチックがあってよかった、ということ、ないですか?このコロナ禍を振り返ってみても。
昨今、脱プラが社会問題化したのは海洋プラスチック問題から。

いらなくなったプラスチック製品が散乱ごみになり、それが水域に流入して(もしくは直接海洋投棄されて)浮遊ごみになり、海鳥や海亀や魚類などの生き物を苦しめ、やがて劣化し摩耗しマイクロプラスチックになり、果ては人間の血液から検出されるに至っています。ことここに及ぶと、直接的な健康被害のおそれあり、そうなると「環境の保全上の支障」ということになります。

マイクロプラスチック、人間の血液内で発見される…その影響は今のところ「何も分かっていない」

しかし、最初の「いらなくなったプラスチック製品がで散乱ごみになり」「直接海洋投棄されて」がなければ、その先のプロセスは進まないわけで、散乱ごみはどうして生じるのかといえば、「人が散乱させる」からです。
プラが他素材に変わってもそれは同じです。ただ、環境中で容易に分解されるか、されないかという物性の違いはあります。
じゃあ、生分解性のプラスチックだけにすれば問題ないじゃないか、という技術論だけでは、「人が散乱させる」問題そのものは解決しません。
科学技術による解決が環境問題の理科とすれば、人の心理や行動の変容による解決が環境問題の社会科。
脱プラ問題の理科は、上の記事にもあるような、異素材への転換や、生分解性プラや、バイオマス由来のプラの開発・実用化など。
脱プラ問題の社会科は、「人工的に作り出した物質(プラスチック)が、自然界に散乱しないように、人間の社会経済活動の中だけでクローズドに利用され処理される仕組み」をつくること。
それを一言で言うと、サーキュラーエコノミー(循環経済)。今回の新法は、社会経済活動をその方向に導く制度的前提条件を整える、という位置づけになります。

「人間圏」の物質・エネルギー循環のマネジメント

元々地球の自然界は、地圏・水圏・気圏・生物圏と、各圏相互をめぐる物質・エネルギー循環で成り立っていたところ、生物圏の中から、他の生物とは異なる物質・エネルギー循環を作り出す生き物=人類が登場し、「人間圏」をつくり出した、という考え方があります。
環境問題は、「人間圏」が他の圏(環境)に影響を及ぼした結果、その悪影響が「人間圏」に返ってきて人間が被害を受けるという因果応報の構図。
気候変動問題は、直接的には「気圏」に対する影響で、これが主に「水圏」「生物圏」に影響を与える。これを減らすのが脱炭素。
そして、プラスチックは主に「水圏」「生物圏」「地圏」に対する影響(地質学的時間で見れば、プラスチック地層を特徴とするプラスチック・エイジとなるでしょう!)。これを減らすのが脱プラ。
抽象度をあげるとこんな話になりましたが、この4月からのプラ新法、環境問題の社会科の新しい実験のはじまり、と思ってみています。
ごみ問題は、ごみそのものの問題ではなく、ごみを出す人間と社会の問題だ、と、卒論で書いたのを思い出しました。
自然界に、そもそもごみはなかったわけで。

サステイナブル歴30年の眼(選者プロフィール)


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