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小説『64』横山秀夫さんの「もう1人の社長であれ」という経営広報に通ずる話

30数年の広報人生において、ジワジワと育んできた「経営広報」という考え方に至るプロセス、試行錯誤、紆余曲折、裏話などを描くシリーズ【経営広報への道】。第3回は「もう1人の社長であれ」。

私事ですが、私は警察小説が無類に好きでありまして、堂場瞬一、東野圭吾、宮部みゆき、誉田哲也、大沢在昌、雫井侑介、今野敏、高村薫、笹本稜平、松本清張、佐々木譲…、もう「読み漁っている」状態です。

中でも、大好きな作品のひとつ、横山秀夫『64(ロクヨン)』

横山秀夫さんの『64(ロクヨン)』

好きな理由は、主人公が地方県警の広報官だからではなく、キレの良い文体とリアリティ、これに尽きます。

それはさておき…。

ふとした時に、広報の専門誌『広報会議』にこんなコラムを見つけたのです。「もう1人の社長であれ」警察広報官主役の小説『64』の作者・横山秀夫さんが語る広報の矜持。

広報の矜持

横山氏はこのコラムの中で、広報の在り方をこんなふうに語っています。12年間の記者経験を通じ、広報のあるべき姿を見極められたのでしょう。

「コマーシャルにしても、さまざまなタイアップにしても、仕掛けた人やマスメディアの人たちによる『お祭り騒ぎ』を見せられているような気持ちになります。目先の利く人が考えるのでしょうが、そうしたマスコミの特権意識と二人三脚の仕掛けは消費者によって見透かされていることにまず気付くべきです」
2014年1月号 広報会議
「目先の評判や利益を求めるのではなく、しっかり構築したものを広報する姿勢でないと、もはや信頼されない時代です。『策士』みたいな人が最も広報に向いていないと思います」
2014年1月号 広報会議

私はそんな矜持を持てているのだろうか⁉

さて、「経営広報」を標榜している私。「広報は経営者と協働して創るのだ」と言っている私。よもや「もう1人の社長」と自称するなど思いもよりませんでしたが、客観的に考えれば、やろうとしているのはそういうことなんだろうなと思います。

そしてこのコラムの極めつけのコメント。

広報は本来社長がやるべきこと。それを委譲するのだから、それなりの権限や専門性、強い認識があってしかるべきです。愚直でも不器用でも、自分を裏切らない人を選び、育て、『もう一人の社長』として押し出す。それが理想の広報体制ではないでしょうか」
2014年1月号 広報会議

これはもう、鳥肌モノです。我が意を得たりとはこのことでしょう。経営広報という自分の見出した方向感が間違っていなかったと、心底嬉しくなります。でもその一方で、こう自問するのです。

果たして私は、そこまでの仕事ができているだろうか。もう一人の社長という矜持を持てているだろうか

理想はまだまだ先にありますね。

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