009.孤独について

人は孤独な生き物である。そして孤独は怖いものである。

新劇場版エヴァンゲリオン発表時の所信表明で「エヴァはくりかえしの物語です。主人公が何度も同じ目に遭いながら、ひたすら立ち上がっていく話です。わずかでも前に進もうとする、意思の話です。曖昧な孤独に耐え他者に触れるのが怖くても一緒にいたいと思う、覚悟の話です。」と庵野秀明は語っている。

これは、人の強い欲求の話なのだと思う。なぜ人は孤独を恐れるのか。生物的な生存率を上げる本能としても、これは理に叶う。一人では食べ物すら満足に得られず、生きることは困難な時代が多かった。生存欲求の強さほど、孤独感を強めていく。

エーリッヒ・フロムは著書のなかで「人間のもっとも強い欲求は、孤立を克服し、孤独の牢獄から抜け出したいという欲求である。-----その解決策の歴史が人類の歴史なのだ -愛するということ-」と書いた。

生活するのに不必要な過度の金銭的欲求や名誉欲はどこからくるのか。それを深掘りしていくと、そこには誰かに認められたいという承認欲求があり、承認欲求は孤独からの脱却に利用されている。ただ、多くの場合、そうした承認欲求は一時的な孤独の紛らわしにしか利用できない。金銭や名誉はその瞬間の価値にしかならず、他者を縛り続ける効力がない。人は再度、孤独の牢獄へと迷い込んでいく。家族を持っても、恋人がいても、親友がいても。

そうしたとき、逃げても追いかけ続けるこの孤独とどう私たちは折り合いをつけていくべきなのか。

孤独に耐えようという話ではない。孤独は常にそこにあって、何を成してもそこにある。孤独は怖い。この全く合理的でない感情と、感覚はなんなのか。理不尽である。世界の理不尽さとは、この孤独感から生まれているのではないか。

それに対するフロムの答えは単純で、愛である。その愛は、自分の孤独を紛らわすためにあるのではなく、相手の孤独にも寄り添い、誰の孤独にも寛容になれるような愛である。それは結果として、利己的を越えて、利他的になり、他者へ与える続けることで生まれるものとして定義されている。

孤独とは何かを考えていると、結局のところ、人に優しくなっていく。そして、人に優しくするということ、人のために何かをする決意というのが、孤独とともに生きることと気づく。何か特別な方法があるというよりは、そういう生き方である、と悶々としながら、思うのである。

だから、シンジくんに私は共感する。

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