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009.孤独について

人は孤独な生き物である。そして孤独は怖いものである。 新劇場版エヴァンゲリオン発表時の所信表明で「エヴァはくりかえしの物語です。主人公が何度も同じ目に遭いながら、ひたすら立ち上がっていく話です。わずかでも前に進もうとする、意思の話です。曖昧な孤独に耐え他者に触れるのが怖くても一緒にいたいと思う、覚悟の話です。」と庵野秀明は語っている。 これは、人の強い欲求の話なのだと思う。なぜ人は孤独を恐れるのか。生物的な生存率を上げる本能としても、これは理に叶う。一人では食べ物すら満足

    • 008.姿勢を整える

      人は変わるだろうか。これを言うときによく神経可塑性という言葉を出す時がある。とても短絡的に言えば、脳の神経は外的な刺激や状況に応じて機能の向上や変化を行なっていくという事実である。そして同じ思考をしていくことで、その思考は強化される。つまり、変わらないと強く思えば変化せず、変化することを前提にすれば変化していく。 変化するための方法は非常にシンプル。今まで考えなかったこと、できなかったことに取り組むことである。それは取り組む頻度が多く、質が高ければ、より強く変化をしていく。

      • 007.今を積み重ねること

        「なぜ生きるかを知っている者は、どのように生きることにも耐える」と言ったのはニーチェ。生きるための理由を明確に持てている状態というのは、確かにその時には、生きることをやめたい感情は起きない。 未来に明るい展望がある人間は、今に悲観しない。今を悲観する人間というのは、未来に悲観的な展望を持っている。では肯定的な未来を見るためにはどうすればいいか。これは、未来をポジティブに捉えようと努力することでは、叶うものでもない。 ヴィクトール・E・フランクルは著作の「夜と霧」の中で、第

        • 006.社会的成功と幸福

          自分が本当に輝ける場はここではなくて、もっと何かよりよいことができるのではないか。そう考えている時がある。 私たちは子供の頃より、人より優れていれば褒められたし、表彰されることは喜びだったし、特別であることの重要性を説かれることが多かった。 つまり、より多く金銭を持ち、高い地位にいて、褒め称えられる業績を成すべきだと思い込んでいる。それを持っていないものは、そこに特別な体験が待っていると、強く信じ込むだろう。 ただ、実際にそれを得た者はどうか。ディズニー映画のソウルフル

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          10本

        記事

          005.本を読む

          よく、自分の考えに詰まる時がある。そんなときは人と話し、散歩をし、そして本を読む。 最近『私が望むことを私もわからないとき』という本を読んでいる。これは<The Book Man>という書籍の一文を紹介するサービスを運営するチョン・スンファンが書いたもの。読書スピードが遅い自分としてはありがたいことに、好きなテーマの場所だけ読んでいれば良いような本。 読んでいると、ハッとする一文や、自分ならどう思うかと自問自答することが多い。名著からの引用が多いため、そこには深いバックグ

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          004.今が自分を作る

          写真家・篠山紀信がカメラを好きになった理由の一つとして、写真を撮ったことで褒められた経験があることをあげている。雑誌BRUTUS『ほめられる写真。』特集の巻頭にその旨が書いてある。小学三年生のころ、隣に住んでいたベトナム人のオジサンが飼っているシェパードを撮ったら、すごく喜んでもらえて、お返しにチューインガムをもらったらしい。 人に喜んでもらった経験から、人に喜んでもらうことを続けたくなり、生き方が大きく変わった話は素敵な美談だ。だが、全ての人が似た経験をできるわけでもない

          004.今が自分を作る

          003.憂鬱もそれはそれでよい

          ひどい憂鬱に襲われていた時期がある。パートナーを失い、お金を失い、職を失ったときだ。自分のこれまで積み重ねてきた価値をすべてなくしてしまった。食欲もなく、睡眠不足が続き、なんの価値もない明日が来るのが怖い毎日。恐怖は一人の夜に襲ってきて、その時だけは誰かに助けを求めたくてしょうがなかった。そんなタイミングで優しくしてくれる人がいると、涙が出た。それは症状を変えながら1年ほど付き合ったと思う。 憂鬱と聞くと、なりたくないもの、と思う人が多いかもしれない。特に、生活自体が荒れる

          003.憂鬱もそれはそれでよい

          002.予想外を好きになる

          社会的問題解決において多くの実績がある統計学は、社会で生きる上でもはや当たり前の知識となった。統計を少しかじると、多くのことは予想が可能なのではないかという錯覚に陥る。実際、生活の中で予想をしていると、予想通りになる。不思議なもので。しかし、人は予想通りが続くことにはすぐ飽きる。建築家の谷尻誠は「予想通りほど人を感動させないものはないんですよ。」とインタビューで語ったことがある。精密な計算をして誤差がない建物を設計する人物が、予想外の設計こそ利用者の愛着に繋がると言う。 予

          002.予想外を好きになる

          001.抵抗を知ることで、自分を知る

          「汝自身を知れ」とは古代ギリシャの有名な言葉であり、ソクラテスも重要と語った。自分を知り、知った上で行動していくことが自分を好きになり、物事を上手く進める原動力になる。そのため、巷では数多くの自分を知るための方法論が溢れている。性格診断やセルフコーチング、マインドフルネス、ジャーナリング(日記)、はたまた占い。それらは気づきの助けになることもあれば、思い込みを助長させることもある。 精神分析において、最も重要なのは「抵抗を認識すること」とエーリッヒ・フロムは『聴くということ

          001.抵抗を知ることで、自分を知る

          幸福論を書いてみようと思った

          物理学を学んでいた時期があった。趣味なので、相対性理論や量子力学とは不思議なこともあるものだ、といくつかの書籍や動画で見ていたぐらい。そんなとき、ふと幸福の方程式というものが書けないのかと思い立った。アインシュタインはホテルのメモに「静かで質素な生活は、絶え間ない不安に縛られた成功の追求よりも多くの喜びをもたらす」と書いたらしいが、自分ならどうなるか。 書き始めて数分、「健康」「笑顔」「エンタメ(映画、書物、漫画、アニメ)」「運動」「社会貢献」「友人関係」「恋愛」・・・どこか

          幸福論を書いてみようと思った