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これからの商工会、地方創生において果たすべき役割とは?

地方のまちづくりをしていると、商工会や商工会議所の存在を身近に感じます。これって地方ならでは。東京で20年近く会社を経営していて商工会議所とはほぼ接点ありませんでした。会員にもなってなかったし。。わかりやすくいうと、自分にとっては必要ありませんでした。

同時に、よく耳にするのが商工会の課題。高齢化、会員減少、人材育成、商店街の空き家とか。。順調です!と聞いた経験がありません。個別の商工会というより、日本全体が抱える構造的な問題?

1. 商工会議所&商工会、そもそものおさらい

都農町のまちづくりをしてみて、改めて感じる商工振興の重要性。地方においては商工会の存在が町の商工振興を方向づけるほど重要、ということは実感してきたので、そもそもの成り立ちや特徴をおさらいし、自分なりに商工会の活性化に貢献できること発見を目指し。。

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商工会議所・商工会の加入メリットは5つ。

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デメリットはそんなに高額ではない入会費と年会費ぐらいだから、うまくいってないとしたら、メリットが書いてあるほど感じられてないってこと?

僕自身は、東京でも都農町でも会員になろうと思ったことはないので、ここのメリットはあまり感じられない。経営者のタイプや業種業態にもよるのでしょうが。。資金調達は魅力だけど。手続きよくわからない。

2. 商工会の課題

商工会に絞って、課題を外的要因と内的要因の2つの視点から考えます。

①外的要因

当たり前ですが、地域の人口減少が最大課題

日本の都道府県と宮崎県の市区町村の人口に関する自然減少率と社会減少率の関係を表したデータを見ると宮崎県のほとんどの地域が、社会増減、自然増減共に減少、宮崎県では出生数が少なく、人の転出も多い地域に。

(赤点は宮崎県の市区町村)

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(総務省「住民基本台帳」などよりイツノマ総研作成)


また、2019年の人口と2019年から2045年の人口の増減率の予測をグラフにまとめると全国平均増減率に対して宮崎市、三股町、綾町以外は全国平均以上のペースで人口が減少する地域であることが見て取れる。

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(総務省「住民基本台帳」などよりイツノマ総研作成)

都農町においては、改めて言うまでもなく今後の人口減少に伴う商工業の衰退を大前提においた戦略をつくっていく必要があります。

どれだけ次世代にも当事者意識を持って官民連携してアクションを起こせるかが、生命線かと。

②内的要因

中小企業の経営支援も大切な仕事の一つである商工会。
実際に商工会が支援していくためには会員から会費を集め、新しい企業への支援をしていく必要があります。
しかし、近年の統計を見ると各年1万社以上のペースで減少傾向にあります。

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(全国商工会連合会「商工会実態調査」よりイツノマ総研作成)

把握できるデータが少し古いのですが、2020年度も、右肩下がりのトレンドに変わりはないものと推測します。

会費収入が減り、都道府県からの補助金も減少しているため、経営指導に従事する職員数も減少する悪循環が生まれています。

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この後の提案にも関わる現実的な課題ですが「人がいない」が深刻。商工会は会長をはじめ役員の皆さんが本業をお持ち兼務する組織体。皆さん、経営者だから忙しいし、とてもじゃないけど、商工会のために時間はとっていられない。

といって、代わりにいい感じで取り仕切ってくれるような便利な救世主なんていない。特に小さな町には。

これが課題で一番大きくて本質的なことだと思います。昔、景気が良かった頃は月並みな研修と、国の制度や福利厚生、融資など比較的、事務手続き系が求められたんじゃないかと推測しますが、今必要なのは、現状打開に必要な戦略や企画づくり。必要な人材像のミスマッチもあるんでしょう。

3. 都農町商工会の現状

実際に都農町の業種別の商工会業者数で見ると小売・飲食店を中心に業者数は減少傾向にあります。

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多くの地域が抱える商店街の過疎化は、都農町も大きな問題です。

小売・飲食店が集まる商店街に注目し、該当地域の商工会会員数を見ると、僕も毎日みているシャッター店舗の様子と整合してしまいます。。

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4. 鍵を握るのは世代交代

商工会の大きな課題のひとつ、経営者の高齢化問題。

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一目瞭然ですが、1995年にピークだった40代後半の経営者が、そのまま20年たってピークのまま。つまりは世代交代、後継者委譲が進んでいません

中小企業38万社の経営課題に関して調査した統計を見ても、人材の確保、育成は38.9%で2位。都農町にとっても最大の課題です。

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5. 3つの提案

憂いていても始まらないので、アクションを起こしたい3つの提案です。

①デジタル化推進のハブに

商工会が取り組むべきテーマは、単体の中小、零細事業者ではお金的にも時間的にも厳しいもの。今でいえば、デジタル化・ICT啓蒙・推進

都農町はデジタル・フレンドリーを推進、来年4月にはホームページを一新、双方向型で住民のIDデータを蓄積できるポータルサイトを開設します。(下図は現時点での画面イメージ案)

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同時に、65歳以上だけと15歳以下の子どもがいる全世帯、約2,000世帯にタブレットを配布します。

光回線は町内全域で開通、ハードだけでなく、若者チームを編成し、高齢者に年間通じて使い方をサポートしていきます。

町が進めるデジタル環境を最大活用し、商工会として、会員全員がメリットを感じられるデジタル施策を提示し、活用法のレクチャーや教育、デジタルを活用した経営法の啓蒙に努めていくのが役割的には理想かなと思います。

②地域内消費強化の戦略

商工会として、取り組むべき次のテーマが地域経済自給率の向上です。下図の通り、都農町では、同じ児湯郡と比べても地域外に流出している支出が多い状況です。

知識や情報は、デジタルを活用してグローバルや東京・大阪から仕入れつつ、商品・サービスの商品企画はあくまでもローカルにこだわり、地域内消費を増やしていく、デジタルとローカルのバランスが必要だと思います。

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(環境省「地域産業連関表」、「地域経済計算」(株式会社価値総合研究所受託作成)、地域経済循環分析を元にイツノマ総研作成

③キャリア教育への参画

最後は、中長期的にみて、若者の流出を軽減、少なくても中学生の間に、都農町には素敵な会社がある、目指したい経営者がいる、と思える体験は提供していくべきかなと思います。

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商工会と、都農中学校や教育委員、町など一体になって、都農町における商工業の素晴らしさを、若者たちに丁寧に伝えていくことに時間を投資することは、決して無駄にならないと思います。

(データ作成・分析:イツノマ総研 渡邉涼太)



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