見出し画像

地方のまちづくり、大人が学び直す機会をどう増やせるか。

都農町で高校跡地の有効利用を、町内の若手経営者のみなさんと議論して、欲しい施設・サービスを聞くと「大人が学べる場所」についての意見が多く出てきました。

画像1

スクリーンショット 2020-12-13 16.52.20

(都農町若者連絡協議会/2020年10月/ 町民ヒアリングより作成)

1. 大人の学び直し機会が少ない日本

「社会人の学び直し」について、全国の会社員800人に行ったアンケートでは『興味がある』が82.1%、特に30代では89.0%が関心を向けています。

画像3

(社会人の学び直しに関する実態・意識調査/マイナビ転職/2020年)

専門学校、短期大学、4年制大学など、25歳以上の入学者の割合を国別にまとめました。


画像4

「大人の学び直しに関する現状等」文部科学省/2015年/を編集し作成

日本は11%と平均26%の半分以下、欧米諸国と比較してかなり低い結果となります。

次に、高等教育機関への入学者数と国別の平均勤続年数を比較してみました。

画像5

(データブック国際労働比較2019/労働政策研・研修機構のデータより作成)

25歳以上の高等教育機関への入学者数が多いノルウェー(43%)、イギリス(42%)では、平均勤続年数は8.9年、7.9年。

入学者数が少ないベルギー(4%)、フランス(5%)では平均勤続年数が11年、11.2年と長い傾向に。

入学者数が少ない日本においても平均勤続年数は12.1年と長い傾向にあることから、終身雇用の働き方は学び直しが進まない要因の一つになっていると考えられます。

2. 日本の企業の寿命

これまでの日本の企業の寿命を見てみると以下のようになります。

画像6

(現代における大企業の平均寿命は15年 – 2018)


日本の企業は寿命が長く、創業200年以上続く企業の内56.3%は日本企業、100年以上続く企業に関しては25,321社と世界的に見ても寿命の長い企業が多いことがわかります。

企業の寿命が長い日本では終身雇用や年功序列の影響で、スキルアップの必要性は感じつつも、現実的には学び直しをしなくても働き続けられる環境と言えます。

アメリカの場合、企業の平均寿命は15年と言われています。
その為、いくつもの企業を渡り歩いていけるだけのビジネススキルの習得は重要テーマ。

日本企業が、世界的にみても成功を続けていけるのであれば終身雇用に安住しても良いのかもしれませんが、着実に、世界の中における日本企業のポジションは低下しています。

1989年(僕が新卒で入社したバブル絶頂期)と2018の世界時価総額ランキングを比較すると一目瞭然です。

スクリーンショット 2020-12-13 17.26.47

1989年と比較すると、TOP5を独占していた日本企業は、今ではTOP20に1社も入っていません。
これからの時代を生きていく中で業種の掛け算、自身のスキルアップにつながる学び直しは必須と言えるのではないでしょうか。

3. オンライン学習は地方にもチャンス

とはいえ、企業側として、社員に対して一定期間、ビジネススクールや学習機会を提供することは、その期間、直接的な生産性が下がることもあり、一部の大企業でしか現実的な施策には落とし込めませんでした。

社員が自主的に勤務後や休日を活用して学び直そうとしても、学び直しのニーズを感じやすい30代から40代前半世代は子育てや教育費など、時間的、経済的にかなりハードルが高いのではないでしょうか。

企業にとっても、社員個人にとっても、昨今のオンライン学習の浸透は追い風になります。

デジタル化、ICT系に限らず、スキルアップのための学習プログラムは、多種多様になってきています。

オンライン学習は、これまで学び直しの環境として、東京や大阪に比べて物理的に不利だった地方の社会人にとっても均等なチャンスをもたらします。

僕らが運営するコワーキングスペースYARD1927では、定期的に、ECサイトマーケティングやVR、shopifyなどの講座を開催していますが、参加される方は皆さん熱心で、毎回、とても盛況です。

画像8

画像9

学び直し1

参加される人たちは、トマト農家、歯科医院、学生、小学校の先生など職業や年齢を問わず集まりました。

4. これからのキャリア教育は親子で?

中学生のキャリア教育のお手伝いをしている中で、最大の課題を聞くと「親のキャリア教育」という回答が印象的でした。

デジタル化、オンライン化が進む中、子どもたちは柔軟に受け入れる一方、親にその知識や体験がないため、相談されてもアドバイスのしようがなく、従来型の保守的な提案をしてしまう。そんなギャップは、放っておくとこれから増えていくのではないでしょうか。

これまでは、多くを望まず、日々慎ましやかに暮らすことでよしとするならば、家や畑があり、食物に困らない町に住み続ければ、そんなに勉強したり働かなくても、なんとかなったのかもしれません。

ただし、人口減少は加速、特に若者、生産人口が減っていく中で、子どもだけではなく親も含めて、常に新しい学びをする必要性が高まるのではないかと思います。これからのキャリア教育は、『親子一緒』がキーワード。

5. 何を学ぶか?のセンスで差がつく

働き方改革、リモート・オンライン化で、着実に労働時間は減っていくべきものと思います。そのこと自体は大賛成。

ただ、今まで以上に、先行き不透明で、新しいテクノロジーが世界中で起きてくる環境では、常に学び直しをしていかなければなりません。

難しいのは、何を学べばいいのか、が定かでないことです。資格試験や仕事の延長上のスキル、あるいはMBAみたいな客観性のある学びであれば、昔の優等生っぽく、ひたすら勉強すれば良いのですが、これからはどんなスキルが必要かは不明。

何を学んで良いかわからないから何も手をつけずに流されるのか、自分なりに考えてこのジャンルだろうと仮決めして貪欲に学び続けるか、がセンスだと思うし、個人が仕事や暮らしを楽しむための差分になりそうです。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?