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人と知り合って世界はカラフルなことに気づく マンガ「左門くんはサモナー」のすすめ

これは私が地獄に堕ちるまでの物語である!!
出所:左門くんはサモナー1巻(集英社) 沼駿

マンガ「左門くんはサモナー」はこの一文から始まる。
これだけみると、ホラーマンガという印象を抱くかもしれないが、「左門くんはサモナー」は全体的にコメディー調の作品である。毎回悪魔が登場するが、愛嬌のある姿をしているものが多い。

ストーリーの概要

天使すぎる少女こと、生粋の「良い人」天使ヶ原桜のクラスにやってきた悪魔召喚が趣味の転校生・左門召介。
そんなバカなと思いきや彼はマジもんの召喚術士(サモナー)だった!
好きな物は「悪魔に屈する欲深い人間の破滅」、生粋の「善人嫌い」のひねくれ召喚術士(サモナー)にロックオンされた天使ヶ原さんの運命や如何に...!?
出所:少年ジャンプ公式サイト(集英社)

物語は主に天使ヶ原さんの視点から語られ、左門くんがどんな人間なのかを、彼女とともに読者が知っていく作品となっている。
左門くんに親友を助けてもらった勅使ヶ原さんは、次のような思いを抱く。

私を「良い人」と呼ぶ彼は
じゃあ「悪い人」なのだろうか?
左門くんは本当はどんな人なのだろうか?
出所:左門くんはサモナー1巻(集英社) 沼駿

作者も「(前略)もしも天使ヶ原さんが第1話時点の情報だけで左門くんの人となりを判断し決めつけたとしたら、物語はそこで終わっていたでしょう」(第1巻96ページより)と述べている。
「左門くんはサモナー」では、人が人を知ろうとする様が、ギャグを交えてコメディータッチに描かれているのである。

※以下、ネタバレを含みます。この記事をここまで読んで、ネタバレをされたくないと思った方は、いったん「左門くんはサモナー」を読んで頂いて、その後にこの記事の残りを読んで頂けたら嬉しいです。

白と黒だけではカラフルな世界はつくれない

左門くんを知る過程で、勅使ヶ原さんは、人間は白(善)と黒(悪)だけではできていないことに気づく

左門くんについて深く知るため、左門くんの実家を訪れた勅使ヶ原さんは、左門くんの母親から、こう言われる。

世の中が白と黒だけでできてないって教えてあげて
出所:左門くんはサモナー10巻(集英社) 沼駿

そして最終話では、勅使ヶ原さんは左門くんに次の言葉を伝える。

私だってね
白と黒だけでできちゃいないの!

出所:左門くんはサモナー10巻(集英社) 沼駿

左門くんは悪魔を召喚するサモナーとなり、力のある黒(悪)を目指した。左門くんは欲深い人間が好きだ。でも、左門くんは天使ヶ原さんを助けたり、虫が苦手だったり、猫に甘かったり、甘いものが好きだったり、運動が不得手だったりもする…。

きっと、この物語は、人間には善悪の二面性だけでは測れない部分もあることを伝えているのだ。左門くんも、天使ヶ原さんも、あなたも、私も。
白と黒だけではモノトーンな世界しかつくれないが、人間の世界はきっともっとカラフルであるのだ。

左門くんは天使ヶ原さんをどう思っているのか

一話目で、左門くんは天使ヶ原さんのことを「良い人」と述べている。天使ヶ原さんが教師から任された雑用を行い、人助けをしている姿をみて。
このとき左門くんは「良い人」を誉め言葉として使っておらず、天使ヶ原さんが大嫌いであると本人に伝えている。
左門くんは善人(欲を隠した偽善者)が嫌いで、悪人(欲深い人)が好きであるからだ。

一方最終話では、左門くんは勅使ヶ原さんに誉め言葉として「悪い女」という言葉を贈っている。
最終話のタイトルは「僕は君が」である。当初、僕(左門くん)は君(天使ヶ原さん)が嫌いだった
しかし、最終話では、左門くんは、天使ヶ原さんが誉める対象となり、かつ女性としてみるようになったのではないだろうか。
この物語は、主に天使ヶ原さんの視点から語られ、左門くんがどんな人間なのかを知っていく作品であることは冒頭に述べた。それと同時に、左門くんが、天使ヶ原さんをはじめとする周囲の人物(悪魔含めて)と関わり、彼女らがどんな人物であるかを知っていく作品でもあるのではないだろうか。特に左門くんと天使ヶ原さんが、お互いに興味を持って相手を知る過程を描いているのだと思う。

よく耳にする話であるが、「嫌い」の反対の意味の言葉は「無関心」である。
一話目に左門くんが天使ヶ原さんに嫌いと伝えたのは、もしかしたら左門くんが当初から天使ヶ原さんに興味を持っていたということを表しているのかもしれない。


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