見出し画像

【詩】羽化以前

ある夏の午後 玄関を出ると 脱皮する前の 翅のないセミが 仰向けに倒れ もがいている肢が 褐色の 回転する円を描いていた 指で助け起こすと 翌朝の羽化に向けて 庭木の方へ歩き始めた 見慣れたセミの抜け殻より大きく ふっくらした体で トコトコ歩く様は どこか滑稽でもあったが まるで見慣れたセミの抜け殻が 動いているようなので 驚いて 笑う余裕などなかった あれから 寒い季節になっても 足下で過ごしている セミたちのことを 思うことがある

コレが動くなんて驚き


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?