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【詩】ウミガメ

忘れたいことがあったので
ウミガメのフィギュアを手に入れて
忘れるヨスガにしようと思った

ウミガメが好きだから
フィギュアを見る度に
「もう忘れた」と唱えれば
少しずつ 忘れられるだろう

フィギュアが届いた日
ウミガメは
老賢者のような目で
私をギロリと睨んだ
「諦めてはいけない」と
言っているような目だ
こんなに生きた目をしているなんて
思わなかった
怖くなって
ウミガメを引き出しにしまった

あれから五年が過ぎて
忘れるとはどういうことか
諦めるとはどういうことか
あのことを
忘れたのかどうか
わからなくなった

ウミガメに尋ねてみたくても
ウミガメは私に呆れて
逃げてしまったかもしれない
それを知るのが怖くて
今も 引き出しを開けられない

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