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裏社長大河の悪魔版就職斡旋社 第31話 対外国資本編15

はじめに

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裏社長大河の悪魔版就職斡旋社31話

 「大河さん、ボスへのコネクティングルームはこっちです、ですが、一個心配なことがあります。」
 「なんだ?」
 「ボスへのコネクティングルームやボスの女関係を警備するセキュリティが1人いるのです、シークと言います。シークはさっきいませんでした。シークは強いです、出会ったら作戦会議必要です。」
 「シーク?プロレスラーか?」
 「プロレスラーではないですが、体格はプロレスラーそのものです。パワフル、そしてクイックネス抜群です。」
 まぁ、ボスの近くに繋がる場所ならセキュリティがいるのは、当然そうだろうな。世界各国の支所を守るべくいる雇われ兵と中枢を警備する連中とでは当然信頼度も違えば実力も違うだろう、それは世界各国見てもそうだ。大統領や重要人物周辺の警備員っていうのが精鋭になるには当然のこと。うちの国くらいなもんだ悠長なのは。
 あいつらの言うボスに辿り着くまでは油断は出来ねぇ。さっき無駄なダメージもらったのがもったいねぇというかバカな事したなと思うよ、本当に。
 「コネクティングルームまでの道のりはコンプレックスアンドファーラウェーです、そして、暗証番号が必要な箇所もあります。」
 「ほー、随分厳重なんだな。」
 「オフコース、エミレートファイナンスは味方も敵も多い組織、敵が侵入してきた時に防衛するラインをキチンと設定するためにも、万が一要人がいた時にも守れるようにシステム作られたのです。」
 「ここにボスが来たことはあるのか。」
 「出来た時くらいですね・・・。」
 「費用対効果は悪いな。」
 「あははは、細かいバリューにとらわれないのがエミレートファイナンス流ですね。」
 オレたちはマハルの案内で進んでいく、聖奈を見つけた時は気持ち悪いくらい無機質で同じような部屋の構造と通路の構造をしていたが、そこを抜けると忍者屋敷かと思うような仕掛け扉だの視覚情報を混乱させる床のマッピングだの細工がありとあらゆる方向から行われてやがる。
 「なぁ、こういうところは侵入されないようにレーザーとか赤外線センサー敷いてるんじゃ無いのか。」
 「おー・・・私は聞いてないです、アイドントノウです。」
 中山も口を開く。
 「ここはまだ暗証番号ロック扉の外ですから最悪こられても構わないという場所でしょうが、コネクティングルーム付近は大河さんのいうようなケースを警戒すべきですね。」
 「だろ?」
 「あー、実はコネクティングルームあたりは私も入る時に許可が必要でした。場所は知っていますが、細かいことは知らない事があります。」
 「ニードトゥノウって言うからな。」
 ニードトゥノウの原則、重要事項を重要な範囲でのみ周知するってやつだ。社長と専務が知っている。社長から部署長まで知っている。社長から末端まで知っている。それぞれ下ろす情報は違うだろって話だ。だが、マハルはこう見えても日本の支部ではトップと言ってイイ。そこに下りない情報っていうのはつまりだ。代えが利くと思われてるか、知らずに入って痛い目に合っても構わないってことだろう。人を人とも思わないやり方はエミレートファイナンスらしいぜ。
 「あそこです、あそこが暗証番号ゾーンの入り口です。」
 「見る限りは普通の暗証番号式の扉だな・・・中山。」
 「もちろんです。」
 「何をさせるですか?」
 「黙って見てろ。」
 中山がドアを数分見るとかちゃかちゃっと作業をして取り出したものがある。
 「これはわかりやすい罠ですが、暗証番号のロック付近を覗くと催涙スプレーか何かが噴き出る仕組みになってましたね、番号ボタンを押した瞬間に起動して作動する仕組みです。」
 「覗き込んだ時か、番号を入れ間違えた時、あるいは時間制かは分からんが、目潰しが発動する仕組みだったってことか。」
 「はい、おそらくはこれ以外にも電流であったり警報装置などの通知システムかはわかりませんが何かしらの対策はされているという前提で動いたほうがいいかと思いますね。」
 「し、知らなかった・・・。」
 「マハルは大して重要と思われてないんだろうよ、エミレートファイナンスグループのボスにはよ。」
 「残念ながら、そうでしょうね。」
 マハルは日本支部のことならなんでも知っていると思っていたが、実際はそうではなかった。無知な彼がここに入ろうとすると命の危険も含めた危険があちこちに設置されている。
 「番号は間違いないんだろうな。」
 「イエス、ここで番号必要なのは金庫とココだけ、ココはスペシャルナンバーで暗記しています。」
 「よし開けろ。」
 マハルが慎重に6桁の暗証番号を入力してロックが解除される。ここから先は何が起こってもおかしくないので慎重に慎重を期す。中山がいてくれるのは実に心強い、軍隊の経験というのは直接的な戦闘力ではなく、視野の広さであったり今回のような知識によって救える部分が多分に増えるのだ。どこの国かは知らんが、入隊するのには相当な試験がある、身体能力、精神力、知力と中山には備わっているのだ。
 「大河さん、自分が先頭を行きます。」
 「そうか、頼む。」
 「はい、通訳と大河さんは絶対必要な人間、万一の時には自分に被害が出る方が今後のためです。」
 「中山さぁん、グラッツィエ!」
 「なぜイタリア語なんだ。ヒンディー語にしろマハルなんだから。」
 「メルシー!」
 「中山、コイツを肉の盾にしてもイイぞ。」
 「承知しました。」
 「ひぃぃ!ムードをリラックスさせたくてジョークですよ、ジョーク!」
 「そうか、ムイトオブリガード。」
 「ダンケシェン。」
 「おふたり、それ何語ですか?」
 「イタリア語とフランス語知っててなんでドイツ語とポルトガル語がわかんねぇんだよ。」
 「ひぃぃぃぃ、ムチャスグラシアス!」
 「スペイン語は知ってるのかよ、中山、肉の盾にしてイイぞからしなさいに変更。」
 「はい。」
 「ひぃぃぃぃ、ウィットに富んだジョークです!!」
 「そうかそうか、ありがとう。」
 「今のありがとう、殺すぞより怖いありがとうです・・・。」
 「さて、大河さん行きますよ。」
 中山はさすがだった。オレでは到底気が付かない、床から出る赤外線センサーの位置や竹を細工したような鋭利なものが飛んでくる仕掛け、踏むとガスが立ち込めるスイッチなどを瞬く間に探知してどんどんと先へ進んでいく。
 オレだったら2回は死んでいる。間違いなくそう確信している。本当に中山は頼りになる。そんな中山があるところで急に歩みを止めた。
 「どうした?」
 オレは中山に問いかける。
 「大河さん、さっきの罠に引っかからないようにして、急いで戻ります!」
 中山はオレとマハルを押しながら急に方向転換して距離を取るように促した。その刹那、部屋中に轟音が響き渡り、オレたちの耳は一時的にほとんど聞こえないようになってしまった。
 「ほう、あれを避けるとはなかなかのやり手ですね。」
 奥から小太りのスーツを着た男と大柄な男がこちらに向かって歩いてきた。
 「アセチレン爆弾。音はとんでもなく大きいが、被害が及ぶような破壊力を持たない。この閉鎖空間では非常に効果的な武器、本当は直撃して、五感が麻痺するようになればよかったのですが、1人強者がいますね。」
 オレたちの耳はわずかに聞こえる程度だが、視力や他の感覚は損なわれなかった。
 「私の名前はヘイマン。エミレートファイナンスの広報と交渉人と言う役割で雇われています。こちらはシーク。日本語は全く話せませんが、見ての通り話す必要もありません。シークの圧倒的な力を後でご覧入れましょう。」
 ヘイマンという男は、マハルよりも流暢な日本語を話している。横にいる大柄な男が話題に上がっていたシークのようだ。
 「私たちの目的は日本の経済を我々の罪にすること。この成長のなくなった終わった国、だが、経済力は未だに世界3位から4位。こんなチンケの島国がそんな経済力を持っていながら、高齢の耄碌した政治家に支配されて今後も見込めないのであれば、我々中東資本が有益に活用しようと言うわけです。」
 「それで日本に来たのか。」
 「表向きはですね。君のことも知っていますよ、大河くん。君と我々は哲学を同じとするはず。」
 「金か。」
 「その通り。使うことも知らない、眠っているだけの無価値な金がこの国には溢れている。だからこそ、その金を私たちが使って蘇らせてやろうと言うわけです。この国が経済的に強くなければ、我々に勝てるところは何もない。政治で奪うよりも経済を把握して回収した方が効率も良ければ、手法も簡単、20年程度で我々のものにできるのであればそちらの方が簡単ですからね。」
 「それを外国がやるのは日本人として気持ちいいもんじゃねぇなぁ。」
 「それとは別についでのついでの案件で1つ目的がありました。中東は文化的な背景から女の地位が低く、数も少ない。そのため、世界中から繁殖用に女を調達し中東で子孫を反映させれば、国力も強くなる、人口も増え、憂うべきものがなくなる。そのために各国から女を回収するのも目的です。」
 「ほぉ、それに聖奈を選んだと言うわけか?」
 「正直なことを言えば、誰でもいいのです。女であり、健康体であれば。繁殖用の人間に細かい配慮は不要です。中東の上位層は会うことすらままならない偉大なお方ばかり、その方々の子供を授かること、これは栄誉です。むしろ、先のないこんな国にいるより、偉大な方々の子孫を産み育てる方が存在する価値になります。」
 「ずいぶんと胸くそ悪いこと言ってくれるねぇ。」
 「あなたのお連れ様が御偉方に選ばれるということは、肉体的にも外見的にもとてもホットでビューティーなのでしょう。身分や立場など、我々にとってはどうでも良いことなのです。偉大な方々の相手を務めるには、美しいか、肉欲的かのどちらかが必須なのです。お話をしすぎてしまいましたね。大丈夫、今聞いた話はすぐに忘れるでしょう。なぜなら、このシークがあなた方を生命体じゃなくするでしょうから。」
 胸くそ悪い話だが、こいつらとまともな話をしようとする方がアホだ。オレたちをぶっつぶす気なら、戦うしかねーな。

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