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裏社長大河の悪魔版就職斡旋社 第34話 対外国資本編 18

はじめに

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 この小説には暴力的表現、性的な表現が含まれています。
 好みでない方、そのような表現が苦手な方、18歳未満の方は閲覧しないようにご注意ください。

裏社長大河の悪魔版就職斡旋社34話

 「な・・・なんなんだ・・・これは。」
 『世界的な金融機関であるエミレートファイナンスグループの創始者一家に人身売買、誘拐、人権侵害の疑いが生じ、現在はインターポールや国際機関、各国大統領や首相、イギリスにおけるロイヤルファミリーなど政治、行政、政府機関などからの批判の声明が次々と出されており迅速な捜査に入るものとなりました。現在、中東各国はエミレートファイナンスグループとの関係を否定してあくまでも個人による犯罪であると発表しております、また各宗教組織や武装勢力も関係を否認、事実上エミレートファイナンスグループが完全に孤立した状況となっています。』
 「だっはっは、世界の動きってのは速いもんだな、ボス。聖奈どころじゃなくなったんじゃないか?世界中がお前を追いかけて来る。世界中がお前を見張っている。世界中がお前を見ているぞ!」
 「一体どうやって・・・我が国には妨害電波を含めインターネットが使えないように手筈をしているはずだが・・・。」
 「それはコイツに聞けばいい。梅野。」
 「はい。」
 「よくやったな!!大成功だ!」
 「大河さんが引き伸ばしてくれたおかげですよ。おかげでハッキングしてパスワードを解読したり暗号を解いたりウイルスに感染させたりと手間がかかる作業が間に合いました、VPNを使えばその国の回線を経由しなくても構いませんからね。世界で戦争中の国の若者がSNSを観れてるのはVPN回線を使ってるからですし、繋げてしまえばあとはいろんなことを話してくれましたね、世界中に配信しながらそちらのボスが全てを話して来れましたから。あとは視聴者が各メディアにあげてくれれば。僕らは何をする事なく世界がエミレートファイナンスをぶっ潰して来れますからね。ボスとやら。一言だけ日本語の諺を覚えてくださいね、『口は災いの元』。コレも流れてますけど僕らの事よりあなた方の方が失うもの多いから素早く対応したほうがいいですよ。」
 「だ、そうだ。オレたちのインテリジェンスもやるだろう?どうせ、世界中に追われる身になったんだ。最後に種明かししておいてやるよ。元からオレたちは自分達でエミレートファイナンスをぶっ潰そうなんてこれっぽっちも思っちゃいねぇ。勝てっこねぇからな。だけど、激情したオレたちが勝手に攻め込んできて反撃してきているとお前らは思っただろう、平和ボケしてる国だからって自国の戦力を集めていないだけじゃなくてバカだけで固めたのは悪手だったな、正面から突破すればするほど、お前らの意識はバカ正直になる。そんな時に後ろでインテリジェンス。シギントが得意な人間に暗躍してもらってお前らの首に鎌をかけたわけだ、お前らは切っ先をオレたちの腹に突き刺そうとしてたが、その前にお前らの首が飛ぶ。って寸法だ。全ては演技さ。聖奈に手を掛けた連中だけは渾身の恨みで殺したがな、他の連中はそうじゃねぇ。こんな作戦しなきゃいい相手だったらスタコラサッサと逃走してたさ。今回はたまたまうまくいったが2度目はねぇ。奇跡みたいな作戦が成功したんだ。だから、お前らは滅びる。エミレートファイナンス。オレたちの恨みと悲しみと憎しみを抱えてせいぜい怯えながら過ごすといい。関係者は捕まったら全員投獄は確定、場所によっては森の木にぶら下げられて終わりかもな。」
 「ぐぅぅぅ・・・。」
 「サムライを舐めるんじゃねぇぞ。」
 『エミレートファイナンスに関する続報です、中東諸国は外国からの国際機関等の入国を許可し、捜査に全面的に協力する意向を表明いたしました。エミレートファイナンスは各国に対する脱税疑惑もあるようで、西洋と争いを繰り返していた中東地域も超法規的措置によって今回の案件が片付くまでは一時停戦等を通達し、エミレートファイナンスグループの首脳陣の身柄を先んじて確保することに全力を注ぐ方針です。』
 「逃げなければ。」
 ボスはそう言うとコネクティングルームの画面から完全に消えた。紹介していた女も説明していた側近も全て姿を消した。
 「さてと、マハル。ヘイマン。」
 「いやーーーー、さすが大河さんです!あのボスを完全にノックアウト!アイキャントビリービング!大河さんのいるジャパン行きで本当によかったでーす!」
 「素晴らしい成果だ、大河さん、あのボスを駆逐するとは、シークをやった時から分かっていたぞ、あなたはやる人だと!信じていてよかったと思っている!」
 「2人ともエミレートファイナンスの人だよねぇ。」
 「はい」
 「イエス。」
 「もう、オレが2人を庇う必要はないよねぇ。」
 「ノーーーーゥ!大河さんストップ!そのシンキングタイムはニードレス!マハル協力しますから!」
 「早まる決断は良くないぞ、我々なら君の役に立てる!考えてもみろ、君たちのところで我々が働けばさらに金になると思わんか!?だろう?!」
 「お前らに消されたんだよねぇ。工場に地権に、田所って運転手まで。」
 「た、大河さん・・・?」
 「こ、これはへーーーーーーールプ!オゥマイガッ!」
 「弾は使い切っちゃったんだよねぇ、中山さん。」
 「そうなんですよ、大河さん。」
 「何が1番お手軽かなぁ。中山さん。」
 「やはりナイフで頸動脈をせつd」
 「中山さーん!ユーもアメージング!!ミリタリーにいたと聞きました!オーサム!スキルがナンバーワンね!」
 「中山くん、君のことも我々は評価していたのだよ!?ぜひここは大河くんに協力させてもらいたいのだが!?」
 「こんなこと言ってますよ、大河さん。」
 「どうしたら良いと思います?中山さん。」
 「こういう時はやはり始末する事が最重要d」
 「ノーーーーゥ!ノーーーーゥ!私たちしたくないジョブをしてただけ!コーポレーション!コーポレーションの心です!」
 「中山くん、もう敵は去ったんだ!思考回路を変えようではないか!」
 「よし、分かった。オレから一つ質問をさせてもらおう。それの答えによっては考えてやろうじゃないか。」
 「大河さん、ありがとうございます!」
 「大河さん、ありがとうございます!」
 「お前ら聖奈は良い女だと思うか?」
 「っうぇ!?もちろんです、ビューティフル!それにオーサムバディ!グレーテストガールインジャパンです!」
 「間違いなくビューティフルだ。オレはエミレートで数多の女を見てきたが、間違いなく上玉の上玉だぞ、気品もあり、女らしくもあり母性の塊のようだ。」
 「そうか。フンっ!!」
 その時、オレの両手先から四つの玉がひしゃげる感覚と音が空間に響き断末魔がふた声響いた。
 「な・・・なにが・・・せいか・・・いなの・・。」
 中山が答えを教えてやる。
 「イエスなら色目を使ったからタマを潰される、ノーなら文字通りバイバイだな。おめでとう、正解のルートだったな。」
 「これ・・・正解・・・なの・・・。」
 「あぁ。お前ら大河さんと聖奈さんの絆の深さが分からねぇからこういうことになるんだ。大河さんの優しさに感謝してさっさと歩け。脱出するぞ。」
 オレがボスの姿を見たのは今のところこの時が最後だ。もっとも、ヤツが最も信頼していたであろう側近どもや勝手にさらっていった女たちの一部は確保されたり保護されたり。残念ながら仏になってる奴もいるようだが、あっという間に世界からの攻勢で粛清されつつあるようだ。世界で名を馳せたエミレートファイナンスグループの話を聞くこともめっきりなくなった。
 オレはエミレートファイナンスの地下から脱出したあとは先生の伝手と畠山に連絡があってオレたちは聖奈のいる大学病院に向かった。手術中だったから畠山と一緒に来て来れたクリニックの先生の説明を聞くと、聖奈の上腕骨はひどい折られ方をした骨折で中の組織も骨片で壊滅的に痛めつけられているだろうという見立てだった。利き腕ではないが、大きな後遺症が残る可能性も考慮しなくてはいけないという事だった。
 他にも大したことのない小さな骨折や打撲など大きな傷が身体中に残っているそうで骨折も酷いから本来なら術後数日で帰れる病名ではあるものの、少し長めに様子を見てから家に帰すということになったそうだ。
 畠山と梅野も合流して結果報告をした時には嬉しそうに喜びをあらわにしていたがどうしても今後のことを考えてしまうとなかなかポジティブな言葉を羅列する事が難しいというのが正直なところだ。こういう時に感じるのは聖奈はウチにとっては華であり空気を良い方に朗らかにする天真爛漫さという部分ももっているということだ。不器用な男どもが集まっても重い空気を作り出すだけで話が全く進んでいく兆しがない。
 手術が終わって集中治療室に入った聖奈を見て改めてあの薄暗い部屋で見た時以上に受けているダメージを見てオレの心もダメージを受けた。オレの中では聖奈がとてつもなく大きな存在になっている事をはっきりと自覚した。
 「頑張れよ、聖奈。」
 眠っているから聞こえるわけもないのだが、オレは聖奈に声を掛けて集中治療室から一旦は仮の本拠地にした聖奈の持ち土地の拠点に移動し、風呂に入り心行くまで飯を食って翌朝、再度大学病院に出向くことにした。
 エミレートファイナンスが滅ぶ方向に今は向かっているが、作戦が成功した当日や直後っていうのは勝った気がしねぇって言うのが正直なところだ。飯も風呂も入れるだけで幸せってこういうことなんだな。オレは田所が運んでくれたという重要な書類と現金の存在も確認した。
 「アイツ、1万円すら抜いていってないな。」
 借金をしてたが、返済しオレのドライバーになっていた田所は債務者の中では非常に穏やか・・・気弱と言っていいくらいだったが、やっちゃいけないこととやるべきことの分別はついていたし、オレの機嫌や気分に対応して色々施してくれててたんだ。
 「仇はとったぞ。」
 オレは田所に報告したが、なんとも言えぬ寂寥感にも襲われたのだった。

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