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「決定版日本という国」小熊英二(よりみちパン!セ・新曜社)再読しました

ある政治家の「義務教育は小学校まででいい。中学からは必要ない」という発言を知り、真っ先に思い出したのがこの本です。
“なんちゃって政治家”ならまだしも、内閣総理大臣や副総理をやり現在も要職にある政治家の衝撃的な発言。本人は大資産家のご子息。「(中学からは)行きたい人が行けばいいんだ」の言葉にがっくし。何より、“”サインコサインなどはどうせ社会に出たら使わないんだから”という考えに反発を感じました。学んで教養を得ることにはもっと深い意義かあって、それは国のかたちを整える大切なものなのに、と。
が、同時に、同じように考えている金と権力をもつ人は大勢いるんだろうな、とも感じます。そういう人の多くは、マスコミ等から槍玉にあげられないよう、うまく発言を自己コントロールしているだけで。
この本は、漢字にふりがなが打たれ字が大きくコンパクト。あきらかに子供向けを意識していて、易しい言葉で書かれいるので小学生でも楽に読めます。が、大人の私たちこそ、読むべきかと。私は、知らなかったことだらけだったし、多くの日本人もそうだと思うから。
そして私は、この本を読んでから、義務教育の意義と怖さについて、よく考えるようになりました。
明治政府が、全国民を対象に義務教育を施すようになった背景がよくわかる。庶民が物事をよく考えるようになるのは、権力者にとって超都合悪いこと…でもそのリスクがあっても急ピッチで国力をあげなきゃならなかった当時の状況がありました。
いつの時代も、権力者にとって、支配する相手は、学がなく知恵を持たず従順に働きおとなしく税を納めてくれりゃいい存在。生かさぬよう殺さぬよう…たとえ、日本に奴隷制度はなくたって、人を大切に扱わないっていうのは同じこと。
義務教育と戦争の強い結びつきについて薄々感じていたことが、やっぱりそうなんだ、とくっきりしていく心地よさもありました。
昔なら…20年くらい前なら…たとえば図書館に普通に置かれていたと思うけど、今はどうだろう。多くの人の目に止まりますように。
大昔の…江戸以前の日本史より、明治以降の日本史をざっとでも知っておくことはきっと大事です。これからの日本の方向性と、ここで暮らす自分自身の生き方を考える上で。
近代の日本の概略を知るのに、オススメの一冊です。

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