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さくっとブルーズギターの歴史 其の五【完結】

ブルーズの誕生

16世紀以降、奴隷としてアメリカ大陸に連行されたアフリカ人は独自の言語や宗教など一切合切剥奪された。夢も希望も見出せない時代を生きてきた黒人たちが残した数少ない文化・表現のひとつが歌うこと、すなわち音楽だった。

それらはスピリチュアル(霊歌)、フィールドハラー(農作業の歌、叫び声など色々な意味を持つ)、ワークソング(労働歌)などと呼ばれ、1860年代に奴隷解放宣言がなされた後に生まれたブルーズやゴスペルの礎と言われている。


1903年に音楽家のW.C.ハンディが旅先のミシシッピ州で偶然出会った黒人の演奏を目の当たりにしました。この音楽がブルーズとして世界に広まっていきました。ハンディは以下のように語っています。

その黒人は、私が駅で電車を待って眠っていた時に横でギターを弾き始めた。彼はナイフの刃を弦に押し当て、ハワイアン音楽のギタリストが用いるスライドバーのような方法で演奏しながら歌を乗せて3回繰り返した。それは私が今まで耳にした中で最も奇妙な音楽であった。

奴隷以外に生きる術がない時代を親子何世代にも亘って味わった黒人たちによって生まれたブルーズ。そこからジャズやR&B、ロックンロールなど多くのジャンルが産声を上げ、等しく20世紀初頭から中頃にかけて激動時代の中で形成され、今日まで進化を続けてきました。

そしてこれらの音楽が進化を遂げていく過程の中で、必ずと言っていいほどギターが存在していたのです。

血を引き継いだサザンロック

サザンロックは白人由来のカントリーやブギーなどを始め、黒人由来のブルース、R&Bなどアメリカ南部の泥臭い音楽を前面に押し出したロックといわれています。サザンロックは人種で言うとほとんどがアメリカの白人なのですが、以下のような特徴があります。

・バンドの場合、メンバーの多くが旧アメリカ南部連邦11州出身である。
・地元意識を強く打ち出しており、故郷や南部の州・都市(アラバマなど)を称える曲を持ち歌としている。
・"Dixie"という言葉や、バンドによっては南軍旗がその象徴やアルバム・ジャケットとして使われることもあった。
ギター3人、ドラムス2人など、同じ楽器を複数のメンバーが担当するバンドもあり、兄弟など血縁者がメンバーに含まれる事もあった。

南方のロックという名の通り、派生したジャンルの中でもブルーズの原型を留めているのがこのサザンロックですね。オールマン・ブラザーズ・バンド、レーナード・スキナード、ZZトップ、スティーヴィー・レイ・ヴォーンなどなど。また南部出身以外にもクリーデンス・クリアウォーター・リバイバル、ジョー・コッカー、クリームにローリング・ストーンズまでもが明らかに影響を感じる点があり、世界的に有名となったバンドやギタリストも多いジャンルです。

そして現在も血を引いてるのがテデスキ・トラックス・バンドですね。僕も今まで3回ライブを観ちゃってます(唐突に自慢か!)

ロックギターの代名詞となったハードロック

もうひとつ外すことができないジャンルはイギリス生まれのハードロック。60年代後期にブルーズロックとサイケデリック・ロックのハイブリッドとして生まれたと言われますが、当時のジミ・ヘンドリクスやビートルズの一部の楽曲(へルタースケルター)などから言われている事柄と考えます。

音楽性以外にも強く影響したもので挙げられるのはこの時代に急速に進化したエレキギターとギターアンプです。エレキギターの存在を前面に押し出し、ベースやドラム、オルガン、高らかに歌うヴォーカルで構成されたバンドは明らかに従来のどの音楽より圧倒的にラウドであり、更には常軌を逸するパフォーマンスは誰の目にも新鮮だったことでしょう。

ハードロックは、同じく世界レベルのジャンルへ成長したヘヴィメタルの起源でもあり、世界的に有名なバンドの数も非常に多く存在します。

この時代にハードロックとして生まれたスタイルの多くは、現在のロックの代名詞となったと言っても過言じゃありません。

音楽はまだまだ進化していく

ここまで書いてきたのは歴史のほんの一片で、もっと掘り下げていけるテーマの話です。クラシック、カントリーミュージックや民謡、宗教歌など長く歴史を持つ音楽もポピュラー音楽の起源であるものとして本来は同列で語るべきものです。ただ、今回の主題であるギターと一番結びつきが強いものとして、切っても切れないブルーズを取り上げてみました。個人的なブルーズに対する思いも含め。

余談ですが、このマガジンの表紙の絵は、むかしネットサーフィンをしていて英語ばっかりブルーズ系の海に漂流した時に拾った(と思われる)画像を使いました。好きな絵なんですが、作者も出処もわからないのでピンと来た人がいたらぜひ教えてください。

あ、もうひとつ余談ですが、途中からタイトルに「さくっと~」を付け加えたのは、情報量が多いネットの中でなるべくたくさんの人に読んでほしいと思っての手段でございました。もしまた書くことがあれば今回のようにテーマを絞るか、もしくは間口を広げるか精査して書き始めたいと思います。

それではこれにてさくっと終ります。

最後はこの音楽を聴きながらお別れです。


長文駄文を最後までお読みいただきありがとうございました。

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