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めっちゃわかりやすい発達障害の授業7限目~MSPAからわかる発達障害のとらえ方~【インクルーシブ教育】

みなさんは,
MSPA(Multi-dimensional Scale for PDD and ADHD:発達障害の要支援度評価尺度)
という検査を知っていますか?
興味のある方はこちらをご覧ください。
https://www.kiswec.com/publication_04/

MSPAは,対象児の情報を集め,
それをもとに困り感を数値化する検査です。
WISCのように対象児が課題に取り組むものではありません。

スライド2

対象のお子さん・保護者と検査者が面談をしながら,
観察・情報収集を行います。
そして,図にある項目ごとに評価・数値化します。

自閉症スペクトラム
AD/HD
発達性協調運動障害
学習障害

などに関わる困難さをレーダーチャートにして,
その子の状態像が一目でわかるようになっています。
数値が高く,飛び出している部分が困っている部分
障害が濃い部分ということです。

スライド3

アスペルガー症候群,自閉症スペクトラム,AD/HDなど
医者から診断を受けても,
診断を受けた人の中には様々な凸凹の違いがあります。
もちろん,傾向と対策くらいの理解はできると思いますが,
同じ障害の誰かをモデルにしただけでは,
なかなか自分のことを理解する
あるいは理解してもらうということは難しいでしょう。

MSPAのレーダーチャートを見てください。

スライド4

これが自閉症スペクトラムに関する評価項目です。

スライド5

これがAD/ HDに関する評価項目です。

スライド6

これが(限局性)学習障害に関する評価項目です。
医療現場では読み・書き・計算に関する
学習障害を診断カテゴリーに入れていますが,
文部科学省はこれに加えて,
聞く・話す・推論する力の障害も学習障害と定義付けています。

スライド7

これは運動機能に関する評価項目です。
発達障害のある子は運動機能に困難をもつこともあります。
発達性協調運動障害という診断名もあります。

さて,ここからがこの記事の本題です。

スライド8

診断がある子も,そしてない子も,
実際にこの検査をしてみると
ASDの要素が少し,AD HDの要素が1つなどといった
レーダーチャートになる子がいます。

実際,私が検査をした中で,
ほとんどのお子さんは,こういうタイプです。
ザ(ジ?)・ASDとか,
ザ(ジ?)・AD/HDというタイプの子には,
なかなか出会わないものです。

でも,学校で困っている。
だから受診に訪れたわけです。

実際にその子が困っている,
あるいは特性として表に出ているものは
重なっていたり,
全て当てはまっていなかったりするのです。

コミニケーション
社会適応
不注意に困難がある○○さんという捉え方の方が,
ASDやAD/ HDという診断よりも
現実的で,支援しやすいのではないでしょうか?

このようなレーダーチャートの人もいます。

スライド9

この人には,はっきりとした診断名はありません。
その診断をつけるだけの困っている項目が
揃っていないからです。

だけれど,
こだわりが強く
感覚過敏で
不器用
衝動性が強いので計画的に仕事が進められない
文字を書くことも苦手である。

そうすると
「あの人は仕事ができない。あの人とは仕事がやりにくい」
という評価しか受けず,
自分はダメな人間だと
卑下してしまうことになります。

スライド10

発達障害はこの3つ診断が
大きなカテゴリーとして位置づけられていますが,
発達障害に悩んでいる一人一人は
特性が重なっていたり,
理解されないほどにわずかな苦手さがあったりするものです。

障害の特性について理解し,
自閉症スペクトラムの人のこだわりはこういうものだ
というセオリーを指針にすることもときには必要ですが,
まずはその人自身の苦手なところや
生まれもっての特性を
広い視野で
診断名にこだわらず見ていくことが
現実的な支援には必要です。

そのためにMSPAは有効です。
ただし,MSPAの信頼性を担保するには,
検査者の幅広い知識や観察眼,
話を引き出す力
客観性などが求められます。

今回は以上です。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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