打撃でボールを遠くに飛ばす科学的3要素
今回は、野球の打撃、バッティングで遠くにボールを飛ばすための要素を分析していきます。
あくまでも科学的にはこうなるという観点であり、実際に飛距離が上がったなどの成果はありませんので、参考程度に見ていただけると幸いです。
ボールを遠くに飛ばす要素①
まず1つ目のボールを遠くに飛ばす要素は、物体の質量です。
ここでは打者の体重とバットを含めた総重量となります。
打者自体の重さがボールを反発させるために必要ということです。
実際に投げられたボールが当たる物で考えてみます。
投げられたボールは壁に当たればちゃんと跳ね返りますが、立っているバットに当たっても跳ね返りは壁よりも小さくなります。より質量の軽いペットボトルに当てれば、跳ね返るどころかペットボトルを跳ね飛ばしてしまいます。
もちろん壁とペットボトルでは反発係数は違いますが、木にぶつけたときの反発とノートパソコンにぶつけたときの結果は違います。
物質の反発係数を除いた場合、ボールは硬球でも軟球でも、「当たる物質の質量次第で反発する力が決まる」ということです。
少年野球や部活でもちょっとぽっちゃりめの選手が4番を打ったりしていませんか?ぽっちゃりの選手の方がボールを飛ばせるというのは理にかなっていたということですね。
しかし、体重が重ければ良いというわけでもありません。
イチローは身体が細いのに、練習ではスタンドにバンバンホームランを打ちます。(要素②の項に動画アリ)
では体重は関係ないのでは?という話にもなってきますが、
イチローは振り子打法というものをオリックス時代から使っていました。
体重がない分、振り子という形で、ボールが当たる瞬間だけに力を集中させる打法を編み出していました。
例えば、立ったままジャンプする高さと助走をつけてジャンプしたときの高さは違います。ここでは助走=振り子です。
振り子=助走という動作が加わることで「ボールに当たる瞬間のエネルギーを大きくすることができる」ということも言えます。
エネルギーが大きくなれば、投げられたボールに負けることなく、打ち返すことができます。
まとめると、
「投げられたボールのエネルギーを大きく超えるエネルギーを、ボールが当たる瞬間に加えること。打者の質量が多ければ、そのエネルギーを発揮するための予備動作がいらなくなる。」ということになります。
なのでここではまず、体重を増やすか、振り子打法にするかを決めなければなりません。
体重がないのにノーステップ打法ではボールが飛びません。逆に体重があって振り子打法であれば、かなりの飛距離を見込めるかもしれません。
ボールを遠くに飛ばす要素②
次に必要な要素は技術的なことになります。
どのスポーツにおいても力が最も出せる法則がひとつ存在します。
それが「腕を伸ばす」ということです。
テニスなどはコントロール競技なので腕は伸ばしませんが、同じネットスポーツのバドミントンではスマッシュの際には腕を伸ばし、ラケットと腕は一直線になります。
また、ゴルフにおいても遠くに飛ばすスイングでは腕が伸びています。
野球においても、落合博満なんかはわかりやすく手首を伸ばして打ってます。
バッティングにおいて腕を伸ばすタイミングは「ボールに当たるインパクトの瞬間」になります。
王貞治などは腕が伸びているときにボールが当たるため、インパクトがかなりピッチャー寄りです。
そのため「王シフト」と呼ばれるものができるくらい、ライト側に打球が偏っていました。
過去においても、飛ばす打者はインパクトの瞬間に腕を伸ばしています。
当たる瞬間に腕が伸びていればいいので、構えや右打者左打者は関係ありません。
しかし、西武の中村などを見ているとアウトコースの方が飛ばしやすそうに感じます。巨人の岡本を見るとアウトコースを右に打つ方が飛んでたりもします。
これらの理由はおそらく「アウトコースの方が自然に腕が伸びるから」だと思います。
逆にインコースで腕を伸ばそうとすると、王貞治のようにインパクトがかなりピッチャー寄りになると思います。
イチローのバッティング練習を見てもインパクトはピッチャー寄りでライト方向のホームランが多いと思います。
ここまでをまとめると、
最も力が入る腕が伸びた状態で、体重を使ってボールを飛ばそうというわけです。
ボールを遠くに飛ばす要素③
最後の一つは、やはりスイングに関することです。
3つめは「スイングスピードと当たる位置」です。
硬式野球はどちらも必要になりますが、軟式野球に「スイングスピード」は重要ではありません。
軟式野球でスイングスピードが速すぎると、ボールの変形が強くなり、回転の強いフライになってしまいます。
対して硬式野球では、ボールが変形しにくいため、スイングスピードとボールの当たる位置が重要になります。
硬いボールに硬いバットを当てるため、当たる力が重要になります。
ボールの当たる位置は有名な話かと思います。
「最も放物線が遠くに着地する45度の角度で飛ばすためには、ボールの中心から6~8ミリ下を打つ」というものです。
次にスイングスピードですが、単純に速い方がいいです。
バットを振る速度もエネルギーに換算されるため、インパクト時に最大のエネルギーを加えるという意味では必須になります。
しかし早く振り回すためには、腕を伸ばしっぱなしではいけません。
昔、室伏広治が始球式をやった際に、腕を全く曲げずに、遠心力だけで130キロを投げました。
本人曰くもっと速度は出るはずと答えていましたが、
おそらく「運動連鎖(キネティックチェーン)」と呼ばれるものが関係していると思います。
「運動連鎖」とは簡単に言えばムチのようなもので、柔らかい状態のものが瞬間的に出す力が関係していると思われます。
投球動作においても、腕のしなりはムチのようなと表現されることも多く、
「体のムチのようなひねりで出せる力の限界」と「体の一部を固定して出せる遠心力の限界」がそれぞれ存在し、より力を発揮できるのが前者ということになるということでしょう。
そのため、スイングスピードを出すためにはムチを振るような柔らかさが求められるということになります。
3要素をまとめると
3要素をまとめると、
① ある程度の体重を確保し、振り子打法のようにインパクトの瞬間に体重を乗せ、
② インパクトの瞬間に腕が伸びるタイミングで打てるように、
③ 腕をムチのように、柔らかくしならせて振る。
になります。
あくまでも科学的根拠をもとに理論化したものなので、実践的な解説にはなっていないかもしれません。
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