PBL(Project-Based Learning)
2024年から、新カリキュラムとして「PBL」を取り入れることにしました!Project-Based Learningの略称で、課題解決型学習と訳されます。
米国の教育学者ジョン・デューイが提唱した学習方法で、自分で課題を設定し、自分で情報を集め組み合わせて、自分なりの解決案をつくっていく、主体的な学びです。
ロボプロの経験を活かし新たな世界へ
エジソンアカデミーでは、ロボットプログラミングを通じて様々なことが学べます。具体的には、カリキュラムを修了するころには、センサーやモーターといったロボットパーツに関する知識や、順次、分岐、反復といったプログラミングの基本的な要素が自然と身につくと思います。
さらに、ロボットや機械の構造を知りたいという気持ちや、プログラムを実装する考え方なども、実際にモノをつくる体験を通して備わっていくと思います。こうした知識やロボプロで得られた経験を材料に、新しいものをつくりだすのが「PBL」です。
知識を調理&盛り付けで進化させる
分かりやすいように、料理で例えてみます。
ロボプロで得られた知識や経験を「食材」とすると、「料理」として届けるためには「料理の腕」と「盛り付けの工夫」が大切になってきます。
たとえば、シンプルな食材であっても、料理技術と工夫された盛り付けによって、お正月のおせち料理のような特別な一品に変えることができます。
これをPBLで言い換えると、どのような知識や経験を選び、それらをどう組み合わせて調理するかが、学習の「料理の腕」に相当します。そして、どのようにそれらを完成させ、どの順番で発表していくかが、「盛り付けの工夫」にあたります。
つまり、料理の腕はPBLにおける「考える力」、盛り付けの工夫は「表現する力」を意味します。
知識や経験を組み合わせて新たなアイデアを発想する(=考える力)、それをカタチにして伝わるように発表する(=表現する力)、それにより知識や経験を進化させていくのが「PBL」です。
自分の興味や疑問を自分なりの表現で
何を作り、どのように表現するかは、自分自身で決めていきます。やりたいこと(興味)や、気になること(疑問)の中から探究テーマを設定します。
興味や疑問というのは、探究するための動力源です。
「これをやってみたい!」「これはなんだろう?」というような好奇心から生じる問いが、自然と行動へと導きます。
このように、自分自身で気になるテーマを見つけ、それを探究していくのが「PBL」です。好奇心のまま動くことで、外部からの動機づけ、例えば「おかね」や「いいね」などがなくても、探究を進めていけます。
自分の内側から湧き上がる興味や疑問に基づいて、自分なりの方法で学び、探究を進めることが、PBLの醍醐味と言えます。
ワークシートを参考に「問いを立てる」
この探究テーマの設定と問いの立て方がとても大切なので、ワークシートを参考にしながら進めていきます。
スクール生1人1人に合わせたワークシートを用意し、それを基に自らの問いを設定していけるようサポートします。
このワークシートは、スクール生が今までの経験を振り返り自分を見つめ直す機会にもなります。自分はどんなことに興味があって、どんな意見を持っているのか、自分自身の理解も深まると思います。
自分について深く理解することは、自分の判断軸を形成する上でとても大切です。自分が何に興味を持ち、どんな意見を持っているのかを知ることで、悩みすぎることなく決断していけるでしょう。
例えば、AO入試や就活などの面接などでも、自信をもって自分をアピールしていけると思います。
日々の学びを言語化し振り返る
問いを立てたら、制作を進めていくのですが、いざ進めてみると、思う通りにいかないこともあるでしょう。
しかし、この経験が学びの本質だと思っています。そこでの気づきや発見は、探究プロセスにおける重要な要素です。
その日々の気づきを書き記して、学びのログをつけていきます。
具体的には、授業前の予定と授業後の感想を書いて、自身の学びを言語化します。そして、作品が完成した後に振り返ります。
そうすると、自分がどのように学びを進めてきたか、客観的に確認することができるので、自分の考え方や行動パターンをメタ認知することにもつながります。
「次はこうしてみよう」「これを深掘りしてみよう」と、新たな問いの種が生まれることもあるでしょう。
この学びの振り返りも、ワークシートをもとに進めていきます。問いの立て方と同じように、自分主導で進めていき、立ち止まったときにサポートをしていけるよう伴走させていただきます。
コミュニケーションツール「Discord」の活用
その授業前後の言語化と作品の投稿に、コミュニケーションツール「Discord」を活用します。Discordを通じて自身のプロジェクトの進捗を共有し、他のスクール生からフィードバックを受けたり、他者の作品に対してコメントを行います。
この相互作用によって、仲間と切磋琢磨しながらプロジェクトを進めていきます。
1人で何かを創っていく活動において、作品ができるまで不安な気持ちや戸惑いが出てくるでしょう。このような時に、友達やスタッフのサポートが心強い存在となります。
Discordを通じて、スクール生同士が助け合い、一緒に各自のプロジェクトを応援し合うことで、持続可能な「ものづくり」をしていけると思っています。そういった優しい文化を作っていきたいと思います。
プロジェクト期間は「4ヶ月」
4ヶ月で1つのプロジェクト完成を目標としますが、必ずしも完成する必要はありません。重要なのは、プロジェクトを通じた学びのプロセスであり、その途中経過も含めて報告することに意義があります。
また次のプロジェクトで完成を目指し取り組んでもらえるといいです。
自分の納得するアイデアが発想できるかは「運とタイミング」にもよるので、無理に完成しなくても良いです。ただ、途中であっても報告をしてもらいます。自分がどう学んでいるのか、プロセスを発信することで、他の人も客観的に確認できるようにしてもらいます。
そして、最終的にプロジェクトをまとめ、1人1人のワークシートを完成させることで、学習の一区切りとします。このプロセス全体を通じて、スクール生は自身の成長を実感し、次のステップへ準備することができるでしょう。
まとめると、このようになります。
何を学ぶかより「どのように学ぶか」
つまり、PBLは「何を学ぶか」という内容よりも「どのように学ぶか」というプロセスを重視した学びです。
どのように学ぶかという「自分自身の学び方」を認識できれば、あらゆる【テーマ】と【表現方法】にも対応していけると思っています。
AさんのPBL
テーマ:ロボットプログラミングを知らない人にも身近に感じてもらうためにどうすればいいか。
表現方法:ロボットパーツのキャラクターを作ることで、親しみやすいビジュアルでパーツの理解をしてもらう。
BさんのPBL
テーマ:猫カフェを知ってもらうためにはどうすればいいか。
表現方法:魅力的なホームページを作り、プレゼン動画を発信する。
その【テーマ】を出来るだけ言語化することで、動き出す方向が定まり、自信を持って進められると思っています。この「どのように学ぶか」という点に重点を置くことで、自分自身の学び方を確立し、それを通じてさまざまな課題に対応する能力を備えることができるのです。
予測不可能なVUCAの時代
それではなぜ、このPBLを取り入れていくのか、それは「VUCA」の時代に対応していくことがひとつの理由です。VUCAとは、「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字を取った言葉で、現代の急激に変化し予測が困難な状況を指します。
このようなVUCAの時代において、自分で課題を設定し、自分で情報を集め組み合わせて、自分なりの解決案をつくっていく、主体的な学びは必須であるといえます。
また、AIやロボットが社会に広く浸透していく中で、人間はこれらのテクノロジーと協働しながら生活していくことが予測されています。
AI・ロボットと共存するうえでの「人間の価値」
新型コロナによってテクノロジーがより身近になりました。
買い物はネットショッピング、スーパーなどには自動レジ、仕事はリモートワークやリモート会議。2023年にはチャットGPTが流行語になるなど、AIとロボット技術が私たちの生活に密接に結びついています。
機械によって仕事が奪われると懸念している人も多いと思いますが、見方を変えると、すでに人間がシステムに組み込まれるともいえます。
例えば、ウーバーイーツのようなサービスでは、注文受付から決済までが自動化されており、最後の配達のみ人間が行っています。これは見方によっては機械が人間を道具として使っているようにも見えます。そして、将来的に自動運転車によってさらに自動化される可能性もあります。
もちろん、この仕組みが悪いと言っているわけではありません。
今後このような機械化、自動化が進んでいくなかで、人間の価値が大きく変化していく可能性があります。
人間だからできること
そうしたとき、そういったことに自覚的であるかどうががとても大事だと思っています。
「コンピュータにできないことはなんだろう」「人間の価値ってなんだろう」という問いを抱え社会を見ていくことで、機械と人間の役割についての理解の解像度が上がると思っています。
私が思う機械と人間との違いは「自分なりの学びができる」という点です。人間はただ情報を記憶するだけではなく、自分の知識や経験を通じて新たな知識を構築します。
与えられた情報を効率よく処理し、暗記することは機械の方が当然優れています。一方で人間は、多様な視点から物事を考えることができます。
人によって見方考え方が違うのであれば、「どう学ぶか」という学び方も違って当然です。自分なりの認識で、新しいことを学んでいく、それが人間たらしめる価値だと思っています。
好奇心を自信に変える
そのように、各々が推論して知識を構築していくためには「好奇心」が重要です。好奇心は、新しい知識を探求し、学びを進める上での原動力です。
この好奇心を追求することで、持続的なモチベーションを維持できます。そして、創造的なプロセスである、「つくる」と「わかる」を繰り返すことで、自分に対する自信が積み上がっていくと考えています。
PBLでは、学習者が自ら問いを立て、情報を収集し、制作を通じて自分なりの答えを見つけ出します。この一連のプロセスは、単なる知識の習得を超え、自分自身に対する深い理解と自信の構築に繋がります。それによって何が起きてもどこに行っても、自分で決断していくことができると思います。
そして、その「何かを決める」ということも、人間たらしめる価値だと思います。
やりたいことをやってみようと思うこと、実際作ってみて思うようにいかなくてもおもしろがれること、おもしろくなかったら違うことをやってみること。それであとで振り返って「この経験はこういう意味があったからオッケー」と納得できること。
そういった自分の認識を柔軟に変えていく姿勢が、人間ならではだと思っています。
PBLを通じて、何が起こっても、どこに行っても、大丈夫な自信を積み上げてもらいたいと思っています!
よくある質問(Q&A)
Q1: PBLとは具体的にどのような学習方法ですか?
A1: PBLは「Project-Based Learning」の略で、課題解決型学習と訳されます。この方法では、学習者が自分で課題を設定し、必要な情報を集め、自分なりの解決策を考えるという主体的な学びを行います。米国の教育学者ジョン・デューイが提唱したこの学習法は、自己主導で深い学びを促します。
Q2: PBLの効果はどのようなものが期待できますか?
A2: PBLを通じて、学習者は思考力や表現力を養うことができます。自分の興味や疑問に基づいて学ぶことで、より深い理解と高いモチベーションを維持することが可能です。また、実践的な問題解決能力や創造性も育まれます。
Q3: PBLは初めての人にも上手くできますか?
A3: PBLは自主性と創造性を重視するため、初めての人でも自分の興味や好奇心に従って学ぶことで、徐々に上手くなることが期待できます。サポート体制も整っているため、学習のプロセスを通じて自己成長が促されます。
Q4: PBLではテキストは使用しませんか?
A4: PBLでは、伝統的な教育方法と異なり、特定のテキストに依存することは少ないです。学習は主にプロジェクトベースで進行し、自分で情報を集め、解決策を考える過程で知識が構築されます。
Q5: PBLでは課題は自分で設定するのですか?
A5: はい、PBLでは学習者自身が自分の興味や疑問に基づいて課題を設定します。これにより、より関心を持って学ぶことができ、自己認識を深めることができます。
Q6: PBLは初心者には難しいですか?
A6: PBLは慣れるまでに時間がかかるかもしれませんが、自分の興味や好奇心に基づいて学ぶため、徐々に慣れていくことが期待できます。初めは難しく感じるかもしれませんが、自分自身のペースで進めることができ、サポートも受けられるため、徐々に自信を持って取り組むことができるでしょう。
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