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令和の中学校月報⑦中学生の「メンバーシップ」の育成

はじめに

近年、教育現場では「リーダーシップ」の育成が重視されてきましたが、現実にはリーダーだけが活躍するのではなく、集団全体が協力して目標を達成する力が求められています。そのため、「メンバーシップ」という新しい視点が注目されています。リーダーだけでなく、すべての生徒が集団の一員としての役割や責任を果たし、協力し合うことで、学びの質が向上し、豊かな学校生活を送ることができるのです。

本記事では、私が教育現場で実践してきた「メンバーシップ育成」の取り組みを通して、生徒たちがどのようにして成長し、協力し合う力を身につけていったのかを紹介します。また、主体的・対話的で深い学びを通じて、いかにして集団が一体となり、より良い学びの環境が作られるかについても考察していきます。

教師や保護者の皆さんにとって、生徒がリーダーだけでなく、良きメンバーとしても成長できる環境をどう作り出すかは、非常に重要な課題です。この記事がそのヒントになれば幸いです。


1.主体的、対話的で深い学び

これからの新しい学びで学校は、子どもたちに何よりも重要なことの一つに問題を発見する力、課題解決をする力と言われています。そのためには一人だけでするのは困難であることから、多様な他者と一緒に取り組む力が必要になります。

「主体的・対話的で深い学び」とは、アクティブラーニングの視点から生まれる学びのあり方であり、学習指導要領の中核を担う考え方です。具体的には、以下の要素から成り立っています:

1-2主体的な学び

生徒自身が課題を設定し、学びの意義や目的を見出し、自己実現を図る学びです。自分のキャリア形成の方向性と関連付けながら、見通しを持って粘り強く取り組み、自己の学習活動を振り返って次につなげます。

1-3対話的な学び

複数の人々がお互いに意見を出し合い、課題解決に向けた共同作業を進める学びです。子供同士の協働や教職員、地域の人々との対話を通じて、自己の考えを広げ深めることが目指されています3。

このアプローチは、単なる知識の習得だけでなく、自己の成長や社会での役割を考える力を育むために重要です。例えば、子供たちが将来にもつながる力をバランスよく育むために、主体的・対話的で深い学びを授業に取り入れていくことが求められています。

2.メンバーシップの指導に至るまで

2-1 学年の現状

外国にルーツがある生徒や発達障害未診断のグレーゾーン、部活動以外しない、ヤングケアラーやDVなど家庭に問題を抱えているなど多様な生徒がいます。なかには、自分勝手な行動が目立ち、活動や共同作業に参加せず、メンバーに迷惑をかけることもあります。このような生徒たちは、うまくいかないことは他人のせいにし、自分の利益や楽しいことを優先させるような生徒もいます。

また、校外のスポーツクラブに所属している生徒たちは、過密なスケジュールや疲労の蓄積で、仲間だけで集まり、他の生徒とのつながりは希薄になります。近い将来、部活が校外のスポーツクラブに代わると、ますます学校での一体感はつくりにくくなるかもしれません。このような状況では、主体的、対話的、深い学びの効果は薄いものになります。

2-2 烏合の衆から一体感のある環境に 

バラバラな印象がある学年を一致団結する学級、学年をつくることが求められます。バラバラな状態でおこる弊害は、学習環境の悪化や成長の機会の減少、社会性の欠如などが考えられます。これらの弊害を防ぐために、一体感のあるクラス、学年、学校をつくりが重要です。

メンバーシップの指導の必要性

リーダーシップを育てるということはよく聞きますが、現状から考えるとメンバーシップを重点に指導をします。その中でリーダーシップを学ばせていきたいと思います。理由は、リーダーとメンバーの乖離が見られるからです。リーダーのいうことに協力しなかったり無視したりすることで様々な問題がおこっていることが見られます。そこで、メンバーとして役割や責任を果たすトレーニングから始ました。

3.指導の実際

3-1 教示

学年集会で、「メンバーシップ」という言葉を伝えました。生徒は「リーダーシップ」はよく耳にしていますが、メンバーシップという言葉は初めて聞いたようで「え?」という表情をしました。話した内容は、

・誰でもがリーダーシップをとれるようになって欲しい。そのためにはよきメンバーになろう。目標に向かうときには、リーダーもメンバーも同じ量の知識や努力が必要である。
・行事によってリーダーとメンバーは入れ替わる。誰もが両方の力を経験し、伸ばして欲しい。
・メンバーシップを身につけることは、将来の社会生活を豊かなものにする。

という内容です。手ぶり身振りをつけて断定的な言いかたに生徒は、よく聞いていました。学年通信でも同じ内容で掲載しました。

学年通信

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