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 涙のシルエット

サラマンドラ・ブリトリエールは
ちょっと湿った真夜中に
起きる癖がある。

彼女は目覚めると
鏡を見て
同時にありったけの聴こえる音に
耳を傾け
一番つまらない音につかまってしまい
そして、涙するのであった。

その涙は、歳月を経て熟成された
熱い涙であることを
サラマンドラ自身は知らない。

彼女の涙から、ほのかな潮騒の気配が匂う。
愛をかじってしまったときのように……
侘びしく甘い
寂しく熟れた

ああ、サラマンドラ、早くお眠り
気が狂ってしまうよ。

もう、夜が明ける手前の時間になってしまった。
あと僅かな夜を
彼女は涼しげに眠らなければならない。

サラマンドラ・ブリトリエールは
熱い涙のしずくを
指に灯し
ホンの少し
その指を反らせると
アラビア文字の要領で
涙から生まれた詩を
夜空の星々に向けてなぞった。


詩の行方は 月が見ていた。

サラマンドラになぞられた詩は
月明かりに照らされ 
そのシルエットを浮き彫りにして
子守歌となり
鏡の中の私を
深く寝かしつけてしまったのである。

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最後にいつも残るのは
詩人の人である
終わりに居る人

   ❖❖❖ サラマンドラ・ブリトリエールを
     見たことのある人の走り書き ❖❖❖❖

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