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アラ還 待ち焦がれた「峠」を見て

 確か、2020年でしたかね。当初の公開予定は…
延期に延期になった「峠」を観て来ました。

 この原作 司馬遼太郎作の『峠』
この本は、私にとっては、忘れもしない一冊でした。
1985年、大学卒業を控えて、翌年の入社までに読んでおきなさいと送られて来た本。要は内定者の課題図書というやつですが、それがこの一冊でした。

 普通、こういう本は嫌々読んで、適当にレポートでも出してというのが、よくある話なのですが、読み出してみると、これが面白い!夢中になったのを今でもよく覚えています。
 当時入っていた映画サークルの同期に、「何、読んでいるの?」と訊かれて、教えてあげたら、その友人も夢中になり、自分用のもう一冊を後日、買ったということもありました。

 そういったことで、もう何年前になりますか、この本を映画化するということを知ってからは、いつ観れるかと楽しみにしておりました。

 今回の鑑賞はようやく念願叶ったということでした。

 さて、観た感想ですが、役者もいい。画面、映像もきれい。上品につくられている作品でした。

 が、どうも物語に入っていけない自分。ところどころもどかしくなる自分を発見しておりました。

 主人公は、越後長岡藩の家老・河井継之助。大政奉還により260年余りに渡った江戸の世が終わり、諸藩は東軍(佐幕)と西軍(官軍)に二分、戊辰戦争へと突入していきました。

 河井の考えであり、長岡藩の考えとなったのは「小藩と言えども他を頼まず、独立自尊、自らの力を信じる以外に藩の生きる道はない」というもの。
 幕府側、官軍側どちらにも与しない「独立」路線でした。そのために、軍備を整えます。いわゆる「武装中立」路線です。スイスのようなことを目指していたのです。手動式機関銃のガトリング砲までも装備したことは、継之助をさらに有名にしました。

 この辺の話になると、2022年2月に勃発したウクライナ問題が頭をよぎります。公開延期にはなったけど、この時期に公開されたこその意味があるというところでしょうか。

 継之助は、決して戦争をしたいわけではなかったのですが、談判の相手たる新政府軍の軍監 土佐出身の岩村精一郎が悪かった。継之助(42歳)の器と到底、釣り合いません。この高邁な思想を、勢いで権力握っただけの若者(24歳)には到底分かる訳もなく、和平交渉は決裂。戦火を開かざるを得ないとなります。

 映画を観終わって、自分の期待通りではなかったことに残念な気持ちで家路に就いたのですが、とぼとぼ歩きながら、その訳は分かりました。

 私は、この時代に、先駆的かつ画期的思想を持つようになった河井継之助の人材育成の過程に興味を持っていたのです。それが、映画には、もう完成されている継之助が登場ですから、そりゃ、いけませんわ。

 この映画で描かれる前の世界を観れると期待していった私が悪かったという一幕でした。

 『峠』(上)
 『峠』(下)

 そう、映画64(ロクヨン)のようにできればよかったのかも。
 (いろいろと映画会社のご事情もあるでしょうけどね)

 それにしても、「中立」を守るためには、「武装」が必要。
 う~ん、、、これこそ、国を守る。国の安全保障問題か。
 永遠のテーマです。

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