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叱るよりも子どもの声を聴く

『頭に血がのぼった。』
クラスの男の子が言った言葉。



喧嘩っ早い、ガキ大将。
学級初めは、誰も逆らえない存在で、クラスに一つしかないボールを奪い取って、寄せてやんない!なんて言って、ボールをぶつけていた彼。


そんな彼は先日の帰りの会で、〇〇ちゃんと〇〇くんが、折り紙の折り方を教えてくれて嬉しかったです。と愛らしい声で発表していた。

彼は先日、友達と遊びの約束をするために手紙を書いて、渡すのにソワソワしていた。



近ごろの放課後、彼は他校の子どもにじっと見られたことが気にかかり、追いかけ暴言を吐きまくったそうだ。

昨年までは、そのようなことがあったときには、嘘をつき、黙りこくって、なにも言わない。
生徒指導困難な児童だった。

その日も生徒指導担当の先生や前担任の先生から、しっかりと周りの事実を固めてから、事情を聞くようにと言われた。


彼が登校と同時に
『先生の赤ちゃん元気にしてた?』
『名前もう一度教えて。』
嬉しそうに、愛らしい声で話しかけてくる。

その時、私は周りに事情を聞かないことに決めた。

大丈夫という直感があった。

赤ちゃんの話を終えたあとに。

あっ、そういえば!と思い出したふりをして、昨日のことを別室で笑顔で尋ねてみた。

すると、一つ一つの状況を彼は丁寧に説明していった。事実と異なることは多少あれど、おおかたが事実通りだということは聞いててわかった。

その中で彼は,追いかけ回して,暴言をはく前の自分の状況を『頭に血がのぼった』と落ち着いた声で説明した。

すごく理性的で、客観的な捉えだと思った。


そこで、私は前日の自分のことを謝った。

その前日、私は彼を疑って叱った。
ある子に
触るなや!と言った、うちの1人の加害者と誤解して叱ってしまった。
その場でも、その後も謝ったが。
もう一度謝り、本当に冷静じゃなかったな、と叱り方も含めてすごく反省した。

きっと,あの時先生は頭に血がのぼって、きちんと考えられなかったんだと思う。ごめんね。

だけど、あのあとホッとしたあなたの笑顔と、いいよっていう優しい声にすごく救われたよ。
ありがとう。

それで、もう一度説明聞かせて。
そしたら、先生(生徒指導担当)に説明しておいでと言って、職員室へ送り出した。



そのあと、彼は『もう二度とないぞ!』と叱られ、目を吊り上げて帰ってきた。

あー。頭に血がのぼってるなあ。
なんて、思って頭をそっと丁寧に撫でた。


頭に血がのぼったからってそんなことやってええんか!何度も、何度も同じこと繰り返してるな!

きっと、そう叱られたのだろう。
正直に話せるようになった彼はどこへ歩めばいいのか。
頭に血がのぼったと、自分を語ることのできた彼のなにが報われるのか。


人間は失敗する生き物だ。

失敗に蓋をすれば、自分に見えないバリアができる。自分に言い訳をしたり、嘘をついたりできるようになってしまう。そして、自分を見失う。

失敗を語り、向き合えば、自分を捉え直すことができ、自分らしさを確立していくことができる。

こんな大人にだって、なかなかできないことを
子どもは、しっかりやってのける。

子どもの成長はすごいんだから。笑


どの姿も彼だ。
優しくても、乱暴でも、恥ずかしがりでも。
どの自分とも出会い、どれも自分だって大切にすることで、本当に大切な自分に統合されていく。

全ては真ん中で繋がっていて、全ての経験が糧となり、自分の中にいる自分が濃くなっていく。

そうやって、自分を大切に、他人を大切にできるようになって、人として成熟していくんだと思う。

そんな経験をしていける場所が学校で。
そんな経験を大切にしたい時期が子ども。


だからこそ、叱るよりも子どもの声を聴くことが大人の役割だと私は信じている。
とはいえ、まだまだ未熟で不用意に叱ってしまうことがあるのも私の現在地でもある。

子どもは大人の想像を越えて成長していく。

ちなみに、昨年まで事実を話さなかった自分を彼は言葉が足りなかったと表現していた。

私たち大人も、その時は自分を語るのに言葉が足りなかったけれど、時間が経つと言葉になるなんてことも多くあるんじゃないだろうか。
また、子どもに学ばせてもらったなって思う。

#コーチング #生徒指導 #学校 #小学校 #先生 #子育て  

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