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読書感想:浅草ルンタッタ(劇団ひとり)

個人的にツボでした。冒頭、明治大正の吉原を扱ってる点が一番です。当時の吉原に興味がある自分としては、「資料が少ないはずなのに、いいとこに注目してくれました!!」と拍手喝采したい気持ちです。

※正確には序盤の舞台が浅草六区の愉快な女郎屋(建前は花屋)で、中に元遊女が2人います。あるとき店の前に置き去りにされていた女の赤ちゃん(主人公)を、元遊女たちを中心にみんなで協力して育てることになり…という人情噺のような始まりです。

当時のその界隈で、女が出世するなら吉原なんだぜ!っていうノリだったのをあんまり説明されてないので、一般的に伝わるかどうかよく考えたら心配です。でも樋口一葉とか好きな人ならわかると思います!

ネタバレですが、事件が起きて逃亡者となった主人公の少女が浅草の劇場の天井裏(舞台が見えるのぞき穴がある)に身を潜め、芸能文化を吸収しながら生き延びる設定もめちゃくちゃツボです。絵が浮かぶ表現が多く違和感なしでした。

更にネタバレで、登場人物たちが震災で荒れ果てた浅草-神奈川の刑務所間の雑踏を死に物狂いで駆け抜ける(走れメロスばり時限つき)くだりはダンジョンのようで、ある意味ファンタジーですが充分エンターテイメントでした。映像をイメージできる読者ならきっと、ほんとの最後の最後の駆け足な展開も、「あー!カタルシス!!」となれると思います。

イメージ力が問われる点あれど、映像化が非常に楽しみな小説でした。
そうなったときは、華やかなラストが冒頭にきて回想で始まる形式になるんじゃないかな? 


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