見出し画像

相続雑記(②申請)

 ここからが苦労した部分です。相続人の中では主に筆者の役割です。


【銀行・証券会社】

(全般)

  • 金融機関は、都市銀行、地方銀行、農協、証券会社がありました。

  • 金融機関によって多少差はありますが、被相続人の戸籍謄本(and/or法定相続情報)、相続人の印鑑証明が必須であることは同じです。これに、遺産分割協議書(or遺言書)、各金融機関所定の書式です。いずれも受理されるまでに修正が入るなど、ラリーか続きますが、最終受理されたら1週間程度で払い戻されました。

  • 相続税申告にあたり、被相続人が死亡した日時点の残高証明書を、併せて申請しておく必要があります(証券や外貨預金はその時点の時価、定期預金は利息の清算があるため。)。

  • 各金融機関に相続に連絡をした時点で、その口座は凍結され、お金の入出金はできなくなります。亡くなった後は、被相続人の口座をいじらないのが鉄則です。(かつて、仕事で、賃料を支払っていた方が亡くなられ、相続人のお一人から、支払口座を(自分の口座に)変えてくれと依頼されました。しかし、不動産の所有者にお支払いするので、相続が終わったらその書類をもって承る、それまではできない、とお断りしたこともあります。最近の詐欺メールなども考えると、書面でしっかりいただくのが筋でしょうね。)

  • 多くの金融機関(例外は後述)では、郵送でのやり取りが可能で、相続を専門に扱う部署が対応します。HPにいきなり相続手続きの申込みまでできるところもありますが、一方で、「詳しくはお取引店に」とだけ記載がある場合もあり、それぞれのカラーがあります。

  • 被相続人名義の口座をそのまま承継する(口座番号はそのままに、名義を変える)ことはできませんでした。相続人が新たに口座を開設し、そこで相続財産を受け取るか、相続人名義で、全く別の金融機関口座に振り込むかの選択です。

  • 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)は、本来、法定相続情報一覧図があればいらないはずですが、それでも要求する金融機関がありました。

  • 遺産分割協議書や公的証明書類(法定相続情報一覧図、戸籍謄本、印鑑証明など)は、原本還付をしないと戻ってこないかもしれません(遺産分割協議書はマスト。いちいち簡易書留や赤のレターパックで送ってくるので、再配達や郵便局での受け取りが多くなりがち。)。

  • 公的証明書類は、金融機関への申請日より前に取得してください(申請書をバックデートして公的書類を後でとったようにすると受け付けない)。

  • 金融機関は、書類の訂正をしてくれないし、加筆もしません。まぁ当然と言えば当然ですが、「このくらいいいじゃない…」と思える加筆修正でも、突き返してきます。

  • ゆうちょ銀行以外は遺産分割協議書が添付書類となるので、複数金融機関がある場合は、そのやりとりをしながら、手続に進めることになります。

(ゆうちょ銀行)

  • ゆうちょ銀行は、遺産分割協議書がなくても、所定の書面に全相続人が押印すれば足りる点は負荷が少ないように見えますが、次のような点に注意する必要があります。

    1. 相続人について、申請書類への代筆(住所・氏名・受取口座など)は一切許されず、申請を受け付けません。(これはほかの金融機関では、まちまちです。実印至上主義のところもあります。)

    2. 当事者Aと当事者Bの住所が同じでも、決して、省略して「同上」と書いてはダメです。申請を受け付けません。

    3. ゆうちょ銀行の決めでは、相続財産を受け取る人が「請求人」になるようです。例えば、申請人Aさん、受け取るのがBさんでは、申請を受け付けません。どちらもBさんである必要があります。Bさんが請求人かつ受取人であって、提出するのがA(相続人の一人=筆者。性別も年齢も違います。)であっても、ゆうちょ銀行は受け取ります。厳密にいえば、Bさんから提出者に過ぎないAさんへの委任状を用意しておいた方がベターです。これも、Bさんに全部自署させる必要があるのは同様です。

    4. どこの郵便局(本局・集配局ではなく、いわゆる特定郵便局)でも申請書類を受け取ります(筆者が訪れたのは本局でしたが、「どこでも申請できますから…」と、なんとなく嫌がっている気配を感じました。)。他方、他の金融機関と異なり、郵送で申請を受ける気は全くありません。気を付けるべきは、銀行窓口は15時までという印象はお持ちでしょうが、郵便局の郵便窓口は17時まで開いているものの、貯金窓口は16時までであり、かつ土日は受け付けないことです。結局、平日昼の勤め人の場合、会社を早退するか休まないと、書類を出せません。

    5. インターネット上に、書類の記入例なども見当たらないのは極めて不親切です(他の金融機関だと、最初にコンタクトすると、記載例まで記したパンフレットを送ってきます。)。

    6. 本局の場合、その場での受取り(=現ナマ)を促してきます。早く手続が終わるという意味のようですが、遺産分割協議書と異なる場合(すなわち、窓口に行った人が相続しない場合)は、頑なに拒否してください。あとで揉めると思われます。

(とある農業協同組合)

  • 農業協同組合は、郵送での手続きを受けず、店舗での対面手続のみでした(上席に相談したが郵送はダメだと言われたとのこと。)。しかし、書類一式を持参すれば、その日のうちに相続人の口座開設、相続財産の入金まで終わりました(キャッシュカードは別途郵送)。

【不動産】

  • 不動産取引の基本中の基本ですが、権利書(登記済み証)で確認するか、登記簿謄本を取り寄せて確認してください。固定資産税の課税台帳は一つの目安にはなりますが、後述のとおり、完全ではありません。

  • 筆者のケースでは、父の生家(以下「旧生家」)が取り壊されて、再築されているのですが、旧生家のうち、一部の建物(不動産登記法上は「附属建物」)が残されていました。これは登記簿を見ないと分かりませんし、もっと言うと、旧生家の滅失登記がなされていなかったので、登記簿を見てもわかりません。旧生家は主たる建物と附属建物3つで構成されていて、そのうち附属建物1つだけ残して解体。取り壊す前は、主たる建物と附属建物2つは連続していましたが、現状は、残された附属建物は独立したものとなっています。このため、旧生家の滅失登記→残された附属建物を独立した1軒の建物として変更→現存する新建物と一緒に相続による所有権移転登記、の段取りです。

  • 2024年4月から相続登記が義務化されます。注意が必要です。

  • 不動産でも遺産分割協議書が必要ですが、たまたま繁忙期だったのか、法務局に申請してから3週間くらいかかりました。

  • 登記申請は自力でも可能ですが、相当の知識がない限り、司法書士に頼むのが、結果安いです(企業法務をかじっている筆者ですが、商業登記はできても、不動産登記を自力でやった経験はないです。)。建物滅失登記などが絡むと、土地家屋調査士の力も必要です。筆者の場合、たまたまご夫婦で司法書士と土地家屋調査士を営んでいらっしゃったので、連携がうまくいきました。ただ、そこまで考えて司法書士を選ぶ必要はないと思います。

  • 依頼する際に、固定資産税の課税台帳を用意しておくと、登記費用(登録免許税)がわかり、総額が把握できます。

(③に続きます)


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?