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葛藤をうまく使う組織② ~自ら変わる力を耕す仕組みを持つ

「葛藤」を「うまく使う」ということをテーマに前回から引き続き書いていきます。

ここで扱っている「葛藤」は個人の中で起きている葛藤もあれば、他者との間でおこる意見や価値観の違いによる葛藤もあります。葛藤は嫌なものです。わたしたちは、この葛藤を無意識に避けることがあります。

「あのぶどうはどうせすっぱいんだ」

この葛藤を「認知的不協和」と呼ぶことがあります。思っていることとやっていることのギャップ、のようなものです。わたし達はこの不協和を解消する枠組みをでっちあげるのが得意です。イソップ童話の「すっぱいぶどう」のキツネをご存知でしょうか。高いところになっているぶどうを獲ろうとするキツネの話です。キツネはいくら跳んでも跳ねてもぶどうが取れません。結果、「あのぶどうはどうせ酸っぱいんだ」と決めつけてその場を後にするという話です。

さて、このでっちあげは、何が問題なのでしょうか。
それは、自分の理想とする姿に向きあう機会を「知らないうちに」避けてしまうということです。

PDCAが回らない理由はここにあります。逆説的に「葛藤と向き合わない方法」を考えてみると明らかです。

①理想を持たない(Plan)
理想がなければ葛藤のしようがありません。日々目の前のことをこなすだけ、ですね。
②チャレンジしない(Do)
理想はあるけどどうせだめだと諦める、わけです。自虐です。
③気にしない(Check)
失敗しても気にしない。「次があるさ」と前に進む。前向きです。ただ、何も解決していません。仮にうまく行ってもラッキー、結果オーライ。何も学んでいないということになります。
④その場しのぎの正解を探す(Action)
これがキツネのパターンですね。


「このレモンはとっても甘いんだ」

前回のnoteで、3つの問題のレベルについて書きました。それを縦軸にして、横軸に組織レベルを加えたのが下の図です。

創発

一番左下のゾーンは「発生型」×「個人的」となります。これは、一人で目の前の問題に対処していることになります。これは、いかにも進歩が難しそうですね。とはいえ、葛藤と向き合わずに目の前のことを一人でやるだけですから、ある意味楽かもしれません。しかし、多くの人はそれで良いとは思いません。仕事がある程度できるようになってくると色々と考える時間ができます。「ずっとこれをやるだけなのかな」と思うようになるわけです。そして、「何のためにこれをやっているのだろう」「本当はどうあるべきなのだろう」と心の中で感じ始めます。この思いを言語化する時間がないまま、日々の仕事が次々と来ます。すると、本当は葛藤しているのですが、「所詮仕事、お金をもらっているからやっているだけ」となっていきます。これは、酸っぱいぶどうに対して、「甘いレモン」です。食べられないほど酸っぱいレモンを甘いと思い込んで食べる、という行為です。無理がありますよね。

目標を示し、働く幸せを与える

働く上で得られる幸せには、働くことそのものに対する幸せと経済的な幸せとがあります。経済的な幸せはもちろん大切です。ただ、順序として、経営者やリーダーの立場からは、働く幸せを与えることを先に考えるべきです。何のためにこれをやるのか、わたし達の目指すことは何なのか、その時、一人ひとりに期待することは何かを伝えていく必要があります。そうでなければ、やってくる仕事に対応するだけになり、そこで生まれる葛藤をスルーするようになっていきます。一人ひとりがあるべき姿を描いて正しく葛藤するためにも、組織として目指すあるべき姿を描き、示していく必要があります。これが「設定型」×「階層的」の状態です。


まずは、変わっていく行動をルーチンにする

ただし、目標が示されても、やりっぱなしにしてはいけません。意識して振返らないと、日常の作業に追われ、本質的な改善がなされません。忙しいからこそ立ち止まる仕組み、ルーチンが必要です。

経営計画の策定をお手伝いしている会社さんでは、計画だけでなく、月次で振返るPDCA会議をしていただきます。この振返りの仕組みがないと、進歩がありません。ここでいう「進歩」とは、計画が進捗することだけではありません。自分たちの目的に向かって、自ら行動を変えていく力が身についたかどうかの「進歩」なのです。

実際、こうした会議を実践すると、以前だったら、スルーされていた問題が、「このままでいいんだっけ」と違和感として発せられるようになってきます。これは、社長やリーダーが「こうあるべきだ」と目標を示せていることが前提です。その上で、振返りの対話の場を持つとできない理由があがってきます。つまり葛藤です。これを受け入れながら「どうやったら解決できるか」と考えていくのです。

改善のルーチンを未来へ進む組織能力にしていく

一方で、今までの枠組みで考えているだけでは、解決できない課題も出てきます。「あるべき姿」は、どちらかというと、「いま」あるべき姿です。社長やリーダーも目指す基準や目標が分かっています。そこにとどまらずに、その先のまだ正解がない課題にチャレンジしていく必要があります。なぜなら、未来のことを考えないとそこそこの良い会社で終わってしまうからです。あるべき姿を描いて解決しても、既存の枠組みの中にいる限りは、結局のところ目の前のことをやっているのに過ぎないのです。さらなる「進歩」が必要です。

もちろん、あるべき姿とそのギャップを埋めようとすることで、成果も出るし、その結果、実力もついてきます。でも、ここで満足してはダメなのです。改善のルーチンによって耕される自ら変わる力を未来に向けて活用していくことが次の「進歩」となります。

これが上の図の「枠組みを超える創発的対話」となります。では、その段階に進むにはどうしたら良いでしょうか。続きは、また次回書いて行きます。

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