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社長が社内から評価を受けることの是非

「社長も部下から評価されることが必要だと思っている」

ある社長からそんな相談を受けました。一般的に、社長になると他人から注意してもらえなくなります。結果として、甘くなってしまうのではないかというのがその方の問題意識です。そこで、社長が社員から評価される仕組みにしたいということでした。

自社の状況を踏まえないとどんな打ち手も機能しない

問題意識としては良いと思います。ただ同社の場合、オーナー企業で、良くも悪くも上意下達の文化が根づいています。社員の行動は自律的とは言い難い部分もあり、そうした組織風土を変えようと取組んできているところです。

そこへ「社員が社長を評価する」という話が出てきたのです。確かに、役員や社長に対する360度評価という事例はあります。率直に社内からのフィードバックを受け、大きな気づきを得る事ができるのは事実です。

ただ、同社において、果たして機能するでしょうか。Howにいきなり飛びつくのは危険です。そもそもの目的に立ち返る必要があります。また、打ち手の本質をよく考えることも大切です。

社長が受ける評価とは

評価は、仕事ぶりに対してなされるものです。お客様の役に立とうと行動し、成果が得られたかを評価します。

仕事ぶりが評価されるのは社長であっても同じです。とはいえ、そもそも社長は、社内からの評価ではなく、社会から評価されます。売上や利益でお客様への貢献度を問われる存在です。

また、成果だけではなく、求められるマインドやスキルも評価の対象となります。この際、どのような評価項目になるかは、会社の理念や長期的な戦略によります。その理念を発信し、戦略を伝えるのが社長の役割です。その社長が社員から評価を受けるとなると、どうでしょうか。

率直に指摘を受ければ、気づきを得られます。それ自体は良いことです。ただ一方で、その役割を言われないとできない社長ということになります。同社で社員に求めているのは「言われないとできない」を脱することです。

評価の目的は、働く幸せを高めること

少なくとも同社においては、社員からの社長評価は時期尚早でしょう。

実は、社員が社長を評価すると聞いた時に感じていたのは、向き合うべきことが見えていないということです。まずは、社長自らがお客様の方を向いて事業を進めているという姿勢を示すことが肝心です。

やり取りを振返ると「社長や役員が”あがり”だと思われても困る」という発言もありました。社会からの評価と向き合って、結果を出し続ける役割が"あがり"なはずがありません。

ここには隠れた前提があります。社内のヒエラルキーを登り、経済的な幸せを得る事が評価の目的になっているのです。本来は、いかにして、働く幸せを高めることができるかが、先に来るべきです。

同社が脱しようとしているのは、上意下達がもたらす負の側面です。つまり、内向きになり、チャレンジしなくなっていることです。これを脱するためには、社員のベクトルをお客様に向かわせることが大切です。

いかがでしょうか。
この話は、同社に限ったことではないように思います。評価の目的や本質はお客様第一であることを忘れないようにしたいところです。

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