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ジャックは私です。#6

 雨宮国立病院にパトカーが二台到着したのは午前八時のことだった。間部と尾身は準備中の病院の扉を叩いた。
受付の亀岡という男性が「今は準備中ですので・・・」といって断ろうとしたが二人は警察手帳を見せて強引に「急を要することです。開けないと公務執行妨害になりますよ。」といった。

亀岡は渋々ながら扉を開けた。

尾身と間部は六人の警官を引き連れて院長室へ直行した。亀岡は尚も静止したが警官がそれを抑えた。

間部は勢いよく院長室の扉を開けると「息子さんはいますか」と単刀直入に訊いた。

雨宮院長が狐につままれたような顔をしていると警官が院長室内にある扉を次々に開けて院長が開口する前に答えを見つけた。

親父と同じように呆気に取られている啓介の眼前に勢いよく逮捕状が突きつけられる。

間部が鋭い目つきで啓介を睨みながら「雨宮啓介。殺人、及び殺人偽装罪で逮捕する。所まで同行願おうか。」という。

啓介は「は?ちょっと待てよ。俺はやってねぇよ。」

「弁明は署で聞こうか。連れて行け!」警官二人は啓介の腕を掴んで外へ連れ出した。

尾身はまだ状況を理解できていない様子の院長に歩み寄って「前回もいったように、あなたもこの事件の重要参考人だ。署までご同行願おうか。」

「待ってくれ・・・今から診察があるんだ・・・後にしてくれないか?」すがるような目で語りかける院長に間部はいう。

「犯罪の容疑をかけられている者を・・・野放しにしろと?今ここで気絶させて・・・・とっ捕まえることもできるというのに・・・・?」

院長は間部の言葉に込められた圧にすっかり萎縮してしまって大人しく同行した。

 「ふぅ・・・収穫なしか・・・・・無駄足だったな。」天野は体のだるさと足の疲れを引きずりながら署まで戻った。

捜査一課の扉を開いて中に入ると同僚の赤節が「やぁ。どうだった。」と軽快な口調で話しかける。

「何も出てこなかったよ。病院の医者には全員アリバイがあるし、おまけに被害者の手術は五人がかりで行われたからカミソリの刃の欠片を刺すなんて出来るわけなかったそうだ。」

「難解だな・・・・」

「本当、その二文字が似合うよ。」

「そういえばさっき別班の奴が来て昼のニュースで報道するっていってたぞ。」

「それで犯人が何らかのアクションを起こしてくれれば良いけどさ・・・」

 

 「お前がやったんだろ?」

「違うよ!!あの日俺は確かに一人だったけどテグスとナイフなんて仕込んでないよ!!・・・カメラの映像は見たのかよ・・・あれを見れば俺がやってねぇってすぐわかるじゃねぇか・・・第一に・・・」

「嘘つけ!!!!監視カメラの映像を消した痕跡だってあるんだ!お前さんのIDでログインされて消されてた!!お前がやったんだろ!?」

啓介は頑なに罪を認めようとしない。これだけの証拠が出揃っているというのに、渋といクソガキめ。手間取らせやがって・・・

間部は机を思い切りグーで叩いた。

「このままだと埒が明かねぇな・・・どうする尾身?いっそぶち込んじまうか?」

「それもありだな。」尾身は感情を込めずにいった。

「・・・・・は?・・・・お前ら正気かよ・・・やめてくれよ・・・・」啓介が涙目で訴える。

その時、扉を勢いよく開いて刑事の中島が入ってきた。

「おい・・・・・ビッグニュースだ・・・・」

「なんだぁ・・・・」血走った目で啓介を睨みつけながら間部が問う。

「今、雨宮国立病院の亀岡って人物から電話があってな。話によると丁度事件が起きる一週間前、院長の息子が警備室に入っていって履歴を消すのを見たそうなんだ・・・」

「なにぃ!!!何故早く言わなかったんだ!」

「どうやらそこのバッカ息子に金を渡されてたらしい・・・ちょこざいなことをしてくれたようだな・・・」

間部と尾身はゆっくりと視線を啓介の方へ移す。啓介は手錠のはまった手をカタカタ震わせた。

「おいおい。まだ終わりじゃないぜ。昼のニュース見たか?」

「ニュースだぁ!?」

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