男の料理
いつの間にか夫が料理愛好家になっていた。
毎月いそいそと本屋に行き、NHK「きょうの料理ビギナーズ」のテキストを買ってくる。
その中から、実際に作るのは、せいぜい数品程度だけれど、気が向けばそれ以外にもクラシルなどでレシピを検索して作っている。
「今日はわたしが作ってあげましょう」
などと毎度宣言されると、
ちょっとムカッとする。
「作ってあげましょう」?
上から目線が気に入らない。
その言い方はちょっと…と苦言を呈した。
すると、
「作らせていただきます」
と訂正。
それはそれで嫌味っぽい。
もっと淡々と、さり気なく作ってほしい。
わたしが出掛けて、帰りが遅くなったりしても、ソファーで寝そべって料理が出てくるのを待っている。
こんなときこそ、さり気なく作ってほしい。
男の気ままな料理は突然過ぎる。
「え〜?今日は〇〇を作ろうと思ってたんだけど…」というのは心の声。
口には出さない。
せっかくの夫のヤル気スイッチをOFFにしてはいけない。
最近では、2品以上を同時に作ることもできるようになった。
どんどん腕を上げているが、思うようにいかないと、キッチンから大袈裟な舌打ちや、鍋やヘラなどをガチャン投げつけるように置く音が聞こえてくる。
イライラがモロに伝わってくる。
そんなときは聞こえないふりをする。
決して手を貸したりしてはいけない。
余計に機嫌が悪くなる。
出来上がったものは、美味しくいただく。
これは作った人に対する礼儀だ。
もし、何か指摘したいことがあれば、9割褒めたあとに、残りの1割でサラッといってみる。
そして、ついに…
今季は梅仕事にまで参入してきた。
久しぶりに広口瓶を出してきて消毒した。
青梅と氷砂糖を交互に入れて、リンゴ酢を注ぐ。
毎日、瓶の中身を観察している。
漬かるのが待ち遠しい気持ちはわたしも同じ。