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心の声

昔読んだ筒井康隆の『家族八景』の主人公七瀬には、他人の心が読めるという特殊能力があった。

恐ろしや。

そんな能力があったら、
たぶん死にたくなるだろう。

そして相手にこちらの心の声が聞こえたら?
極めて不都合だ。

たとえば、
ある日曜日のこと。 

夫が最近ハマっているエスビー食品のレシピの中から台湾焼きそばを作るという。(2度目)

夫:ニラある?

私:少し。

夫:モヤシは?

私:昨日全部使った。

夫:前買ったひき肉は?

私:もうとっくにないよ。
(1週間以上も前のひき肉があるわけないでしょ!)

夫:じゃ買い物行ってくる。

私:(キクラゲ戻したのに。お昼は五目焼きそばにしようと思ったのに。冷蔵庫にある材料で)

 ハイ、いってらっしゃい!

(結局後でまた買い物に行くんですけ 
 どね)

〜夫帰宅〜

私:あれ?合い挽きにしたの?
(豚ひき肉のはず)

夫:(無言)

〜食べながら〜

私:今日はニラが少なめなのね。

夫:家にあるのから使ってみた。

私:(なんのために買いに行ったの?ひき肉はやけに多いし。多ければいいってものでも…)

夫:うん!
  まあまあだな。

私:そうね。
(塩気が足りないなぁ。いつもあんなにきっちり計っているのに)

私:ちょっとこの前より薄味だったね。鶏ガラスープはメーカーによって塩分が違うしね。そのせいかな。

少し不満げに言ってみたものの。。。

私も長年に渡って料理を担当してきたけれど、夫から「マズイ」と言われた記憶はほぼない。
明らかに失敗?という日も、
ままあった。

あちらも
言いたいことは山ほどあっただろうに。


私:ウン、美味しかった。
  ごちそうさま!

もし人の心が読めたなら
この世界は殺伐としたものになるでしょう。

※エスビー食品のレシピ
 台湾焼きそばの写真を使用していま
 す。