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同僚に差をつけたいなら上司を喜ばせろ

「オレは部長に嫌われているから出世の見込みは無いな」「それはないだろ?」「お前は気に入られていてうらやましいよ」。日本の組織では、上司に嫌われたら出世の道は閉ざされてしまう。このような時に、復活するには何をすべきなのか。まずは情報である。相手の情報を入手して作戦を立てなければいけない。

■上司の情報を収集して仕事に活かす
今日から、作戦Xを敢行する。上司の真柴部長の情報を収集するためだ。最近はまっている飲み物や食べ物。週2回、東中野のシルバージムに通って汗を流していることも突き止めた。汗を流したあとは、「焼き鳥家族」で軟骨とハラミを2本、黒ホッパーを1本空けるのがお約束だ。夫婦仲はいいようだが、子宝には恵まれていない。

断っておくが、これは社内情報として収集したものだから違法なものではない。真柴部長の意思決定は慎重派のようだ。私は、どんな細かいことでも、相談するよう心がけた。妙案が浮かんだらすぐ実行に移すスピード感が私の売りであったが、それは切り捨てることにした。まず実行に移す前にお伺いを立てるようにしたのである。

細かな配慮の末、私への評価も徐々に高まってきた。白々しいお世辞までは言わないが、真柴部長が発言したあとは、誰よりも早く高らかに拍手を鳴らした。私の拍手に続いて、慌てて周囲の人間がシンバルをたたきつける猿のおもちゃのように激しい動きで手をたたき始める。真柴部長もにやりと口角を上げ満足そうな表情を浮かべた。

■上司の胸のうちを理解する
私は上司には恵まれていた。それは上司の期待に応えて、すべてを投げ出す覚悟があるからではない。上司にとっても、忠実で仕事のできる人は非常に都合がよい存在である。任務が成功しても自分の手柄とは言わないから、上司は自らの手柄として社内から評価を受ける。失敗すれば、私がすべて被ってくれる。お互いが価値を理解しているなら関係は強固になる。

サラリーマンの多くは、ゴマすりやおべっかは、上司と2人きりのときにするものと勘違いしている。実は最も効果を発揮するのは、衆目の目がある場所や、上司が大切な人と一緒にいるときこそが狙い目だ。さりげなく、上司の格が上がるような演出であればいうことはない。ひたむきな姿勢は評価されて上に引き上げられる要因になる。

知人の元議員秘書S君は会った人に、必ず自筆の手紙を送る。便箋は鳩居堂の高級便箋。さらに、名刺を交換した相手の名前と電話番号をすぐに暗記する。顔の特徴まで覚えているから、パーティーや会合で名前を呼んで話しかけることもできた。これには相手の方が驚嘆していた。痒いところに手が届いたお陰で評価は高かったようである。

■痒いところに手が届くことが大切
元議員秘書M君は、都内の道をほぼ網羅していた。公務がある場合、渋滞は大変危険である。ところがM君は裏口まで網羅していたので時間に遅れることはなかった。さらに、M君は余念無くチェックする性質があった。もし、初めての場所であれば前日に下見をして、すべての場所を確認していた。

議員から「○○はどこかな?」と聞かれて、「フロントで聞いてきます」と慌ててはいけない。「飯でも食うか?」と聞かれたら「このホテルには、和食は寿司と天麩羅、中華、イタリアン、フレンチ、あとはラウンジのカフェがあります」と、すぐに対応できなければいけない。やはり、上司に好かれることが、出世の近道ということになるのだろう。

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尾藤克之(BITO Katsuyuki)
コラムニスト、明治大学客員研究員
頭がいい人の読書術」(すばる舎)を上梓しました。

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