見出し画像

映画で深める学び:『エターナル・サンシャイン』で読み解く『経験学習』

人間らしい学びのプロセスを考える

私たちの成長や学びは、一筋縄ではいかないものです。特に、人生の痛みや失敗をどう乗り越えるかという課題は、誰もが一度は経験するものです。

たとえば、仕事で大きなミスをしてしまったとき。人間関係がこじれてしまったとき。または、自分の選択に後悔しているときです。こうした辛い経験に直面したとき、「この痛みを忘れられたら、どんなに楽だろう」と思うことはありませんか?

そんなとき、私が思い出すのが映画『エターナル・サンシャイン』です。
主人公のジョエルを演じたのは、ジム・キャリー。恋人のクレメンタイン役はケイト・ウィンスレット。監督はミシェル・ゴンドリー、脚本はチャーリー・カウフマン、主題歌はベックという、2004年製作の名作ラブストーリーです。
Amazon primeでレンタルできます。

この映画では、失恋や苦しみを忘れるために、主人公たちが記憶を消すことを選びます。記憶を消せば、確かに一時的に楽になるかもしれません。しかし、本当に大切なものまで一緒に失ってしまうのではないか。そんなテーマが描かれています。

この映画を観ると、「もし辛い経験を消し去ったら、それに伴う学びや成長も失ってしまうのではないか?」と考えさせられます。

昔この映画を観たときには感じなかったのですが、最近改めて観たあとに、「記憶を消すことで痛みは消えるかもしれないが、同時に成長の機会も失ってしまうのではないか」という疑問が浮かびました。これは、私が「経験学習モデル(Experiential Learning Model)」という理論を知ったからこそ、結びつけて考えられた疑問だと思います。

「経験学習モデル」は、「人は経験を通じて学ぶ」ことを4つのステップで説明するものです。映画の登場人物たちの心の変化が、この理論のプロセスと重なっていることに気づきました。そこで、映画を事例として理論と結びつけて考えることで、私たち自身の成長や学びをもっと深く理解できるのではないかと感じたのです。

経験学習 4つのステップ

1. 記憶を消しても経験は残る?

映画の中で、ジョエルとクレメンタインという二人の主人公は、別れた後の辛い思い出を忘れるために記憶を消すことを選びます。

しかし、「経験学習モデル」では、「具体的な経験」こそが学びの出発点です。つまり、辛い経験も成長のためには必要なものだということです。

たとえば、仕事で大きなプロジェクトが失敗に終わったとき。その瞬間には大きな挫折感を覚えるかもしれません。しかし、その経験から「次はどうすればもっと良い結果が得られるか」「どのような準備や計画が必要だったか」といった学びが生まれます。

記憶を消したいという気持ちは理解できますが、その経験を消してしまうと、成長のための大事な要素も失ってしまうのです。

2. 過去を振り返ることの大切さ

ジョエルは、記憶を消していく過程の中で、「やっぱり思い出を消したくない」と感じ始めます。それは、良い思い出も悪い思い出も、どちらも彼の人生にとって大切なものだからです。

「振り返り(内省)」のプロセスは、「過去から学ぶ」ために非常に重要です。

「経験学習モデル」では、過去を振り返ることで「次にどうすればよいか」を考える機会が得られるとしています。たとえば、上司に自分の意見がうまく伝わらなかったとき。「なぜ伝わらなかったのか」「どうすればもっと効果的に伝えられたのか」を考えることで、次のミーティングやプロジェクトでのコミュニケーションを改善することができます。

ジョエルが自分の記憶を振り返り、その重要性に気づく姿は、私たちが学びの過程で辿る道に重なります。

3. 経験を通じて自分を理解する

ジョエルが過去の思い出をもう一度見つめ直す中で、彼は失敗も成功も含めて、それらが自分の一部を形作っていることに気づきます。これが、「経験学習モデル」の「抽象化」の段階です。

つまり、「これはこういうことだったのだ」とか「ここから何を学べるのか」といった形で、自分の経験を深く理解することです。

たとえば、仕事でのミスをただ「失敗した」と捉えるのではなく、「なぜそのミスが起こったのか」「どうすれば次は防げるのか」と自問することで、自分の働き方や意思決定の仕方を見直すことができます。

ジョエルが自分の経験を再評価する姿は、私たちも自分の過去を振り返り、何を学んだのかを考えるきっかけになります。

4. 新しいチャレンジをする勇気

映画の結末では、ジョエルとクレメンタインは、お互いの過去の失敗を理解しながらも「もう一度やり直してみよう」と決意します。

これは、「学んだことをもとに、新しい挑戦をする」という「経験学習モデル」の「実験」の段階です。過去の経験を活かして、次にどう行動するかを試してみることを指します。

たとえば、一度提案したアイデアが通らなかった場合でも、フィードバックをもとに改善し再提案する。また、チーム内の意見が対立した経験を踏まえ、新しい方法でファシリテーションを試してみる、といったことです。

過去の失敗を恐れずに、新しい方法で再挑戦することで、成長のチャンスを見つけ出すことができます。

5. 忘れるよりも、学ぶことの価値

映画では、「忘れたい」という気持ちと「振り返りたい」という気持ちがぶつかり合います。確かに、忘れることで一時的には気持ちが楽になるかもしれません。しかし、それでは貴重な学びも失われてしまいます。

『エターナル・サンシャイン』が教えてくれるのは、辛い経験もそれをどう受け入れ、どう活かしていくかが大切だということです。

6. 映画が教えてくれる学び方

映画と学びの理論を結びつけて考えることで、私たちは自分の経験からより多くのことを学ぶことができます。『エターナル・サンシャイン』は、記憶や経験、そして痛みをどう乗り越えるかを描いており、それが人としての成長につながることを教えてくれます。

失敗や辛い経験を避けるのではなく、それらを受け入れて次のステップに進むことで、私たちはより強く、前向きになれるのです。

7. 自分の経験を振り返るためのワーク

最後に、日々の仕事や人生での成長に役立つ簡単なワークをご紹介します。自分の経験を振り返り、次にどう活かすか考えるきっかけにしてみてください。

  • ステップ1: 自分の経験を書き出す
    最近の仕事での出来事や、印象に残った成功や失敗を書き出してみましょう。どんな小さなことでも大丈夫です。

  • ステップ2: 振り返りの質問を考える
    その経験から何を学んだか、何がうまくいかなかったのか、どう改善できるかを考えてみます。たとえば、「なぜプロジェクトの進行が遅れたのか」「次はどのように優先順位をつけるべきか」といった具体的な質問を自分に投げかけてください。

  • ステップ3: 次の行動を決める
    学んだことを踏まえて、次にどう行動するかを決めましょう。次回のプロジェクトでの進め方を変えてみる、新しいスキルを学ぶなど、具体的なアクションプランを立ててみると良いでしょう。

結論

『エターナル・サンシャイン』という映画は、私たちが日々の仕事や生活の中で直面する学びのプロセスについて、深く考える機会を与えてくれます。経験学習モデルを使って振り返ることで、どんなに困難な経験でも、それを成長の糧に変えることができると気づかされます。

この映画が伝えるように、過去の経験を受け入れ、それを自分の強みとすることで、私たちはより豊かな人生を歩むことができるのではないでしょうか。今のあなたの経験も、きっと未来の自分を作る大切な一歩です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?