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問題解決あるあるコラム#3:「出来てますは出来てない」

こんにちは。いちおか@問題解決サポーターKAIOS代表です。

問題解決あるあるコラム第3回です。今回のテーマは、「出来てますは出来てない」です。なんのこっちゃ?という感じでしょうか(笑)。中には「う…」と思い当たる方もいらっしゃるかもしれません。心臓がキュッとしましたか?冷や汗も出てきますよね。では、そのいや~な感覚の正体を見ていきましょう。


「出来てます」はなぜ生まれる?

みなさんが日々汗を流している現場では常に問題が山積みですよね?でも、上長への報告では何故か全て上手く行っている事になってます。側から見ると、「え?それ信じるんですか?」という報告も「部下を信用する。」と言って受け入れます。現場に行けば直ぐに問題に気づくのに、現場にも出向きません。「現地現物じゃなかったの?」と言いたいところですが、ここにも我々人間の心理が働いています。現場は「見られたくない」「怒られたくない」上司は「問題を知りたくない」「後始末をしたくない」「自分も上に悪い報告したくない」というお互いの利害が一致し、「部下の報告黙認」が変な所でwin-winとなり、現状が肯定され放置されます。これは部下を信用しているからではなく、上司の「現実を知りたくない」「自分に問題が降りかかってほしくない」という切実なニーズがそうさせているのです。

こんな状況がよいはずがありません。でもこの状況を、多くの人々の「暗黙のニーズ」が仕組みにまで落としていって見事に回ってしまっているのです。その仕組みが何かというと、そう「KPI」です。お馴染み"Key Performance Indicator”ですね。どんな組織も、ISO 9001やIATF 16949の認証を取得し維持しようと思えば、このKPIを設定し監視し、結果を報告させているはずです。中には無視している組織もありますが、殆どの組織でみんな頭を悩ませてKPIを決め、数値を集め、マネジメントに結果を報告しています。そして、マネジメントチームが真面目にレビューしようとすればするほど、不幸にも負のスパイラルが回っていってしまいます。そうなってしまう理由がこのKPIにあります。

「出来てます」を生み出す仕組み

ここでもう一度KPIがなんだったか見直してみましょう。“Key Performance Indicator”です。そう「パフォーマンス」なのです。パフォーマンスなので行動指標です。例えば、プロ野球選手なら防御率や打率などですね。その選手たちの努力した結果がよく分かります。ところが、多くの組織で語られているKPIは実は「KGI」"Key Goal Indicator”なのです。「ゴール」なので必達指標です。良くあるのは納期遵守率とか新規ビジネス受注件数とかですね。必達なのでやって当たり前の「当たり前指標」と言われているやつです。このやった件数=出来高をKPIとして設定してしまっているのです。こうすると、報告は「納期遵守率100%です」「新規受注3件です」といった出来てます報告となります。納期を守るためにどれだけ納期調整したのか、受注するために裏側でどれだけ駆け引きしたのか、が全く報告されません。が、報告側も決められたことを報告すればいいので、わざわざ怒られたり問い詰められたりする様な報告はしません。そうすると、いつしか「出来てます」という報告をすることが、自分たちの身の安全を図る最善策として身につき、どんな時も「出来てます」と報告する様になります。さらに「出来てれば文句ないでしょ?」という極端な思考に陥ります。仕事は「結果が全て!」とやって当たり前のことを声高らかに喧伝します。

「ここが出来ていません、なのでここを改善していく事が次の課題です。」といってくれた方が組織としてはありがたいのに、現場は前回のコラムで紹介した「説明責任」が果たせないので、絶対に「ここが出来ていません。」などと口を滑らせません。仮に、そう言ってくれたとしても現場には問題解決能力がないので、上司もお手上げです。なので、どちらも「出来てます」報告を選択します。とは言っても本当は現場では問題が山積みなので、簡単に「出来てます」とは言えません。そこで次に登場するのは「スコープ」です。範囲を限定し成果を過大評価します。そうすれば、限定された範囲の外側の問題は報告する必要がないので、胸を張って「出来てます」と言えます。

リスク回避が「出来てます」を生み出している?

この様に、評価する視点を絶妙にずらし、パフォーマンスを必達目標にすり替え、「出来ています」という報告ができる環境を整え、社内評価プロセスに乗せてしまえば、上からとやかく言われることはありません。これでみんなwin-win、実に良く出来た仕組みです。でもそれって、本当は危ういですよね。リスクを組織ぐるみで見えなくしてしまっているのです。その結果問題は頻発し、その後始末でみんな大忙し、でも報告書上は"All Green”。いったいなんなのでしょう?現実と仕組みの乖離、仕組みの形骸化、つらい現実です。仕組みに縛られる必要はありませんが、結局の所、仕組みを使うのは我々人間なのです。仕組みは上手に使って、楽するところは楽したいですね。

まとめ

そんな訳で、今日のテーマ、「出来ている?」と聞いて「出来てます!」と答えが返って来た時は大抵出来ていません。本当に出来ている組織は「出来ている?」と聞かれたら「ここが出来ていません。」と課題を自分たちで明確に出来る組織です。みなさんの組織はどっちが「出来てます」か?

今回も最後までお読み頂きありがとうございました。
では、また次回をお楽しみに!

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