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問題解決あるあるコラム#20:ものづくりはひとづくりなのか?

こんにちは。いちおか@問題解決サポーターKAIOS代表です。

問題解決あるあるコラム第20回のテーマは、「ものづくりはひとづくりなのか?」です。何を寝ぼけたことを! ものづくりといえばひとづくりなのは当たり前だろう! とお叱りを受けそうですが、今回は改めて「ものづくり」と「ひとづくり」の関係を考えてみたいと思います。


ものづくりってなんだ?

改めて、「ものづくり」の定義ってなんだ? と考えてみると、まずこの「ひらがな」で表現しているところからこだわりを感じます。「物作り」とも「物造り」とも「物創り」とも書けます。そして「物」を「者」にすれば「人」も意味します。ひらがなにすることで、これら全ての意味を表現する、深い~ことばになります。そして、この「ものづくり」ということばの中には、「熟練した職人による手作業」という意味が前面に押し出されているように感じます。では、「熟練した職人」とはどんなことができる人なのでしょう? 「素人にはとても真似できない特殊な技術・技法を、長年の鍛錬によって習得し、いとも簡単にこなしてしまう人」といったところでしょうか? と、するとそれはつまり「高い再現性を生み出せる人」と言い換えることができるかもしれません。

ものづくりは再現性

そのように考えると、「ものづくり」とは「高い再現性の実現」を指している、と考えることができます。なるほど、世の中に存在するマネジメントシステムは、組織としての「再現性の実現」を意図したしくみであり、それを、「誰でも」「いつでも」発現できるようにしようという取り組みです。最近何かと注目を浴びるソフトウェアの世界でも、その開発のガイドラインであるA-SPICEで、「意図した成果を生み出す」「特定の人員での再現性を実現する」「組織全体での再現性を実現する」「プロセス運用のデータの収集と解析を行う」「得られた解析結果からプロセスを改善する」と目標到達レベルを上げていくような構成になっています。そして、最低限の要求がレベル3の「組織全体での再現性を実現する」です。つまり、「再現性」こそが「ものづくり」が目指しているゴールなのかもしれません。

しくみだけではたどり着けない領域

このように「再現性」を生み出すしくみを作り上げることが、マネジメントシステムをはじめとした規格物が目指しているゴールと言える訳ですが、この「しくみ」だけでは到底到達できない領域が、「熟練・職人」の領域なのではないでしょうか? どれだけ機械が進化しても、AIが発達しても、人間の持つ「感覚」から生み出される数々の「技」は到底再現できるものではないでしょう。これは、長年「もの」をつくり続けるその過程で身に付く「知識・技術」から生み出されたものであり、言語化できない領域のものなのだと思います。

だから「ものづくりはひとづくり」

そう考えると、確かに「ものづくり」の延長線上に「ひとづくり」があるのだと理解できます。どんな組織も、「人」に帰属した「技」を、次の「人」もしくは「人々」に伝え、それを維持・継承していくことで提供する製品やサービスの「品質」を担保しようとしているのではないでしょうか? 

「ひとづくり」のスパイラルアップ

そして、もうひとつ僕が考える「ものづくりはひとづくり」の重要な点は「徒弟制度」にあると思います。詳しくはまた別の機会にお話ししたいと思いますが、人は自分のやっていることを、誰か「他の人」に教えようとする時に学びが深まります。これは、自分ひとりでやり続けているだけでは絶対に得られないことです。自分の身体で覚えていることを他人に教えるためには、必ず「言語化」が必要です。この「言語化」の過程で、自分でも気づいていなかった新たな事実や真実に気がつくのです。こうして、自分で高めてきた「技」は、他の誰かに教えようとすることでさらに「進化・深化」します。そうしてより一層「熟練度」が増していくのです。やはり、「ものづくり」は「ひとづくり」なんですね。

まとめ

「ものづくり」と「しくみづくり」は、共に「再現性」を生み出すことを目指しています。「しくみ」は「人」を選ばずに目的を達成する敷居の低さ、「再現性の発現のしやすさ」を目指していますが、「ものづくり」は「人」を選び、培われた「技」を身につけた「人」による高い再現性を目指しています。しかも、それだけでは終わらず、そうして得られた再現性からさらに「高み」「深み」を追求する、という「しくみ」を超えた「ひとづくり」を目指しているのではないでしょうか? 「しくみづくり」の裾野の広さに「ものづくり」の到達する高さがつながったら、最強の組織ができ上がりそうです。そんな未来を目指したいですね。

今回も最後までお読み頂きありがとうございました。
次回のテーマは「ものづくりよりことづくり」です。
次回もお楽しみに!

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