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中森明菜「十戒(1984)」

「十戒(1984)」
作詞: 売野雅勇 作曲: 高中正義 編曲: 高中正義・萩田光雄

1984年7月25日発売のシングル曲。

同時期のヒット曲は、
小泉今日子「迷宮のアンドローラ」、「ヤマトナデシコ七変化」、
MIE「NEVER」、サザンオールスターズ「ミス・ブランニュー・デイ」、
チェッカーズ「星屑のステージ」、五木ひろし「長良川艶歌」、
一世風靡セピア「前略、道の上より」、
田原俊彦「顔に書いた恋愛小説(ロマンス)」、
松田聖子「ピンクのモーツァルト」、
小林麻美with C-POINT「雨音はショパンの調べ」、
高橋真梨子「桃色吐息」、舘ひろし「泣かないで」、
吉川晃司「LA VIE EN ROSE」等々。
アイドル、ポップス、歌謡曲、演歌それぞれのジャンルで
ヒット曲が誕生した、非常にバランスのいい時代。
それだけ、音楽というものが、
老若男女各世代それぞれの好みで浸透していた時代だと言える。
上記のヒット曲数が多いのは、
「十戒(1984)」が、3ヶ月以上に渡るロングヒットとなったからである。

この作品、
フュージョンミュージック界のヒットメーカーである高中正義氏の作品。
作曲者本人が編曲も担当しているだけあり、
音自体は完全にフュージョン。
明菜の歌唱なしでも、十分曲として成り立つ完成度の高い曲だ。
ギター、ドラム、シンセサイザーが全開バリバリ。
そこにストリングスがピンポイントで、
曲のスリリングさをより一層引き立たせている。

そんな完全に出来上がっている曲と、
デビューしてまだ3年目である明菜その人は、堂々と張り合っている。

この年、1984年には、「北ウイング」、「サザン・ウインド」といった
旅情物のシングルが続き、
この2曲で、一つのドラマが目の前で拡がるような表現力・説得力、
メリハリのある抑揚、そして発声の安定感に磨きをかけた彼女が、
満を持してリリースした、お得意の「ツッパリ路線」の楽曲。
そんな曲に、誰をも寄せ付けないようなオーラ・迫力がないはずがない。
既にクオリティの高い高中氏の楽曲を、
明菜というまだ若く粗削りながらも一流の楽器が、
更に二段も三段も上のクオリティに仕上げてしまった、といった、
完成度が高すぎる名曲。

ちなみに、売野氏の詩をよく読むと、
タイトル通り、この時代の男に対する10個の「戒め」が組み込まれている。
この頃から女子は強く、
男子はだんだんと尻に敷かれる存在になってくる…
…と言えばそれまでだが、
実のところ、男は昔からそんなもので、
女性が三歩下がって立ててくれているからこそ、
メンツが保たれているだけなのである。
そんな男女の本質を、明菜がニコリともせず、
「坊やイライラするわ」と一喝するのだから、
この曲のロングヒット、また女性のファンも急増していったのも、
納得である。

この曲は、カラオケなどで歌うと、とにかくスッキリする。
サビ最後の「冗談じゃない」の「い」、「イライラするわ」の「わ」を、
「いーーっ」、「わーーっ」とロングトーンの後、
吐き捨てるようにいきってみると、とにかく気分いい。
その他の部分も、滑舌よくはっきりと単語を発音しながら歌うと、
より気持ちいい。
明菜の振付にもあるように、イヤなやつに対してやっちまうように、
思いっきり肘打ちしながら歌えば、さらにスッキリ。
ま、つまりこの曲は、豪華かつ最上級のストレス解消ソング、というわけだ。

(※この文章は、作者本人が運営していたSSブログ(So-netブログ)から転記し加筆修正したものです。)


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