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中森明菜「SOLITUDE」

「SOLITUDE」
作詞: 湯川れい子 作曲: タケカワユキヒデ 編曲:中村哲

1985年10月9日発売のシングル曲。

同時期のヒット曲は、
安全地帯「碧い瞳のエリス」、小林明子「恋におちて-Fall in love-」、
吉川晃司「RAIN-DANCEがきこえる」、
菊池桃子「もう逢えないかもしれない」、チェッカーズ「神様ヘルプ!」、
うしろゆびさされ組「うしろゆびさされ組」、とんねるず「雨の西麻布」、
杉山清貴&オメガトライブ「ガラスのPARM TREE」等々。
秋から冬にかけたこの季節、大人の曲がヒットチャートを賑わせた。

そして中森明菜はこの季節に、このミディアム・チューンをリリースした。
彼女はこの曲から、バックバンド「ファンタスティックス」を従え、
一気に「実力派アイドル」から「本格シンガー」へと変貌した。

その急速なスピードに、
アイドル時代の多くのファンが取り残されてしまった。
オリコン1位は確保したものの、セールスは伸び悩んだ。
チェッカーズ、安全地帯といった強敵がいたとはいえ、
1位の常連だったザ・ベストテンでは、1週しか9,000点越えを果たせず、
8週ランクイン、最高2位3週に留まってしまう。

確かに、当時まだ20歳の彼女には、この曲は早過ぎたのかも知れない。
イブニングドレスを着て都会の女性を気怠げに歌うには、
若過ぎたのかも知れない。

実際、別れを選んだ女性の気怠さを表現したかったはずが、
当時の彼女の、衣擦れがありつつも透き通った歌声のおかげで、
女性の孤独よりも、見下ろすビルからキラキラと輝く
都会の夜景のほうにフォーカスが当たってしまったようにも思える。

しかし、中森明菜その人は、他のシングル候補を蹴ってこの曲を選んだ。
「明菜にこの曲を」と示した
湯川れい子氏、タケカワユキヒデ氏の思いに応えた。
明菜プロジェクトは、ここで転換を敢えて選んだのだ。挑戦したのだ。
「今しか歌えない曲」ではなく、
「何年先も歌える曲」を生み出そうとしたのだ。

実際、1990年代以降のホールライブでも、
この曲はセットリストに結構載っており、
セールスが当時にしては思わしくなかったにもかかわらず、
ユニバーサル移籍後のバラードベストでも、セルフカバーを披露している。

30代に、40代に、そして50代になっても、「SOLITUDE」は歌える。
そして歳を経るごとにその歌声は、
このミディアム・バラードに鮮やかに艶を与えて輝かせる。

今となれば、結果的にこの曲は「成功」と言えるだろう。
当時の勢いがなければ、
シングルとして日の目を見ることはなかっただろうし、
これまでセールスに貢献していた若いファンは離れたかも知れないが、
これからセールスに貢献するであろう、
上の年齢層のファンを獲得した可能性がある。

そしてこの挑戦が、
次の挑戦「DESIRE-情熱-」の大成功に繋がったのである。

サウンドは兎にも角にもクールでカッコいい。
本格派バンドにサポートされたことで、
「冷めちゃいないわ」と言いながら、冷めた音をサラッと聴かせている。
キーボードの電子的なメロディーが、
より一層都会の雰囲気を引き立てている。

音域が割と狭く、ロングトーンも少なくて、
かつ大声を張り上げるタイプの曲でもないので、
カラオケでも歌いやすい曲だ。
当時のファンが「少女A」「DESIRE-情熱-」などを歌うと
懐メロ感満載だが、
この曲をサラッと聴かせたなら、
「大人のいい女」度が上がることこの上ないはずである。

(※この文章は、作者本人が運営していたSSブログ(So-netブログ)から転記し加筆修正したものです。)


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