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上京2日目でホームレスになった話

最近ふと思い出したのだけど、昔ホームレスになったことがあった。

このnoteはそんな話です。


新型ウイルスだなんだと世間は騒いでいるけど、

気候も少し暖かくなり、桜が咲きはじめているのを見ると少し心がほっこりする今日このごろ。

4月から新生活を始める為に準備をしている人も多いのでないだろうか。そんな方が、つつがなく新生活をおくれる事を祈っているので、少しでも僕の昔話が教訓になれば嬉しい。

先日、今の家の2回目の契約更新をした。

うちの物件は2年契約ごとの更新なので、約4年住んでいることになる。

今の家は上京してからずっと住んでいるので、東京に来てもう4年もたったのかと少し感慨深くなった。(僕は20代の前半は地方で働いており、20代の半ばで転職をきっかけに初めて上京した。)

そして、先日ヨッピーさんのnoteを見た。

めちゃくちゃ面白いのでぜひ読んでほしいのだが、要するに「ちょっと対応がおかしい不動産仲介業者から物件を借りてしまい、不当なお金を請求されているのでは?だったら全面戦争じゃ!」という内容だ。

個人的にはヨッピーさんを応援しているので、ぜひ頑張っていただきたい。

そして、僕の胸にはもう1つの事柄が思い出された。

そう、僕も昔かなりタチの悪い不動産仲介業者に当たったことがあったのだ。しかも、僕の場合 業者だけではなく物件もハズレを引いた。

はじめての上京

2016年の4月、僕は転職のため初めて上京した。

転職の話は本筋とあまり関係がないので割愛するけど、あまり意味はなく、東京に住んでみたかった、みたいなことが転職のメイン理由だ。(軽い)

僕には3歳年下の妹がおり、妹は大学の時から東京にいて、そのまま働いていた。上京当初、僕は妹とルームシェアして住むことになっていた。

なんでそうなったかというと、妹は学生時代から僕の母方の伯母の家で居候させてもらっており、就職してある程度時間もたったので、一人暮らしをしたがっていた。

しかし、妹も実家を出てからそのまま居候したので一人暮らしの経験がなく、東京で一人暮らしをするのもハードルが高く少し不安ということもあり、たまたま僕が上京したので、二人で住めば家賃も安く済むし親も安心なので、とりあえずは一緒に済むことにした。(このエピソードを話すと色んな人に驚かれるのだが、一緒に住めるくらいには兄妹仲は良かったのだ)

とはいえ、1ルームに同居するわけにもいかないので、必然的にお互い1部屋は確保できるそれなりの広い部屋が必要となる。

予算や広さ、アクセスの良さなどを加味して、僕たちは何とか主要の駅からも電車でアクセスがほどほどなとある沿線の1つの駅で2LDKの部屋を借りた。

100%気に入ったわけではなかったけど、妥協も必要だし、駅の周りもそこそこ賑わっているので悪くはないかと当時は思っていた。

それが全ての間違いだとも知らず


上京前、諸々の準備をすすめるために僕は一時的に実家に戻っていた。

すでに部屋は契約しており、あとは僕の荷物を入れたり、購入した家具家電を運び込むだけ、という算段だ。

そして、僕の上京前日、妹から電話がかかってきた。

何だろうと電話にでると開口一番

家に警察が来た」と言われた。

警察」というワードに緊張感を高めながら、詳細をきいた。

転職先の会社に数日後に入社予定の僕と違って、会社員としてずっと働いていた妹は、僕が実家に帰っている間も契約した部屋に時折行っては準備を進めてくれていた。

そして、日用品などを買って、仕事終わりに部屋に寄った際に警察が訪ねてきたというのだ。

警察曰く、僕たちが入居予定のアパートの住民から騒音について通報があり、念の為全戸を訪ねているとのことだった。

最初は何事かと思ったが、直接的に自分たちに関係はなさそうだったので胸を撫で下ろし、「気をつけないといけないね」と電話を切った。

入居も完了しておらず、生活をしていない自分たちが騒音の加害者にあることはありえない。

しかし、騒音という事態を引き起こす可能性がある人、そして通報をする人が隣人にいる可能性が高いということは気をつけないといけないなーなどと呑気に思っていた。

電話のあった翌日、僕は実家を出発し、その日の夕方には東京についた。そして、仕事終わりの妹と合流し、その日も家の様子を見に行った。

20時くらいに家につき、軽く掃除をしたり、寸法を図るなどの作業をしていたら、突然「ピンポーン」とインターホンが鳴った。

僕らの家はオートロックはなかったので、インターホンを鳴らした相手は部屋の前にいるということになる。

何故まだ住み始めてもいない部屋でインターホンが鳴るのか?

しかも、そこそこ遅い時間に、だ。

違和感を覚え、妹には奥の部屋にいなさいと伝え、僕が対応することとし、ゆっくりとドアを開けた。

そこには、

薄い眉、元はかなり明るかったであろうくすんだ茶髪、鋭い目つき、よれよれのグレーのスウェット、派手なサンダルの30代前半くらいの女性がいた。

一言で言えばヤンキーだ。平成の世に、漫画に出てくるようなヤンキー女がいた。

頭の中には疑問符しか浮かばず、若干ビビりながら「何か御用でしょうか....?」と訪ねた。

するとヤンキー女から「お前ら、うるさいんじゃ!」と言われた。

意味がまったく分からなかったので、詳細を更に尋ねると。

・自分は僕らの直下の部屋に夫婦で住んでいる。

・最近子供が生まれたばかり。

・僕たちが越してきてからうるさくて叶わない。

・ダンスでもしているのかという騒音がする。

・子供も寝られないし、自分たちも我慢がならない。

・騒音のことで警察にも通報した。

などという内容だった。

警察に通報したのお前かい!と思いつつ、彼女の言葉を理解しようとしたが、何を言っているのか分からなかった。

僕たちは騒音など起こしていない。

加害者は無自覚だ、などという場合もあるかもしれないが、まだ本格的な入居もしておらず、夜に1時間程度立ち寄るだけで騒音を起こせるわけもない。

掃除だなんだとの作業はしていたが、夜ということもあり最大限配慮し、静かにやっていた。

そもそもダンスだなんだというが、僕はダンスが死ぬほど苦手だ。

ボックスステップも踏めないし、絶望的に身体が言うことをきいてくれない。

アメトークのダンス踊れない芸人を笑いつつ、笑えないなぁと毎回思っている。

妹は僕よりダンスができるかもしれないが、夜に自宅でダンスを踊るようなアメリカンな生活はしていない。

歩くときも、日常生活で許容されるであろう歩調で歩いていたつもりだ。

なんてことを思い、弁明しようとしたその瞬間、目の端に人影を捉えた。

視界の端からゆっくりと歩いてくる人がいた。

その風貌は、短く刈り上げた髪、上下ジャージ、下はお決まりのサンダル。

ヤンキーだ、ヤンキーがそこにいた。

「今日から俺は!!」みたいな世界観のヤンキー男がそこにいた。

ヤンキー女の旦那らしい。

夫婦揃ってヤンキーかよ、と思いつつ本気でビビっていた。

だって、目が、、怖い、、明らかに喧嘩売られてるじゃないですか。。

人でも殺してきたの?というくらい鋭い眼光をしていた。

カツじゃないメンチって久々に見たなー。。

喧嘩やヤンキーとほぼ無縁の人生を送ってきたので、誇張なく「殺されるのかな?」と思った。

幸いにも、いきなり殴られるようなこともなく、夫婦揃っての騒音問題についての苦情を聞くこととなった。

ヤンキー夫がきてからの新事実としては

・僕たちの部屋の以前の住民とも騒音問題で揉めた。

・騒動の末、僕らの部屋の元住人は出ていった。

・このあたりで自分たちを知らない者はいない。

・ちょっと声かければ人集められる。

色んな意味でドン引きしながら、なんとかこの場を収めねばと必死になっていた。特に、前の住民が云々については何もきかされていない。

僕は内心ビビリまくりながらも冷静を装って

自分たちは数日後に入居予定であるが、まだ住み始めてはいない。

うるさくしたつもりはなかったが、うるさくして本当に申し訳ない。

・自分たちも事情がよくわかっていないので、一度不動産仲介業者に確認をとりたい。

・なので今晩はお引取り願いたい。

・今後はうるさくしないよう出来る限りの注意を払う。

という趣旨のことを説明し、徹底的に腰を低くすることで事態の収集を図った。

最後には一定の理解をしてくれたようで「そういうことか、悪かったな」みたいな態度で夫婦揃って帰っていただいた。

そして、ドアが閉まり、奥の部屋で会話をきいていた妹の元にすぐに向かった。

妹と顔を合わせると、完全に以心伝心していることがわかった。

結論は1つ。

「この部屋には住めない」

解約と部屋探し

騒動の翌日、僕はすぐに件の部屋を紹介した不動産仲介業者の元へ向かい、ことの顛末を説明した。(以下:不動産業者)

そして、部屋の解約の旨を申し出た。

本当に過去にトラブルがあったのか、下の夫婦がちょっと〇〇な人たちで、あることないのか言ってるのかは分からない。だが、そのままあの部屋に住めばトラブルが起きるであろうことは明白だ。もしかすると物理的に加害される可能性も高い。そんなリスクはとることは出来ない。

解約というよりは契約を白紙に戻したい、という希望を伝えた。

ヤンキー夫婦の話通り、過去にトラブルがあり、その事実を契約前に知っていれば契約しなかったであろうことは明確だからだ。

しかし、不動産業者は解約は可能だが白紙にするのは無理ということを言ってきた。

一度契約した以上、白紙にするのは難しい、などということはわかっているが、ことがことだ。こちらも引き下がるわけにはいかない。

なぜなら、二人で住めるような部屋を借りた以上、必然的に家賃も高く、初期費用もけっこうな金額になっていたからだ。

そのお金がなくなるのはかなり痛いし、僕たちはこれから新しい部屋を探さないといけない。そして、同等もしくはそれ以上の金額が初期費用として必要なこともわかっていた。お金が返ってくるか否かは僕たちにとってこれからの生活を左右する生命線なのだ。

不動産業者の言い分としては

一度、契約した以上 お金は返せない。

・トラブルについては自分たちも把握していなかった。

・可愛そうだとは思うが、契約がなくなってしまったので自分たちも被害者。

ということだった。

本当にトラブルについて把握していなかったのか?隠していただけでは?などと色々と言いたいことはあったが、特に最後の部分は許せなかった。

仮に僕たちが契約をやめたとしたら、このままなら僕たちは初期費用が返ってこない、そして大家さんも家賃が入ってこない。

しかし、不動産業者だけは既に仲介手数料をもらっているはずなので、唯一利益を得ているのだ。

被害者面をしないでほしい。

何より、担当者がどこか小馬鹿にしているような、自分たちは悪くない、無関係だ、という態度なのが許せなかった。

その瞬間、僕は徹底的に戦うことを決めた。

それは同時に新居を失うということだ。(いずれにせよ住めなかったけど)

上京してたった2日目で住む家がなくなってしまった。ホームレスだ。

田舎から出てきた僕には、お前に東京は無理だよ、やめとけ、と言われている気がした。ツライ。。

幸いにも、妹が居候させてもらっていた伯母の家があったので、事情を話してしばらく僕も居候させて貰えることになった。

伯母一家には感謝してもしきれない。これがなければ、兄妹揃って露頭に迷っていたかもしれない。マジで。

不動産業者は許せないが、まずは新しい家だ。引っ越しの荷物諸々も止めないといけない。

僕も数日後には入社を控えていたため、自由に出来る時間はあまりなかった。

そこから全てを急ピッチで進め、2週間後くらいには新しい家(今も僕が住んでいる家)に入居が決まった。結局入居できたのは5月になってからだったが。当たり前だが、最初とは別の不動産業者経由だ。(お金もギリギリなんとか用意できた)

契約の前には、隣人にどんな人がいるか、過去にトラブルがなかったか、ということも徹底的に質問した。(プライバシーの関係で答えてはもらえなかったけど、新しい家を探す経緯も全て話していたので、とても親身になってくれた)

新しい家を探しつつ、1件目の不動産業者にも話し合いのため通い、区役所の無料の法律相談で裁判するにはどうすればいいのか、みたいなことも調べていた。

訴訟額が50万以下の少額訴訟というものを教えてもらい、本当に裁判をすることも視野にいれていた。

しかし、何度も通っても話が平行線にしかならず、そして向こうが完全にこちらを舐めきっていることが分かったので、ある時キレてしまった。そして別の手段に出ることにした。

担当者と話しても無駄だと悟った僕は、その業者の本社の電話番号を調べ、電話が繋がった直後に「責任者もしくはあなたの所属する部署の上長の人を出して欲しい。」と伝えた。※これが適切かはわからないが当時はそれくらい頭に来ていた。

電話口の人に詳細を説明したところで、あとで同じ説明を求められることは明白だったので、説明もしなかった。「〇〇という事務所の△△さんとトラブルになっている」という旨だけ伝えた。

そして、上長の方に繋いでいただき、ことの詳細を伝えた。

最も強調したのは「担当者の態度が悪すぎる」という部分だ。

契約云々については突っぱねられる可能性もあったけど、こちらは一応客なので、社員の態度についてのクレームには耳を傾けざる得ないと思ったからだ。

意外と電話口の上長はいい人で、僕の話をちゃんと話をきいてくれた。

それと同時に僕の件は本社には伝わっていないようだった。

「返金については、本社と相談して決める」などと担当者は言っていたが嘘だったのか。。と更なる怒りが湧いた。

そして改めて「契約を白紙に戻し、お金を全て返して欲しい」という希望を伝えた。

「きちんと本部として検討する」という回答を貰い、以後は本社の人としか連絡したくない、という希望を伝え電話を切った。

そして、その数分後、僕とやりとりをしていた担当者から電話がかかってきた。向こうから電話がくるのは初めてのことだった。

電話に出ると「今までの態度が悪く、本当に申し訳なかった。返金についても本社と相談し改めて連絡したい」ということを伝えられた。

おそらく、僕が電話したことがきっかけに本社の人から怒られたのだろう。

僕はすぐに「おけまる!サンキューでーす」というEXIT並のテンションで電話を切った。電話するのも、謝るのも遅い。もう貴方と話すことは何一つない。

それから本社の人と相談を重ね、最終的に初期費用は全て返して貰った。(結局返してもらえたのは数ヶ月後だったけど)

そして僕は新居(つまり今の家)に住み、特にトラブルもなく楽しく過ごしている。

本当に過去に騒音でトラブルがあったのか、不動産業者はトラブルについて把握していなかったのか、という点については結局真実は分からない。今となってはどちらでも良いが、あのまま最初に家に住んでいたらと思うと少し怖くなる。(むしろ本格的に住む前だったのが不幸中の幸いだったかもしれない)

家選び、ついては不動産業者選びというのは運も大きく左右すると思う。良い担当者、良い不動産業者に当たるかはやってみないと分からない。

だけど、住んでみてトラブルに巻き込まれました、あんまり良い家じゃありませんでした、は洒落にならない。家というのは生活のベース、全ての根幹なのだから、だからこそ出来る限り調べたり、質問したりして避けられるリスクを避けるべきだ。

そして、万が一何かトラブルが起きたら全力でそれを回避するよう努めよう。僕のトラブルについても、何も主張していなかったら数十万円近いお金を無駄にしていただろう。

4月から新しい環境で過ごす人が出来る限り、楽しく安全な新生活を送れることを心から願う。

そして、ヨッピーさん頑張れ。

余談だが、僕の最初の家を担当していた不動産業者の事務所は半年くらいしてから店の前を通ってみると潰れたらしくラーメン屋になっていた。

そのラーメン屋に足を運ぶ気にはとてもじゃないがなれなかった。


もし良いと思ってお気持ちをいただけるとやる気がでます。コーヒー代にします。