人材エージェントは嗜好性の高いサービス?低いサービス?人材紹介マーケター向け
こんにちは。
上場人材エージェントサービスでマーケティングの責任者をしているかずたかです。
このnoteでは、私の経験も踏まえて人材業界のマーケティングに携わる方向けの情報を発信しています。
今回は人材エージェントのユーザーマーケティングにおいて、最初の第一歩である「人材エージェントを利用するのはどんな人」というテーマの中から、”ユーザーの嗜好性”について書いていこうと思います。
人材エージェントは選ぶ段階ではユーザーの嗜好性はほとんど関係ない
マーケティングの方向性を決める際、ユーザーの嗜好性が重要な観点になります。
嗜好性とは、個人的な好みや感情のことです。
例えば、アパレルブランドは非常に嗜好性が高いサービスの代表例です。
ブランドが大好きで新作が出たら必ず購入する
このブランド以外は買わない
普段からSNSなどで積極的にブランドについて調べている
こうしたユーザー行動が見られるサービスは、嗜好性が高いと言えます。
一方、人材エージェントは基本的に嗜好性の低いサービスに分類されます。
絶対にあのエージェントしか使わない
常に特定のエージェントについて調べている
こうした行動を取る人は基本的にいません。
多くの方は、「転職したい」「将来のために転職を考えたい」といったニーズが顕在化したタイミングで、「どのエージェントがいいんだろう?どんなエージェントがあるんだっけ?」と調べ始めるのが一般的です。
もちろん、ハイクラス求人ならビズリーチ、転職ならリクルートエージェントのように、強いブランド力が嗜好性を生むケースもあります。
しかし、ほとんどの人材エージェントはそこまで強いブランドを持っていないため、基本的には嗜好性の低いユーザーを対象にしていると考えるべきです。
但し、一度サービスを利用した瞬間に指向性が生まれ始める
人材サービスは、選択の段階ではほとんど嗜好性がないものですが、一度利用すると嗜好性が生まれ始めます。
たとえば、人材エージェントに登録し、初回の面談で非常に良いキャリアカウンセリングを受けたり、予想外の魅力的な案件を紹介してもらったりするなど、ポジティブな体験をすれば、そのブランドやサービスに対する嗜好性は高まっていきます。
反対に、担当者が頼りなかったり、性格的に合わないと感じたりすると、サービスに対する嗜好性は下がってしまいます。
私自身の体験ですが、以前、大手転職エージェントのA社を利用した際、非常に若い担当エージェントがついたことがありました。その方が一生懸命に頑張ってくれているのは伝わってきたのですが、話が噛み合わないことが多く、何度も面接練習を勧められるなど、非常に手間に感じてしまい、途中でそのエージェントの利用をやめました。
その経験以来、A社に対して苦手意識が生まれ、「また若手のエージェントが担当になったら面倒だな」と思い、以後の転職活動ではA社の利用を避けるようになってしまいました。
このように、エージェントに登録する段階ではほとんどなかった嗜好性が、一度サービスを体験すると顕在化してくるのが、人材エージェントの特徴だと思います。
人材サービスの嗜好性を踏まえた上で、取るべき集客戦略の骨子とは?
上記のような指向性を踏まえ、行うべき戦略の骨子について考えて見ましょう。ここでは、どちらかといえば戦術に寄った考え方をしたいと思います。
人材の獲得
人材の獲得においては、嗜好性が低い状態であるため、SNSやYouTubeなど、中長期的に成果が出る施策はあまり効果的ではありません。
嗜好性が低いことから、いかに顕在層にリーチし、リーチした際にスムーズにコンバージョンさせるかが重要です。具体的には、リーチ数とCVR(コンバージョン率)の最大化を指標として追いかけることが、シンプルで最も効率的な手段だと思います。
もちろん、ブランドの構築や強化にも力を入れるべきです。ここで言うブランドとは、「セグメント×ブランド名」を指します。
「ハイクラス求人」なら「ビズリーチ」
「転職」なら「リクルートエージェント」
「おしゃれなパソコン」なら「Mac」
といったメッセージのことです。
こういったブランドを明確にし、認知度を向上させていくことが理想です。しかし、仮に認知度が高まらなくても、リーチしたターゲットに対して一目でわかるメッセージが伝われば十分です。
つまり、人材獲得においては、シンプルにリーチ数とCVRをどう最大化するかを考えることが効果的でしょう。
面談時の体験
次に、ありがたく流入した人材に対するコミュニケーションについてです。
ここでミスをしてしまうと、企業への推薦に至らないため、質の高いコミュニケーションが非常に重要です。
必要な要素としては以下が考えられます。
人としての関係性の構築
信頼関係を築くことで、相手が安心してキャリアの相談をできる環境を整える。市況感や市場の理解
少なくともユーザーよりも高度な市況感や市場の知識を持ち、それを提供することで信頼を得る。十分なヒアリングと提案
ユーザーのニーズや状況を十分にヒアリングした上で、相手の決定を後押しできるような具体的かつ効果的な提案を行う。
これらの要素が揃えば、期待を超える体験を提供できる可能性が高まり、その結果、無事に成約に至る可能性が高くなります。
したがって、人材エージェントのマーケターは、リード数の増加だけに集中するのではなく、面談やその後のユーザー体験に問題があるようでしたら、しっかり踏み込んで提案することが重要だと思います。
まとめ
今回は、人材エージェントのユーザーマーケティングにおける「嗜好性」に焦点を当て、その重要性と影響についてお話ししました。
人材エージェントは、ユーザーが選ぶ段階では嗜好性がほとんど関係ありませんが、一度サービスを利用すると嗜好性が生まれ始めます。これにより、ユーザーの体験次第でブランドへの愛着が高まったり、逆に離れてしまうこともあります。
そのため、マーケティング戦略としては、まず顕在層にしっかりとリーチし、スムーズにコンバージョンさせることが重要です。また、リード数を追いかけるだけでなく、面談やその後のユーザー体験にも注力し、期待を超える体験を提供できるようにすることが、成功への鍵となります。
人材エージェントのマーケターは、ユーザーの嗜好性を理解し、それに基づいた戦略を立てることで、より効果的なマーケティング活動が可能になるでしょう。
次回も引き続き、人材業界のマーケティングに関する情報をお届けしますので、ぜひご期待ください。
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