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女性の力

私達は母の胎内から生まれ出たが
胎内にいた記憶を何ひとつ持っていない。

しかしながら
子供が母親を慕う気持ちは
けっして尽きることはない

無尽蔵に湧き出てくる。

母が子にそそぐ愛情が
けっして枯れることがないように。

谷神(こくしん)死せず、是を玄牝(げんぴん)と謂ふ。玄牝の門、是を天地の根と謂ふ。綿綿として存するが若く、之を用ふれども勤(つか)れず。  
『老子』(成象第六)

谷神(こくしん):谷に宿る神のことで女性器を暗示している。

道にはいろいろな名前があるが、「谷神」もそのひとつ。谷の神はさまざまなものを産み出しており、その働きは「道そ」のものといえる。谷神は、「玄牝」という名前を持つ。微妙でありながら力強い「女性」の働き。それは天地万物を産み出す玄妙な働きと同様、不滅不死なものだ。
玄牝の門は、天と地から成るこの世を産み出した根源である。女性は腕力には劣るが耐久力に優る。ものを産み続けて疲れることがない。尽きることがない根源力に満ちている。
『老子道徳経講義』田口佳史 一部改訂

「谷神」は女性器を暗示していると言われている。老子は、「道」の働きを、女性の生殖力に擬えたのかもしれない。

「玄牝」の理解にあたっては、體道第一の「玄の又玄、衆妙の門」という一節を思い出してもらいたい。
「玄」は「くろい」「暗い」という意味から転じて、肉眼では捉えられない、微かなる妙味のことである。
それが「牝」=女性だと老子は言っている。

訳にあるように、女性の力は、腕力、頑強さではなく、耐久力、柔らかである。あらゆるものを産み出す力の根源には、女性の力=耐久力、柔らかさがある、ということではないだろうか。

耐久力、柔らかさに、もうひとつ加えるとしたら、母性の愛情である。
さらに言えば、母からの愛情の裏返しが、子供から母への慕情かもしれない。そう気づいた時に、次の一文が心に浮かんだ次第である。

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