大切なものは扱いずらい
追いかければ追いかけるほど遠ざかり
強く抱きしめれば消えてしまう。
本当に大切なものというのはそういうものである。
だからこそ、なでるようにして叩き
さするようにして掴まねばならない。
退くようにして進み
壊すようにして作らねばならない。
踊らされるようにして踊らせ
ひれ伏すようにして
思いのままにしなければならない。
為さずして自ずから然り。
それが本当に大切なものを手にする極意である。
将欲(しょうよく):・・・したいならばの意
物:ここでは人の意
呴(く)す:息をかけて温める
奢(しゃ)、泰(たい):いずれも過度なこと
【解説】
この章では、「無為の思想」に託して、大切なものの扱いづらさを説いている。
何事においても、人為や作為に頼れば頼るほどうまくいかないものである。先述のように「為さずして自から然り」が「無為」の極意である。
強く握りしめると壊れる。しっかりと抱きしめようとするとするりと逃げていく。力が入り過ぎるするとしらける。何事も行き過ぎは禁物である。
―なでるようにして叩く― かなり以前のことだが、政界の寝技師と謳われたある大物政治家が、政治の極意をそんな風に言っていたことを思い出す。
よい関係を築くためには自分が一歩退く、という対人の極意もある。大切なものを手に入れるためには「無為」であることが必要だ、ということなのかもしれない。
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