強さの裏側にある弱さ
力づくの天下取りを仕掛けた信長は
高転びに転んだ。
英才を集めたはずの陸軍参謀本部が
日本を破滅に追い込んだ。
強きものは脆く
賢いものは過ちを認められない
歴史がそれを教えてくれる。
常勝は人の怨みを買う
賞賛はこころの緩みを招く。
スポットライトが
当たっているように思える時にこそ
危機が迫っていることを
肝に銘じなければならない。
人知れず汗をかき
黙って後始末を引き受け
手柄を人に譲る
そういう人間になりたいものだ。
師(し):ここでは軍隊の意
荊棘(けいきょく):いばら
細かい部分は別として、大筋の意味はわかりやすいだろう。 ー驕れる者は久しからず、盛者必衰の理ありー を諭していると理解してよいのではないか。
「師の處(お)る所には、荊棘(けいきょく)生ず。大軍の後には、必ず凶年有り」という一文が入っているところが老子らしいと思う。
平家物語のように強者の衰退そのものにスポットを当てるのではなく、強者の強引、驕慢の裏側で起きている真の悲劇のど真ん中を射抜いている。
源平が覇を争った争乱の世は、天災頻発の世でもあった。
同時代に生きた鴨長明が著した『方丈記』は、傑出した「災害文学」としても知られている。平安末期から鎌倉初期の京都を襲った地震・風水害・火災を活写してやまない。覇権を巡る争乱の世は、荊棘が生じ、凶年が続いた時代でもあった。
グローバル金融資本主義の真っ只中で、コロナ禍に襲われた現代の世界を、老子が見たら「物壮んにして荊棘生ず」と言うかもしれない。
強さの裏には、必ず危機が潜んでいることを肝に銘じたいものである。
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