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6月17日、本を出版します──「トヨタを3年でやめた」人事のその後

6月17日(金)に『拝啓 人事部長殿』という本を出版することになりました。そこで今日は、出版に至るまでの経緯と、この本に込めた想いをお伝えできればと思います。

https://www.amazon.co.jp/dp/490904437X

「僕はなぜトヨタの人事を3年で辞めたのか」。話題になったnoteのその後

以前、ぼくは1本の記事を公開しました。

日本企業が抱える「閉塞感」をなくしたい。

そんな分不相応な理想を掲げながら、「閉塞感」を「1人の人間として重視されている感覚の薄さ」と「1人では何も変えられないという無力感」に分解し、これらは特定の「誰かのせい」ではなく「会社のしくみ」によって生み出されている、という仮説をぼくは立てました。

そして大変ありがたいことに、こちらの記事は、たくさんの方に読んでいただき、賛否両論、さまざまな意見をもらいました。

あれから、約1年と8ヵ月。

ぼくはサイボウズの人事労務担当者として働きつつ、並行して、どうすれば日本企業(特に大企業)の閉塞感をなくすことができるのか、少しずつではありますが、私見を発信しています。

閉塞感を生み出している日本の「会社のしくみ」にはどんなものがあるのか、あるいは、そうしたしくみは、どんな歴史的背景でつくられたのか。

過去を学べば学ぶほどに、いまの日本の会社のしくみが、どれほど考え抜かれ、うまくできているのかを知りました。

そしてまた、日経COMEMOからお声かけをいただき、時事的なニュースを取り上げつつ、会社の「閉塞感」をなくすヒントになるような新しい会社のしくみについて、自社の事例も交えながら考察してきました。

新しい会社のしくみについて、企業はどのような背景・目的で導入しているのか、どのように運用しているのか、そして、日本社会の構造にはどのような影響を及ぼすのか。

文章を書くなかでぼく自身、改めて考えを整理することができ、新しい発見や学びも沢山ありました。また、ぼくの発信に対してコメントを頂いたり、記事をきっかけにつながった人たちと議論したりする機会も増えていきました。

「髙木さん、本を書いてみたら?」

実は、ぼくは話題になったnoteを書く前(3年前、サイボウズに転職したての頃)から、「どうすれば大企業の閉塞感をなくせるのか」について、社内のオープンなグループウェア上に、学んだことや、気づいたことをメモとして書き溜めていました。1日の終わりに3000字程度、ときには5000字を超える長文を書くこともありました。

実際の当時の日報(一部抜粋)

そんな風にオープンな環境で発信していると、たくさんの社内のメンバーから「そこはこういう考え方もあるんじゃない?」「前職だとこういうところもネックになっていたよ」など、ぼくの書き込みに対して、さまざまなフィードバックが集まってきました。

そして入社から3ヵ月ほど経った頃、そうした社内の書き込みを見ていたサイボウズ式ブックス編集長の大槻さんから、「髙木さんの考えていることを本にしてみない?」というお話をいただいたのです。

それはぼくにとって、願ってもないチャンスでした。

ぼくは前職を辞める際、当時の人事部長や人事の先輩方に「必ず外からぼくなりの提案を届けます」と約束をして辞めました。

退職後も、トヨタの人事の先輩方とは定期的に意見交換をしていましたが、正直、限られた時間の中で伝えられることはごくわずかです。そもそも会社の閉塞感には無数の要因が複雑に絡み合いすぎていて、建設的に議論していくには、大量の前提条件や因果関係を体系的にパッケージ化した情報が必要だと考えていました。

もちろん、いまの時代、インターネットやSNSを使えば、気軽に情報を発信することはできます。ただしこれも、1つひとつの情報が細切れで伝わってしまうため、全体像が見えにくく、深い議論のたたき台とすることには不向きだろうと思っていました。

そういった意味でも「本」という形で大量の情報を1つの提案としてまとめられるというのは、非常に魅力的な選択肢に思えました。

そこでぼくは、これまでどおり人事の業務を主としながら、兼務という形で一部の業務時間を本の執筆にあてていくことになりました。

そして、本を執筆している途中に、そもそもなぜ自分が大企業を変革したいと思っているかを、あらためて整理して言語化、公開することにしたのが、「僕はなぜトヨタの人事を3年で辞めたのか」の記事でした。

記事が大きな反響を呼んだことで、自分の問題意識に共感してくれる人が多くいることが知れたのは、執筆の大きなモチベーションにもなりました。

新しい会社のしくみに挑戦している12社を取材。

この本の特徴の1つに、サイボウズの事例だけでなく、他社の人事制度変革の事例を載せていることがあります。

本の執筆にとりかかり、実際に自分の考えをテキストにまとめていくとなったとき、ぼくは大きな壁にぶつかりました。

一言で言えば、ぼくの考える変革のストーリーには「手触り感」がありませんでした。実現可能性、と言い換えてもいいかもしれません。

結局のところ、本やネットでどんなに知識をつけて、頭の中だけで仮説をこねくり回したところで、それは実行されなければ、そして、会社にとっても個人にとってもメリットが生まれなければ、何の意味もありません。

もちろん、いま自分が働いているサイボウズで、新しい会社のしくみをしっかりと実運用が回る形で作り上げていくことは、まずは自分で証明するという意味において、「手触り感」を出すための1つの手段と言えます。

しかし、規模も業種もまったく違うサイボウズの会社のしくみが本当に世の中の大企業が変革していく上で参考になるのか。そう言われてしまうと、自信が持てない状態が続いていました。

そんな中、悩み抜いた末に出てきたアイディアの1つが、「実際に新しい会社のしくみにチャレンジしている企業の人事担当者に取材に行ってみたらどうか」というものでした。

ぼくは社内外のつながりをもとに、だめもとで個人的に気になる制度を導入している企業に向けて依頼書を送ってみることにしました。

結果、ほぼすべての企業に取材を快諾いただき、どんな目的で新しい会社のしくみを導入しているのか、どのようにして制度改革を進めたのか、具体的にどのように運用しているのか、といったぼくの質問に対し、包み隠さずに答えてくれました。

取材企業一覧(敬称略)
【採用】
・富士通 → 新卒職種約束コース

【契約】
・タニタ →日本活性化プロジェクト(個人事業主化)
・ANA  →副業制度/グループ外出向

【時間・場所】
・ユニリーバ・ジャパン →WAA
・ヤフー →時間と場所に捉われない働き方
・みずほ銀行 →週休3~4日制

【配置/異動】
・ソニーグループ →社内募集/キャリアプラス/FA制度/キャリア登録制度

【報酬/評価】
・NTTデータ →ADP制度/TG制度

【健康(安全配慮)】
・味の素 →味の素流 健康経営(セルフケア支援)

【コミュニケーション/風土】
・コンカー →オールハンズミーティング/フィードバックする文化

【育成】
・ソフトバンク →ソフトバンクユニバーシティ(選択型研修)

【退職】
・良品計画 →バックパス制度/カムバック採用

つまり、この本では、ぼくの大企業の閉塞感をなくすための提案が、ぼくが本で学んできたこと、考えてきたことだけでなく、上記12社とサイボウズの事例を踏まえた形で書かれているのです。

タイトルは、『拝啓 人事部長殿』。

本のタイトルは『拝啓 人事部長殿』です。

このタイトルにした理由は、この本が、前職の人事部長はもちろん、日本中の人事部長に向けた手紙、という構成をとっているからです。

若手人事であるぼくが、前職の、あるいは世の中の人事の先輩たちに向けて自分の想いを伝えようと思ったとき、「手紙」という形式で書き綴るのが最もやりやすく、気持ちが伝わると考えました。

この本のなかには、ぼくがこの3年間で見てきたこと、考えてきたことのすべてを詰め込みました。

もちろん、ぼくはこの手紙のなかに書いた提案がすべて正しいなどとは、これっぽっちも思っていません。

まだ社会人としての経験も6年程しかなく、欠けている視点や誤った解釈をしている部分もあるかもしれません。

それでもこの手紙をたたき台に、同じ理想に共感してもらえる方々と知恵を出し合っていけば、より良い答えが見つかるんじゃないかと思っています。

この本を読んでくれた方の会社で、あるいは会社を超えて、社会全体で、世代をも超えた対話が始まっていけば、それ以上の喜びはありません。

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