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小さな私
2019年10月29日 01:11
それでも一日中、布団の上げ下げ、お膳立て、掃除、洗濯はまだ機械に任せる訳にはいかない時代である。 シーツや掛け布団、枕カバー、浴衣は糊付けしきちんと畳みアイロンをかける。予約を確認して帳簿をつける。 おかげで、和服の折り方と膳の作り方だけは今でも覚えている。 お茶屋、八百屋、魚屋に肉屋の御用聞きが、 「今日はいかがですか?」と入れ替わり立ち替わりに来る。その他諸々の雑用がある。我が儘な客
2019年10月27日 17:10
私の周りの人たちの話をしよう。 私の家は、その昔はそれなりに栄えた港町で、旅館を営んでいた。 旅館と言っても、商人宿で二十人も入れば満室になる程度の小さい宿屋である。 祖母の代から始まって、百年近くのなる。今日は、その婆さんの話から始めようと思う。 私は祖母を「おばば」と呼んでいた。お祖母はいつも藍色の地の小紋を普段着に、綺麗な背すじの通った姿で、さっさっさと步く。娘達や孫たちに、