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世界は愛で満ちている 〜高度1万メートルの奇跡〜

自己紹介:妻の転勤の機に福祉施設の施設長を退職し、持ち家も処分。当時13歳の娘と家族3人で2023年夏にオーストラリアに移住の48歳。現在子育てと家事全般を行う完全専業主夫。ワーホリのタグ付けをしているが、ワーホリではなく働く予定も特になし。一応、社会福祉士だが外国ではなんの意味もない。吉本芸人チャド・マレーンがオーストラリアを「ラリア」と呼ぶことに感銘を受け、そのまま使用する。


飛行機が好き。空港が好き。そんな話。



東京からの飛行機で2時間ずーーーっと泣いている子がいた。子じゃねえな、乳児だな、ありゃ。まだ首も持たない感じ。俺の10列くらい前だからさ、顔は見えないけど時折若いお母さんが立ち上がってあやすんだけど全く効果なし。どころか、いよいよ激しくなる。

もうさ、すごいよ2時間以上あれだけ全力で泣けるって(笑)もう、緩急とかないの(笑)ずーーーっと全力。全力号泣。たのきん全力号泣。

でもね、特に誰も怒ってないんだよね(笑)

俺より10列くらい前だからさ、その母子と俺の間の空間にざっと見ても7〜80人くらいいたから、もしかすると苛立っている人もいたかもしれないし、もちろん若いお母さんが心底困っているのは後ろ目からもよくわかるんだけど、特に不穏な感じはなく。わかるじゃん、子供が泣き喚いて場の空気がピリピリする感じ。実際CAさんも時折目配せや声掛けしているくらいで、まあ、クレームもきてないし大丈夫だろうって感じだったんだと思う。あ、もちろん赤ちゃんは全力よ(笑)

それで、もう可笑しくなっちゃってさ、俺。何にって、その赤ちゃんに。

あの身体の中にどれだけパワーあるんだよって(笑)

多分、大人が2時間あれだけ泣き続けたら酸欠起こすか喉やられるか。絶対無理。死ぬ。しかしその赤ちゃん、もう赤ちゃんて書くのめんどくさいから愛情を込めて〈ガキ〉と書くね。そのガキ、手加減なし、手抜きなしで本気なワケよ(笑)。

犬は吠えるがキャラバンは進む、改め、赤ちゃんは泣くが飛行機は飛ぶ。

もうさ、その泣くという、ただそれだけの非常にプリミティブな行動と、それを命の限りやり続ける(2時間以上だぜ?)ガキに畏怖にも似た尊敬、というかさ(笑)。

いつの頃から、俺、時々隣の乗客(もちろん知らない人♡)と顔を見合わせて

「よく泣くね♡」

「まあ元気で良いわいな♡」

「それもそうですね♡」

「赤ちゃんだからね♡」

みたいな非常にハートウォーミングなコミニュケーションが生まれたり(笑)

見回すとみんなそんな感じでニコニコしてるし。ありゃなんだ、奇跡的にたまたま赤ちゃん大好き人間が同じ飛行機に乗り合わせたんじゃないかと思うくらい、温かい空気に満ちてるの。俺、一瞬なんかイケナイモノ食ってたかなって思うくらい、意味もなく温かな幸せに包まれている感じ。

で、飛行機は進み、ガキは順調に泣き続けるんだけど那覇に着く手前で異変が起こった。

それまで全力で泣き続けたせいか、ガキの鳴き声に痰が絡まり出した(笑)いや、痰じゃねえな、ひきつけだな、ありゃ。ヒックヒックし出したの。

この2時間こんなことないからさ、あれっ?と思って注意して聞いていたの(笑)ANAの〈翼の王国〉読みながら。でヒックヒックの感覚が早くなって、瞬間、ヒュー!!って息を飲みこむ音がして鳴き声がピタッと止まった。もうさ、びっくりしてさ。まさかと思って顔上げてそのガキのいる方向見たの。

そしたらさ。

そしたら。

飛行機の乗客全員が顔上げてガキのとこ見てんの。壮観だよ。何が起こった!って顔が、背もたれから顔を伸ばし、友人たちとのおしゃべりをやめ、飲んでるコーヒーを落とし(ウソ)、まどろんでいた眠気が吹っ飛び(俺)、みんなが固唾を飲んで赤ちゃんの方向を見ている。時が止まったね。ボイーングの。エアポケットならぬタイムポケットだよ、あれは。みんながシーンとした。

その刹那。

・・・びえ〜〜〜ん!って聞こえたの。顔は見えないけど、あの懐かしい声が。ああっよかった、ちゃんと泣いてくれた。元どおりに泣いてくれた、元どおり以上だよ〜。

そしたらさ。嘘じゃないよ。乗客の何人かがホッとしたのか、安堵のため息を漏らしたんだよね。

もう最高じゃない?これさ。敬愛する歌手Beginの比嘉栄昇氏が言ってたよ。「赤ちゃんが自由に大声で泣ける世界ってなんて平和なんだ」って。まさにそれだった。



那覇に着いてタラップ降りてさ、歩いていると前にそのお母さんが歩いてたの。見ると本当に小さいお母さんで。おっきいリュックを背負って、前に赤ちゃんくくりつけて手にたくさんのガラガラとかおしゃぶりとか持って歩いているの。飛行機の中でどうにか対処しようとしたんだね、効果全くなかったけどね(´∀`)

で、その横をすり抜けるとき、赤ちゃんの顔見たの。泣いてねぇでやんの(笑)降りたら泣き止んだ。それどころからママの鼻先に小さい指を伸ばしてニコニコしている。これ見たら俺もうたまんなくなってさ。赤ちゃんの顔覗き込みながら言ったの。お前、元気いいいな〜!よく泣いてたな〜!って。で、お母さんの顔見たら、・・・お母さん泣いてんじゃん(笑)すごく若い母親でね、ずっとあやしてて、もうどうしようもなかったんだろうね。小さい声で「・・・すみません、ご迷惑おかけしました」っていうからさ。全〜〜〜然!どんどん泣いて構わないよ、赤ちゃんだもん。今からでも泣けばいい。って言ったらペコンと頭下げて行っちゃいました。

なんかね、出張の疲れが吹き飛ぶくらいいい経験だったよ。世界は愛で満ちている、そう思いたいよね。


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