福祉屋として。

福祉屋として。

悪ぃ、長文(多分)

医療従事者の人には本当に頭がさがるよ。これはさ、もう今更俺が言う事じゃないよね、本当に。

医者も看護師もみんな。
病院も地域医療も全て。

最前線でギリギリのところで踏ん張ってくれている人たち「医療」があるからこそ「福祉」は成り立つんだよ。

それを前提に考えるんだ。

医療現場が必死で戦ってくれていることを前提に考える。俺たち福祉屋の「使命」を。

うちの施設では2月の中旬から面会制限を行なっている。そして幸い今現在利用者の罹患は避けられている。

でもね。

おじぃおばぁは2ヶ月以上も家族に会えないんだ。彼らが何よりも大事としてきた子や孫に会えないんだ。

「入居者の安全で安心した生活を継続的に提供する」

運営規定と重要事項説明書に記載されていて、それは当然なんだよ。

利用者の健康を守る。これは絶対なんだ。

でもさ。

・・・ごめん。ここから以降は語弊を恐れずに書くよ。

おじぃおばぁの限られた時間の中で面会制限を設けることが、本当に彼らの幸せになっているのか、わからなくなる時がある。

おじぃおばぁは「愛する人たちとの残り少ない時間」と「罹患のリスク」を天秤にかけられている状況なんだよね、今。そしてその天秤を俺が施設長として握っている。

常々言ってきたんだよね。「我々の仕事はオムツ交換でも食事介助でもない。それを通じておじぃおばぁに『笑顔』になってもらうこと。いくらオムツ交換が早くても、食事介助がスムーズでもおじぃおばぁが笑顔にならなかったら我々の仕事は失敗だよ」って。

なんかさ、それが揺らぎ始めてるんだよ、最近。

ここであえて改めて言う。「健康」あっての「笑顔」なんだよ。それは絶対に揺るぎのないことなんだよ。

少し話は違うかもしれんけどさ。

ずっと以前、まだ介護職だった頃、タバコを禁止されている90代のオジィがいたの、施設に。まあ、基本的に入居者は喫煙禁止だからさ。でも実は俺、隠れて一緒に吸ってたんだよね、タバコ。無口なオジィで、特にタバコ吸う時だけ元気になるとか、昔話をしてくれたとかそんな美談は一切ないんだけど、俺が夜勤の時、みんなが寝静まった頃、詰所にちょこちょこ歩いてきて俺の顔じっと見んの。俺もなんも言わずに二人でベランダに出て、俺のラッキーストライクを一本だけ渡すと「・・・アカダマーやさやぁ」って。火ぃつけて二人でプカーって。夕飯なんでした?とか、最近どうです?とか、ちゃんとした答えなんか期待しない質問を俺がするだけで、オジィは答える時もあれば答えない時もある。だいたい黙ってプカーってしているだけなんだけど、最後の一服をして火を消した後、必ず言ってくれたの。「にふぇどぅ」って。

施設長となった今、絶対にやってはいけない事だってわかっているよ。ましてや今回は個人の話じゃない。タバコの話でもない。50名の利用者とその笑顔を守ろうと必死に頑張っている職員がいる。俺のその場の気持ちや感情で安易な判断をしてはいけないんだ、絶対に。

わかっている。

・・・ごめん、酔ってるからもう一回だけ言わせてほしい。

「命」が一番なんだよ。命や健康を蔑ろにして「福祉」なんて戯言に過ぎないんだ。

でもさ。

2ヶ月以上も家族に会えなくて、そしていつ明けるともしれないこの状況の中で寂しそうにしているオジィオバァ見てるとさ。

福祉屋にできることって一体なんだろうって考えてしまう。

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