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「がん」は意外に自然治癒している......希望を失わないで!

 意外な事ですが、がんは自然治癒する病気であり、実はそうした例が多く知られているのです。腫瘍内科学の研究者のケリー・ターナー博士は、現代医療によらずがんが劇的に寛解した 1000 件以上の医学雑誌に掲載された症例を分析し、その内の 100 人以上には実際に世界中を回ってインタビューをして、著書『がんが自然に治る生き方』の中でその驚くべき自然治癒の例を紹介しています。また、私は弟を勇気づける為に病院内で『幸せはガンがくれた』を朗読していたのですが、この本も死の間際から生還した 12 人の感動的な自然治癒の物語です。この本の著者の川竹文夫氏は元 NHK プロデュ ーサーで、1992 年に NHK 教育テレビスペシャル『人間はなぜ治るのか』を制作し大反響を巻き起こします。しかし、 反響が大き過ぎたせいかマスコミから叩かれ、NHK を辞めて「がん自然退縮」の調査研究を開始し、「がん患者学研究所」を設立して啓発活動を行っているという異色の人物です。この 2 冊の本には大変感動的な物語が描かれてお り、がん患者の皆さんにはぜひ読んで頂きたいと思います。

 また、近藤誠医師も著書の中で次のように語っていま す。

世の中の多くの人は「増大」、すなわち「がんが大きくなっていく」のが一般的だと考えている様ですが、実 は「何も変わらない」「少しずつしか大きくならない」といったケースは意外に多く、中には「小さくなっていく」 「消えてしまう」というケースも決して珍しくはないのです。特に、 健康診断や検診で発見された症状のない がんについては、このような経過をたどるものがむしろ多いと言っても過言ではありません。実際、 僕は腎臓がんを放置した患者さんを何人も見てきましたが、病巣が 3 センチくらいの大きさのものでも、がんが消え てしまった患者さんの方が、大きくなっていった患者さんよりはるかに多く、増大した患者さんは一人しかい ませんでした。子宮体がんを放置した患者さんも、Ⅰb 期では大きくなった患者さんが一人いましたが、Ⅰa 期であれば、消えてしまうケースがほとんどでした。さらに言えば、子宮頸がんのステージ 0 期やステージ Ⅰa 期の患者さんの場合、僕の知る限り、ほとんどほぼ全員のがんが消失しているのです。 (『がん患者よ、近藤誠を疑え』近藤誠著)

 近藤誠医師によれば、このような自然消失してしまうがんは「がんもどき」という事になる訳ですが、患者にとって重要なのは治るか治らないかという点で、医師ががんと診断した症例の中にも自然治癒するものが意外に多く存在するという事実こそ注目すべきでしょう。ここで皆さんに訴えたいのは、医師に見放されたような重篤な患者でも、自然治癒する可能性は有るという事です。決して希望を失ってはいけないのです。

がん細胞との共存を目指そう

成人では毎日数千個のがん細胞が新たに生まれていると言われます。そして高齢者では、ほとんどの人にがん細胞が存在しているのです。死亡した高齢者を解剖すると「85 歳を過ぎて体中どこにもがんのない人はほとんどい ない」(『だから医者は薬を飲まない』和田秀樹著)と言います。老衰で亡くなった人でも、必ずと言っていいほどがん細胞 が見つかるのです。つまり、ほとんどの高齢者はがん細胞と共存している。そして、がんの症状が出ないまま寿命を全 う出来ているのです。

 つまり、私達はがんの治癒に越した事は有りませんが、それが不可能な場合でも、がん細胞との共存の道を目指せばいい訳です。末期がん患者は、抗がん剤や放射線でがん細胞を叩くといった発想は改めた方がいいかも知れま せん。特に高齢者の場合は、がん細胞との共存を目標にした方が良いでしょう。がん細胞をやっつけるのではなく、共存を目指すと言う方が気が楽では有りませんか。 そして、がん細胞に悪さをさせずに共存していく為に、これまでの 生活習慣を改めて、体の免疫力・自然治癒力を高める努力をして行けばいい訳です。

 先に、毎日数千個のがん細胞が誕生していると述べましたが、それで全員ががんにならないのは、私たちの免疫システムが生まれる尻からそれらを排除している為です。私たち自身が、周囲に存在する無数の細菌やウイルスと、一種の生態系を形作って共存している様に、免疫システムとがん細胞がある種の共生関係を形成して、長期にわたって安定的に共存する可能性を想定しても、あながち荒唐無稽で突飛な発想とは言えないでしょう。

 食道がん専門の外科医だった帯津良一医師は、「完璧と思えるような手術をしても、数ヶ月後には再発して戻ってくる患者さんがたくさん」いる現状に、手術や抗がん剤による西洋医学だけの治療に限界を感じ、代替療法も併用した診療を模索する様になったと言います。半世紀に渡ってがん治療に携わってきた帯津良一医師の印象は、「がんほどミステリアスなものは無い」だそうです。「がん患者さんが100人いれば百通りのがんがある」「がんには個性があって、それぞれが予期せぬ方向に動く」(『ホリスティック医学入門』帯津良一著)。そして治癒する場合にも、人それぞれに仕方が異なると言います。つまり誰でもこうすれば治ると言う、効果のある万能の治療法は無いと言うのです。

 この不思議な捉え処の無さも、がんの進行や治癒が免疫システムとの相互作用に依存している事の現れかも知れません。しかし、このがんの持つ個性豊かでミステリアスな性格は、医師から治療不能と見放された末期がん患者には、朗報と見る事も出来ます。なぜなら、マニュアル通りの治療が本分の西洋医学が治療不能でも、他に幾らでも有効な治療法の可能性が有る訳ですから。がんに個性があると言うなら、その人に合った治療法なり、がんとの付き合い方が有るはずです。医師に余命宣告をされ、治療法が無いとして緩和ケアを勧められても、絶望する必要など全く無い訳です。

 がんの3大療法と言われる、手術・抗がん剤・放射線の根本に有る考え方は、手術でがん細胞を取り除きましょう、毒や放射線でがん細胞を殺しましょう、その代わり正常な組織や身体も大きなダメージを受けますよと言うものです。つまり西洋医学の3大療法とは、子供でも思いつくような単純な発想に基づいた治療法なのです。このような戦略的発想の欠落した治療法で治癒不能を言われても、それはむしろ当然であって、何も悲観する理由など全く無いのです。

がん発生と環境因子

 がんの発生には、環境因子が大きな役割を果たしている事が知られています。 がん発生率を比較すると、ある国に多いがんが、別の国では非常に少ない事は良くあります。 また移民が、移住先の国に特有ながん発生タイプを示す傾向がある事も分かっています。つまり、がん発生率の違いには、遺伝因子よりも環境因子が大きく関わっている可能性が高いのです。 こうした事から「がんの80~90%は避けられるか、少なくとも遅らせられる」と考えられています。

 実際、生活習慣によりがん死亡率が大幅に低い集団が存在します。欧米では約5人に1人ががんで死亡しますが、ユタ州のアルコール・コーヒー・タバコ・薬物・不用意な性行動を避けている厳格なモルモン教徒の集団では、がん発生率がアメリカ人一般の約半分と言われます。

 これらの事実は、生活習慣を改める事によって、がんを回避できる可能性を示しています。さらには、治療や再発防止にも一定の効果を期待できるでしょう。

「細胞競合」によるがん細胞の排除

 実は私達の体には、誕生したがん細胞を除去するメカニズムが元から備わっています。それは、1975年にショウジョウバエで発見された「細胞競合」と呼ばれる現象で、変異細胞を周囲の正常細胞が排除するのです。この現象はその後哺乳類でも確認され、がん抑制に大きな役割を果たしている事が分かって来ています。がん細胞のほとんどは上皮由来ですが、誕生したがん細胞が周囲の細胞から攻撃され、上皮組織から排除される驚くべき様子が観察されているのです。「細胞競合」によるがん抑制には、こうした物理的な排除以外に、貪食・増殖の抑制・細胞死(アポトーシス)の誘導も有ります。

 多細胞生物は膨大な数の細胞が寄り集まって、役割分担をし協力し合って1つの個体を形成しています。そして、個々の細胞は互いに信号をやり取りし、コミュニケーションを取り合って細胞社会を維持している訳です。そこに細胞社会の秩序を乱す異常細胞が出現すると、協力して異質な分子を排除して社会を守るメカニズムを生物は進化させて来たと考えられます。

 つまり我々の体を構成する細胞は、細胞社会の秩序を破壊するがん細胞を抑制し、排除する能力を元々持っている訳です。これは従来の、手術・抗がん剤・放射線によるがん治療とは全く異質のメカニズムによる治療の可能性、正常細胞を傷つける事なく、逆に正常細胞の本来の機能を高める事でがんを克服する新たな可能性を示しています。我々の一人一人が、がん細胞を排除する能力を持っていると言う事実は、強調してもし過ぎる事は有りません。がんからの生還の鍵は、我々自身が持っているとも言えるのです。


 希望を持ち続けよう

 大切なのは希望を持ち続ける事です。希望こそが免疫力を活性化し、病気を克服して明日を生きる活力を生 み出す源です。希望を失って絶望的になると、病気の進行が劇的に早まる事が知られています。手術後 3 か月の 乳がん患者を、病気への向き合い方で 4 つのグループに分けて調べた研究では、①がんと闘う、②粛々と日常に励 む、③諦めて絶望する、④がんである事を忘れるの 4 グループの内、はっきりとした違いが出たのは③の絶望したグ ループで、がんの進行が極端に早く、早期に全員が亡くなったと言います。他の 3 グループには大きな違いは無かったそうです。

 絶望とは反対に、希望は免疫力を高め治癒を促進します。在宅医療にこだわり「在宅ホスピス緩和ケア」を実践している日本在宅ホスピス 協会会長の小笠原文雄医師によると、家に帰りたいと懇願する寝たきりの衰弱した入院患者を、主治医の反対を押し切 って自宅に連れ帰ると、嘘のように元気を取り戻すという事が良くあると言います。著書の中でそうした例が幾つも挙げられています。その中には、病院では寝たきり状態 で生ける屍の様になっていた 87 歳の大腸がん患者が、死ぬ間際に虫の息で家に帰りたいと訴え退院すると、そのわずか 3 ヶ月後には喫茶店に行けるまでに元気を回復した例が紹介されています。この女性患者は、次のように話し ていたと言います。

「私はね、家に帰って来られて嬉しくて仕方ないの。だって病院では、ひっきりなしに看護師さんやお医者さ んが来てくれていたけれど、誰とも心が通わなかった。人は大勢いるのに孤独死しそうだったんです。でも 家に帰ってきたら、娘や看護師さんやヘルパーさん、毎日誰か一人は来てくれる。1 時間もいてくれる。お しゃべりもしてくれて心も通う。寝る前には「明日は誰が来てくれるのかな」、朝起きると「今日は誰が来てく れるのかな」考えるだけで嬉しくて、心が温かくなって・・・・。そう思って過ごしていたら、喫茶店に行けるよう になったんですよ。」 (『なんとめでたいご臨終』小笠原文雄著)


 死の間際の衰弱しきっていた女性患者が、退院 3 ヶ月で喫茶店に行ける迄に元気を急回復できたのは、「明日は誰が来て くれるのかな」「今日は誰が来てく れるのかな」と楽しみにする事が明日への希望を生み、それが奇跡的な回復に繋がったのだと思います。

 先に紹介した帯津良一医師も、医療における希望の重要性について次のように述べています。

どんな状況でも希望を持つことです。希望は場を高めます。場が高まれば自然治癒力が高まり、時には奇跡的に治ることもあるでしょう・・・・
ローマの名医ガレノスは、「確信と希望は医学よりも多くの善をなす」と言っています。また、外科学の父と言われるフランスのアンブローズ・パレは「患者に常に希望を与えよ、死が目前に迫っているように見える時にも」と言っています。希望は、医療に欠かせない永遠の真理なのです。 (『ホリスティック医学入門』帯津良一著)

 希望こそが、精神的に追い詰められた患者に生きる勇気と病気と闘う気力を与え、病気の克服を可能にする自然治癒力を高めてくれる本源的な力なのです。

 今日、生涯でがんに罹患する確率が 50%と言われる一方で、がんの死因に占める割合は 30%に過ぎ ません。つまり、がん患者の 40%は、がん以外の原因で死亡しているのです。また、<がん患者と栄養>で紹介した東口髙志医師によると、 多くのがん患者はがんで亡くなる訳ではなく、 その8割が感染症で亡くなっていると言います。その原因は免疫機能の低下で、それは栄養障害によって引き起こされているのです。つまり適切な栄養補給さえ行えば、免疫機能を維持し、がん患者の死因の8割を占める感染症を防ぐことが可能になるはずなのです。がんは決して不治の病などでは無く、がんに罹患したからといって将来が決まってしまう、希望が無くなってしまうという訳では無いのです。絶望せずに、希望を持ち続けて下さい。

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