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ママ起業家は優遇されるが、パパ起業家は優遇されなかった話し


この夏より、新卒から10年勤めた会社を退職し、独立してスタートアップの創業を目指すことにした。

そして、今は最後の有給を消化させていただき、起業の準備を進めている、、、というわけなのだが、一歩踏み出した先に待っていたのは、あるHARD THINGSだった。

私がぶち当たった問題も「日本で起業家が少ない理由」の一つかもしれないと思ったので、「スタートアップ担当大臣」や「政府や自治体でスタートアップ支援を担当する方」にどうにか届くと良いなと思い、書き留めてみる。


お役所の辞書に「パパが育児しながら起業する」というライフスタイルは、想定されていない

0歳の娘とわたし

具体的にぶち当たった問題は以下の2つだ。

① 育児×働く場所という問題
育児対応にも優しい「自治体運営のコワーキングスペース」に申し込もうと思ったが、ママ起業家は優遇されるが、パパ起業家は優遇されなかった…という問題

② 起業×保育園という問題
保育園に入りたいと思ったが、独立して一時的に無収入になると、保育園に入れる可能性が圧倒的に下がってしまう…という問題

起業するのは私の自分勝手といわれればその通りではあるのだが、「育児をしながら起業する」というライフスタイルは、今後もっとポピュラーになっても良い気がするので、このような問題は解決された方がありがたい。と思い、これらの私が直面した問題について記録する。


①ママ起業家は優遇されるが、パパ起業家は優遇されなかったコワーキングスペース問題

まず、育児しながらどこで働くかは重要な問題だ。

私は、在宅で仕事をすることを前提に独立したが、妻が育児休業中(そろそろ復帰予定)で、0歳の娘が家にいるため、やっぱり「仕事に集中したい時間」もあるので、徒歩圏内にオフィスがほしいと思った。

そこで、色々と探したが、独立したばかりで無収入の自分にとって、民間のコワーキングスペースは少し高額で手が届かず、収益が出るまでの間は在宅で頑張るしかないかな、と半ば諦めていた。

そんな折に、自治体が運営する「創業支援センター」がコワーキングスペースの入居者を募集している、という記事が目に入ってきた。「月5,000円」「ベビーカーでの入室可」「同ビル内に認可外保育園あり」とのこと、、、ふむ。これはやばい良い条件。

ついに天が味方したかと思い、早速、申込用紙を全て準備し、創業支援センターを訪ねた。

そして、スタッフの方に「子育てパパとして、育児にしっかりコミットしながら事業を行う育児起業家になりたい」などの事情をアレコレ説明し、コワーキングスペースに申し込みたい旨を申し出たところ、、、予想外のコメントが返ってきた。

  • 「うちの創業支援センターは、女性の起業、事業を後押しするコンセプトでして、、、」

  • 「コワーキングスペースの入居者は、今のところ全員女性しかおりませんで、男性からもお申し込みも受付自体はできるのですが、実際に入居できるかどうかは『品川区』の判断になりまして、、、」



まじか〜!

あんなに頑張って準備したのに、パパ起業家は全然歓迎されていないじゃないか〜!
600円もかけて住民票や納税証明書も準備したのに〜!
女性うらやましい〜、女性になりたい〜(なれないけど)!

立場によって様々な論点があるのは承知ですが、女性優遇とか言って、男性冷遇するのは、差別じゃないのかーーー???と思ってしまった…

いや、『区の判断』なので、100%入れないと決まったワケではないのだが、少なくとも「男性は歓迎されてない」という雰囲気をヒシヒシと感じてしまった。
そして、歓迎されていないコワーキングスペースで働くのは、自分の精神衛生上も良くないなと思い、結局応募を取りやめることにした。

女性活躍推進というテーマは、非常に重要なテーマだと思う一方で、時と場合によっては、男性を優遇しないという方向性を生み出すことがあり、それにより排除され傷つく男性もいる。

そして、それが創業支援という文脈においては、育児しながら起業を頑張りたい「パパ起業家」は支援されにくい状況に繋がってしまうという、問題にぶち当たった。


②起業して一時的に無収入になると保育園入れない問題

0歳の娘とわたし

そして、さらに我が家をHARD THINGSは襲います。

保育園問題は、うちの家族にとっては極めて深刻な問題。うちの家族構成は以下です。

私(夫):起業(ひとまず個人事業主として開業するが当面は収入なし)
妻:フルタイム(育児休業中、早期復職希望)
娘:0歳

この三人家族の構成で、妻の復職に向け、保育園の入園準備を進めてきました。今までは、自分も10年間フルタイムの会社員として働いていたため、「フルタイムで働いていれば、保育園に入ることができる」と安易に考えていました。

しかし、実情は、非常に厳しいものだったのです。。。

私が住んでいる品川区の保育園のルールは以下の通りです。

保育園に利用申請ができるのは、保護者が次のいずれかの、お子様の「保育を必要とする事由」に該当する場合のみです。
①就労 月12日以上かつ1日あたり4時間以上の就労を常態とすること
〜中略〜
⑥求職 求職活動(起業準備を含む)を継続的に行なっていること

出典:品川区(2022)保育園のご案内,https://www.city.shinagawa.tokyo.jp/ct/pdf/hpg000029931_88.pdf,pp12,2022年8月22日閲覧

→ まず前提条件としては、上記の通り、まず「起業=就労」をしていれば、保育園に申し込む権利はありそうだ(ここは一安心)。

出典:品川区(2022)保育園のご案内,https://www.city.shinagawa.tokyo.jp/ct/pdf/hpg000029931_88.pdf,pp8,2022年8月22日閲覧

→ しかし、
「そんなに簡単に入れると思うなよ?」とシナモロールが語りかけてくる。
・・・むむ。では、その選考基準とは、どんな感じなのか…?

夫も妻もフルタイムなら20点×2で40点をゲットできる仕組み。
起業準備の段階だと、それは8~12点に下がってしまう仕組み。

→両親ともにフルタイムで働くことで合計40点をゲットできる仕組み。過去の実績をみると、「40点を下回るとほとんどの保育園に入れる可能性はなくなる」といった感じ。。。
なるほど、なるほど、、、。ということは、「起業(自営業として開業)」してフルタイムで働いてます〜ということで申請すればクリアできるのかな?と思い、細かく注釈を見てみると。。。

*外勤・自営の指数認定の際は、原則として時給または東京都の最低賃金で収入を割り返して、勤務時間を算出する。

出典:品川区(2022)保育園のご案内,https://www.city.shinagawa.tokyo.jp/ct/pdf/hpg000029931_88.pdf,pp60,2022年8月22日閲覧

→ ガーーーーーン!自営の場合は、実際に稼働していても、収入がないと『勤務時間ゼロ』と見做されてしまう、という記載。汗汗
つまり、創業初月から最低でも17万円くらい(最低賃金1,072円×20日×8時間=171,520円)は収入がないと20点取れないという計算になる。。。これはやばい。
「当面無収入にはなるけど、社会に貢献するためだし、創業赤字くらいドンと来い!」というマインドでいたけれども、、、保育園という観点では、これではダメそうだ。

うちの家族にとって、「保育園入れない」=「自分が起業を諦めて育児に専念する」or「不本意ながら妻が職場復帰を遅らせる」という2択になってしまう。

そうすると、私が取りうるオプションは一つしかなくて、「創業初月から、個人事業主として『起業以外のことで』最低限の事業収入を獲得しながら、起業する」ということになる。。。仕方ないので、その方向で進めようと思うが、いや〜待て待て。本質から離れている気がする。。。というジレンマ。

政府や自治体のスタートアップ支援が充実してきて、いろいろな支援策も打ち出してもらっていて、とても感謝もしているのだけれども、この保育園制度のルールこそが、潜在的に会社員から独立してスタートアップを創業しようという気持ちを阻害する要因になっているのではないだろうか。

スタートアップ担当大臣様よ!まず、この問題を何とかしてほしい。

逆に、自分に何かできることはないか?スタートアップ起業家の先輩たちだったらどのような打ち手を打つだろう?別解はどこにある??など、折角実体験として自分がペインを感じたので、色々と考えてみたいと思いました。

それでは、今日はこの辺りで。

まとめ

  • 日本は、随分とスタートアップ支援の制度が充実してきていて、本当に良い時代になったと思う。

  • でも、「ママが育児しながら起業する」ことは想定されていても、「パパが育児しながら起業する」というライフスタイルは、現状の制度上では想定されていない。

  • 「パパ育児起業家」は希望していた自治体の支援(コワーキングスペースの活用)を実態的に受けることができない。

  • 「パパ育児起業家」は、創業赤字を掘った瞬間に保育園から追い出される。

  • これらの問題を解決しなければ、パパでもママでも、誰でも思い立った時にスタートアップを創業できる世の中にはならない。

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