日本画に挑んだ精鋭たち ー 山種美術館
note上では暑さをしのぐ美術館特集みたいになってしまっていますが、元々私は混雑するお盆の時期は例年遠出を控え気味です。都内は空いているだろうとの見込みで山種美術館に足を運びました。(期待したほど空いてはいなかったのですが。。)
山種美術館は、私が愛する東山魁夷さんの京洛四季シリーズや速水御舟さんの「名樹散椿」を所蔵されているので定期的に訪れています。
今回は、それらの作品は展示されていませんが(今年は9月30日から11月26日まで展示されるようなので、極力椿の時期に近い後半に訪れる予定です)、菱田春草さんなどの作品が展示されているとのことで、新たな出会いにも期待しつつ訪問しました。
いつもながら美術の教養や知識を道合わせぬ素人の私が好きになった作品の感想を並べてまいります。
尚、後述する白芙蓉以外は撮影不可でしたので拙い文章のみにて失礼します。
「雨後」 菱田春草氏作
そのタイトル通り、麓を覆う霧の遠景に雨後に霞む私好みの山嶺。近景に涼やかな水の流れが描かれている掛け軸です。
全く派手さはなく、強く主張する対象も無いのですが、観ていると穏やかな優しい気持ちになれる作品です。度々別のところでも書いている通り、私が好きな山、霧、水の流れという主題のせいなのか、その色使いと柔らかな朧げな筆致のせいか。自身の感情の合理的な分析は行き届かず、必要でもないと開き直っていますが、好きな惹かれる作品です。
「牡丹雪」 上村松園氏作
上村松園さんは美人画を得意とされる作家さんですね。私は美人は好きでも美人画は特に好きという訳ではないのですが、この作品はその空間が惹かれる作品です。
牡丹雪が降る中、美しい絞りの帯を締めた傘をさした女性と後ろにもう一人の女性が繊細に描かれています。傘の牡丹雪の積もり方に妙な不自然さは感じるものの、左下に描かれた女性たちに牡丹雪を降らせる右上の空の広がりと奥行きに、あぁ、ゆらゆらと寒空に美しく牡丹雪が待っていると目が惹きつけられるのです。
その空間の美しさに惹かれる作品でした。
「滝」 横山操氏作
黒々とした岩の渓谷を真っ直ぐに落ちる荒々しくも神々しい滝。
抽象的で力強い筆致で、モノトーンながら多彩な色使いで描かれた怖さと吸い寄せられるような引力を同時に感じる荒々しい岩の壁。力強く山嶺の霊気を迸らせながら真っ直ぐに落ちる滝。単純な構図ながら妙に心に残る作品です。滝と言えば最近は千住博氏の作品をよく見かけますし、この日も大きな作品が展示されていたのですが、あちらの表現よりも、この横山氏の描く滝に、かつての人々が神性を見た山中の厳かな滝の姿があるように、私には感じられました。
その他、岩澤重夫さんの作品も展示され、展示作の中国西安そのものにはあまり感じるものがなかったのですが、子供の頃に成川美術館で見た同氏作の若葉薫る山々の作品を思い出し、再び見たいとの思いを抱きました。
「白芙蓉」 速水御舟氏作
展示作品の中で唯一撮影可能な作品です。
この作品では、主題である彩色された白い芙蓉よりも寧ろ、淡いモノトーンで描かれた葉の描かれ方に惹かれてしまいました。素人のおかしな戯言です。
一通り巡った後、もう一度気に入った作品の前でしばらく忘我の時間を過ごすといういつもの鑑賞方法で堪能させていただきました。
一通り鑑賞した後、いつもこちらの美術館では1階の喫茶コーナーで寛ぎます。
いつも頂くのは主菓子とお薄。
こちらでは具象に過ぎてやや子供じみた姿のお菓子が多く、それはあまり好まないのですが、そんな中でも控えめで姿の美しい、上述の白芙蓉を模ったこちらのお菓子を頂きました。大変美味でした。
ゆったりとお盆の休日を過ごせた良き時間でした。
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