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#11リカバリーオブメモリー

「やはり、記憶の回復を試みるしかないようですね……」
私の研究チームの結論はこうだった。

どんなストレスが彼の精力の源なのか。
それが彼女たちの最大の関心だった。

記憶の回復には最新鋭の電子催眠術機が使われる。
まだ実験段階の機器だ。

脳内の海馬部位と視覚野に一定の間隔で電気ショックを与え、
それと同時に聴覚刺激と薬物洗脳を行う。

失われた記憶のリカバリーの技術は理論上は可能だった。
しかしまた未完成の新技術なため後遺症が残る危険性がある。

ストレスと言っても多種多様なものがあり、
どのようなストレスが精力を高めるのか解らなければ
指導要領を作りようがないのだ。

これは賭けだった。
しかしそれだけ彼女らの関心は高かったと言える。

僕の頭に電子催眠術機が取り付けられる。
よく分からない注射も打たれた。

「楽にしていてください。
そして頭の中のものをそのまま記録します」

!!!

今までの感じと違って凄く気持ちが悪かった。
いろいろな視覚情報が頭の中を巡って混乱する。

「うあああああああああああ!!!」

「血圧、心拍数上昇。
脳内画像のエンコードを開始します」

またも、僕の記憶がハードディスクに記録される。
どうも、僕の失われた記憶を知りたいらしい……。

「うぁああああああああああ!!!」

僕は洗脳ミュージックとともに
一度失われた記憶が……蘇ってくる。

その視覚ビジョンがハードディスクに記録された。

「エンコードを終了します。実験は成功です。
画像解析チームにデータを送ります」

「はぁっ! あぁっ! ……うぅ……」
僕は思い出してしまった。あの悪夢の記憶を……。

「ぐっ……!」

僕は強く歯ぎしりをした。
でなければ僕の心は砕けてしまうに違いない!

僕にまた注射が打たれた。
どうも麻酔薬のようだ。

僕は意識がなくなり、
いつもの独房スイートルームに運ばれる。

「画像の解析が終わりました……。
ようやく検体のトラウマがわかりましたよ」

それは最愛の恋人の死だった。
彼女は貧しくして栄養失調で亡くなったようです。
滋養のために彼は精液を飲ませようとした……。

しかし生活が貧しいため、すべてそれを売ってしまったのです。
それで彼女は栄養失調で亡くなってしまったというのだ。
彼は彼女のためにずっと精液を出し続けていたようです。
でも、結局彼女が助かることはなかった……。

「……。非常に興味深い結果でした」
「では、恋人の死が精力を高めるということですか?」
「率直に言えばそういうことだと思われます」

「では早速、教育要領に殺人鬼の映画の強制鑑賞と、
と肉体暴力と性暴力のやり方を習わせましょう……」

「教師たちにいじめを積極的にする生徒を
特別扱いさせるというのはどうでしょうか?」

「なるほど、それは良いアイディアです!
このことを教育心理士に伝えましょう。
今回の実験が成功して本当に良かった……」

畑由実は “実の弟” の勤にそんな過去があったことに
深く絶望し、自分がこの研究リーダーであることに
怒りと悲しみを覚えた。

実は私は、生まれてすぐに養子に出された。
エリートの道を歩むために、
知能検査する前から学校の勉強をさせられた。

弟が生まれたときには、
すでに小学校の主席になっていた。

だから私は勤のことを資料で全て知ったつもりになっていた。
でも、実際は違った……。

勤には私のことはまだ話せない。
ストレスからの開放してあげなきゃ!

…………。

「……畑チームリーダー? どうされました?
顔色が優れませんよ……」

「いや、何でもありません。続けてください」

私は勤を助けることを心に固く誓ったのだった。
(……でも、どうやって助ければいいの?)

私は今どうしたらいいのか、
自分にできることが全く想像できないでいた……。

私がより長く生き延びるためにサポート下さい。