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【ベルリン留学記】「ウチ」と「ソト」のグラデーション

朝5時。
うっすらと白んでくる空と、カーテンの隙間から差し込んでくる光を感じながら、また夢の中に潜り込むように二度寝をする。

ベルリンに来て1週間。

早すぎる日の出にも、
遅すぎる夕暮れにも、
首都であるにもかかわらず圧倒的に少ない人出にも、
そろそろ慣れてきた。

そこで、この1週間での気づきを備忘録的にまとめておこうと思う。

***

ベルリンを一言でまとめるなら、「『ウチ』と『ソト』が混ざり合う空間」だと思う。

場所も、人間も、中と外の境界が明確になっておらず、
そこらじゅうでグラデーションが生まれているまち。

青空の下で、涼しい風が頬を撫でる中で、
新しく知り合ったひとと語り合うこの環境は、
あまりにも新鮮で、刺激的で、とても心地よいものだった。

***

場所のグラデーション

東京のまちは、建物の中と外がくっきり分かれているように感じる。

何か食べようと思ったら、まず店の中に入って、店の中で食事を済ませて、また外に出る。仕事をするときはオフィスに入って、仕事が終わったらオフィスから出て行く。
まるで、建物に入ることと出ることが、そのまま行動の切り目になっているように、人々は「ソト」と「ウチ」を行ったり来たりしているのだ。

しかし、ここベルリンでは、建物の中と外の境界をあまり感じない。

大抵の店にはテラス席が用意されていて、食べ物を買ったらテラス席で食べる。
公園がそこらじゅうにあるので、スーパーで買ったお菓子を、公園の芝生に座って食べる。
至る所にベンチが設置されているので、木陰のベンチに腰掛けて、読みかけの本を読む。

「ウチ」と「ソト」が地続きになっていて、その「あいだ」で人々が生き生きと生活している。

1週間過ごしたベルリンは、そんなまちであるように感じた。

Unter der Lindenの中央には、kioskやテラス席が設置された大通りがある。
夕方にはここでビールを飲んで歓談している様子が見られる。
教会前の広場で定期的に行われているフリーマーケット
Bundestag(国会議事堂)の前の広場。たくさんの人がピクニックをしている。

人間関係のグラデーション


東京では、店員以外の見知らぬ人と話すことはほとんどない。

小さい頃から「知らない人に話しかけられてもついて行ってはいけない」と口すっぱく言われるように、日本でいきなり話しかけてくる見知らぬ人は「危ない人」だと思われてしまうのだ。

しかし、ベルリンでは、道端で知らない人と言葉を交わすことは日常茶飯事。

ベルリン到着初日。
切符の買い方がわからず、友達と券売機の前で立ち尽くしていた時、
お兄さんが「なんか手伝うことある?」と声をかけてくれた。
切符の買い方から、目的地までの行き方まで教えてくれて、
初めてのまちで、心を埋め尽くしていた不安が少し和らいだ瞬間だった。

***

地下鉄の入り口が工事で塞がっていたとき、
別の入り口がわからなくておろおろしていたら、道端のおばちゃんが別の入り口まで連れて行ってくれた。

そして
「ベルリンはどう?」
「日本はコロナも情勢も大変そうだけど大丈夫?」
などと話をしてくれて、

「ベルリン楽しんでね!また会えたら嬉しいわ」
の一言でお別れをした。

***

とある本で、日本のコミュニティは「内側に向かって閉じる」傾向があるという記述を見つけた。
それが日本に固有のものなのかどうかはわからないが、少なくともベルリンでは、まったくの他人同士であっても助け合ったり、声を掛け合ったりすることがある。

これから会うことはもうないかもしれないけど、
こうやって人と人とのちょっとした接点が毎日生まれていくことは
まるで無機質な部屋にきれいな花を飾った時のように
日々の生活に彩りを与えてくれる。

ブランデンブルク門の広場で、子供たちに向けてシャボン玉遊びをしている青年


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