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マーケティングツールのよくある悩みと導入前に整備すべきもの


小木曽です。たくさんのマーケティングSaaSを提供するクラウドサーカスという会社で、カスタマーサクセスの立ち上げ&組織化などを経て、現在はデジタルマーケティンググループのマネージャーをやっております。

先週は「いかにデジタルマーケティングの文化を組織に根付かせるか?」といったテーマのnoteを書きました。


今回お伝えしたいのは、マーケティングツールの導入についてです。


一昔前の”システム(ツール)導入”といえば大きなIT投資でしたが、昨今では初期投資を抑えて導入ができる”SaaS”が主流になりつつあり、機能制限付きのものを”無料”で使い続けられるフリーミアムモデルのサービスも増えています。


マーケティングやセールス関連のツールにおいてもその傾向はもちろんあり、弊社も数年前からMAツール電子カタログ作成ツールといったSaaSのフリープラン提供しています。

業種問わず”デジタル化””DX”への対応が急がれる今だからこそ、無料から始められるサービスを活用しながらマーケティングやセールス分野のデジタル化も進めていただきたいなと、個人的にも思っているところです。


ただ一方で、ツールを入れたものの成果につながっていない(実感していない)企業も多く存在するのも実情ではあります

MAツールひとつとっても、「シナリオがまったく使えてない」「初期設計に時間かけたものの運用が回ってない」「管理画面が複雑で一部の人間しか使っていない」といった相談を受けることが多々あり、せっかく時間とお金をかけて導入したツールが無駄になってしまっているようです。

ちなみにこれは今に始まったことではなく、例えば私が社会人になった2013年にも「CMSを組み込んでWebサイトを制作したけど全く活用できていない」といった声をもらうことが多々ありました。コストをかけようがかけまいが、ツールを使って成果に繋げられない層は一定数存在しますし、ゼロにはできないものなのだと思います。

そんな中で私が危惧しているのは、SaaSの普及により導入ハードルが下がった結果、安易にマーケティングツールに手を出したものの「やってみたけど成果が出なかった、うちには合わない」と諦めてしまう企業が増えてしまうことです

せっかく新しいことにトライしたのに、"使ってみたけどダメでした"で芽が摘まれてしまうのは残念すぎるなと、、、ずっとカスタマーサクセスをやってきたからかもしれないですが、どうしても担当さんたちの苦労を考えると、なんとか成果に繋がるように活用してほしいものなのです。


そこで今回は、「やってみた/使ってみたけど成果が出なかった」という声が少しでも減らせるように、これまで聞いてきた”よくある悩み””導入前に整備すべきもの”について書いて参ります。

企業によって状況は異なるとは思いますが、「ここまで準備しておけば比較的安心だよね」といったレベル感で書いています。全部が全部は難しくても、少しでも参考になる箇所があれば幸いです。


マーケティングツールに関するよくある悩み

まず、マーケティングツール導入後のよくある悩みについていくつか例を挙げます。すごく抽象度が高い書き方になってしまっているのですが、このくらいの相談をCS時代によくもらっていました。

【マーケツールに関するよくある悩み】
どう使えば有効かがわからない
成果が出ているのかがわからない
他部署の協力が得られない
運用リソースが足りない

どう使えば有効かがわからない

ツールをいれたものの、どのように有効なのかがわからないケースです。提案を受けて、なんとなくやるべきことは見えたものの、「何からやればいいのかがわからない」「どんなメールを送ればいいのかわからない」など、いざ自社に置き換えた時に優先順位をつけられず、またノウハウがないため施策が進まない、というケースがしばしばあります

導入前に管理画面を触ったり、具体的にやりたいことのデモを見たりするのはもちろんですが、自社の状況に置き換えた使い方をしっかりと想定しておきましょう。もし仮にノウハウがない場合は、具体的な施策までサポートしてくれるツールの導入、もしくは支援会社への依頼がおすすめです。


成果が出ているのかがわからない

施策を打ってみたものの最終的な成果がわからない、といったケースもしばしばあります。ここでいう成果というのは、単なるコンバージョン数のことというよりはビジネス的な成果、つまりは売り上げや利益にヒットしているのか、です。

特にBtoB企業でのデジタルマーケティングの施策は、後述する通りインサイドセールスやフィールドセールスとの連携が不可欠で、FBをもらいながらリードの質までも追っていく必要があります。そうでないと、例えば資料ダウンロードは増えているけど実際は売り上げにつながっていなかったり、メルマガから反応はあるけど商談につながっていなかったりしていた時に、検知すら難しいのです。


また、ツールを導入するにもコストがかかるので、費用対効果の説明については必要不可欠です。その時に成果が明確に提示できないと、費用に対しての効果が証明できず、予算の削減などにもつながり、負のスパイラルが回っていきかねません。


他部署の協力が得られない

いくらツールを使いこなしたとて、最終的には他部署とうまく連携ができなければ成果につなげることはできません。

メールマーケティングの施策を打ってもインサイドセールスやフィールドセールスと連携が取れなければ機会を逃してしまいますし、ダウンロード資料(ホワイトペーパー)や事例の拡充も他部署の協力がなければ難しかったりもします。

また、コンバージョンに対しての定性的な評価を他部署からもらうことで、より成果につながるリードの獲得に業務を集中できます。逆にそのFBがもらえないと、想像の中で施策を打つことになり、とても効率が悪くなってしまいます。

この部門間連携のハードルが高く、悩んでいる担当さんの声をこれまで何度も聞いてきました。


運用リソースが足りない

ツールを入れたものの、思ったようにリソースが避けずに運用が回らないケースです。これは兼任でやられてる企業が特に多いのですが、主となる業務が別にあるが故に、どうしてもマーケティング業務が後回しになってしまうのです。

新しいことを始めるには、ある程度まとまったリソースが重要です。何にどのくらいの時間がかかるかは事前に想定した上で、担当をつけることが重要です。仮に兼務だったとしても、新しい業務に取り組みやすい空気を作れなければ、施策も進みにくくなります。

また、そういった空気作りは経営者などの役員クラスが作っていかないとなかなか難しいです。後述するように部門間の連携なんかも多々発生するところなので、そこはしっかり経営含めコミットしていきましょう。


ツール導入以前に整備すべきもの

よくある悩みは共通しているものの、組織ごとの事情はケースバイケースです。なのでこの章では、「これらが整備できていればツールも有効に使えるだろう」といった内容を紹介します。

ここまできっちり進めるのは難しいと感じられるかもしれませんが、中途半端に走り出して頓挫し、再スタートするくらいであれば最初にエネルギーをぶち込んでおいた方が結果的に楽なので、ぜひ一つ一つ実行して頂けたらと思います。

【ツール導入以前に整備すべきもの】
全体戦略
目的と目標
施策のロードマップ
実行のための体制
相談できる伴走者
社内推進者の理解と協力
小さな成功体験


全体戦略

まず第一に、ツール以前にマーケティングの全体戦略を設計する必要があります。

どういったターゲット・市場に、どうアプローチしていくのか。自社の強みはどこであって、どんなバリューを提供できるのか。ハウスリストをどれくらい持っていて、どのくらいアプローチが可能なのか。既存顧客からの売り上げはどのくらい上がっているのか。


などなど、大前提となる自社の情報を整理した上でマーケティング戦略を立て、その中でいかにデジタルを活用していくのかを考える必要があります。

極端な話、ターゲットによってはそもそもデジタル施策がまだ有効でないかもしれません。ちゃんと狙いたい業界の知識や慣習なども踏まえた上で、戦略を決めていく必要があります。

また、どうしてもデジタルマーケティングというと「新規顧客獲得」に頭がよりがちですが、既に自社が持っているアセットを加味した結果、必ずしも新規だけに注力することが最善解でないこともあります

例えば新規の顧客からの売り上げを伸ばすのではなく、既存顧客にメルマガやセミナーを実施して単価を上げていったり、クロスセルを最大化するためのオペレーションを改善したりと、売り上げを増やす方法は新規顧客に限らずたくさんあります。高い視点から、戦略を設計していくようにしましょう。

ここが緩くなってしまうと後々の目標設定や施策のロードマップ、体制など各方面に影響が出ますので、しっかり腰を据えて検討することをお勧めしています。


目的と目標

戦略が決まったら、デジタルマーケティングに期待するもの(目的)と目標を設定します。なぜオンラインからの案件創出が必要なのか、デジタルを活用してどんな変化を起こしたいのか、何年後にどうなっているのが理想なのか、などを整理して目的を明確化します。

目的が定まったら、続いては具体的な目標を設定します。BtoBであれば最終的にどのくらいの受注が必要で、そのためには何件の商談が必要で、それにはどういったリードをどういったチャネルからどのくらい獲得して…みたいなものを設計していくイメージです。

このときに、設定した目標が現実的でない場合は戦略もしくは戦術レベルでの再考が必要です。関連ワードの月間検索回数が1,000回に満たないのにSEOを軸とした集客で100件の有効商談を創出するとか、明らかに現状の数値からしても難しい目標となった場合、そもそもの全体戦略から考え直す必要があります。


施策のロードマップ

目的と目標が決まっていたら、実施計画を立てます。半年後1年後、それ以降の目標に対して、毎月どんなことをどれくらい実施する必要があるのかを設計します。


このときに重要なのが、初めから120点の計画を目指すのではなく、ある程度のところで走り出し改善していくことです。仮説を立てずに進めるのは論外ではあるものの、実行するまで見えない要素もあるので、仮説立て→実行→改善をスピード感を持って回していきましょう。

ただし、ある程度のところで走り出して良いのは施策ベースの話であって、戦略については先述の通りしっかりと練ってから進めてください。施策は個々でやり直しが効きますが、戦略については多くの部門を巻き込んで平行で進んでいくこともあり、後から変更するコストが大きすぎるからです。

戦略と施策への考え方を混同しないように、注意してください。


実行のための体制

計画を立て、いざやるぞとなった際に、肝心な実行リソースがなかったら意味がありません。施策のロードマップを立てたからには、現実的に実行できるリソースは確保しましょう。

企業によってはそもそもマーケティングの部署が存在しなかったりもするので、どうしても兼任でスタートをせざるを得ないこともあります。それはそれで仕方ないのですが、しっかりと役割としてコミットできる体制が重要です。

過去に支援していたお客様で「仕事中にWebの更新をしていると遊んでいると思われる」と嘆いている方がいました。これはあまりに極端な例ではあるものの、担当者が施策に時間を割くことに対してネガティブな空気が流れないように、事前に社内の理解を得るようにしてください。

また社内の理解を得る際に、目標やロードマップを共有してしまうのも有効な手段です。クラウドサーカスでも「DPOメソッド」というロードマップを使用して顧客のデジタルマーケティングを支援しているのですが、下記の声のように社内への理解や施策の説明にも役立つのではないか、と考えています。

また、弊社のようにWebサイトの管理をする人数が少ない場合では、社内メンバーを巻き込んでいくときにも役立つなと感じています。Web担当者だけがWebサイトに関わっていて、社内の人になかなか理解してもらえないとき、「DPOメソッド」のような客観的なものがあるのはいいですね。

私自身は経営者の立場でWebサイトを見ていますが、他の会社のWeb担当者の方だと次に何をしないといけないかということを上司に伝える際にも役立つのではないかと思います。

問い合わせが10倍に!BtoBのニッチな専門業界でもWebマーケティングの効果を実感/株式会社ナレッジワイヤ

こういった空気作りも含めて、円滑に施策が実行できるような体制を整えるようにしましょう。


相談できる伴走者

施策を実施する中で、必ず疑問点や不安点が生まれてきます。そんな時に相談ができる人がいないと、モヤモヤを抱えたまま施策を実施することになります。また、時間が限られる中で最大の成果を生むためには、より効果的なやり方をする必要があり、そうなると気軽に相談できる伴走者が必要です

最近ではマーケティングツールベンダーでも、カスタマーサクセスの部署が置かれていることが多いです。もしそういった外部のサービスが利用できるのであれば、積極的に活用していきましょう。


社内推進者の理解と協力

デジタルマーケティングは担当者だけが頑張れば良いのか?いえ、そんなことはありません。なぜなら、施策を成果につなげるには部門間の連携が不可欠だからです

例えば「Webサイトからどんな問い合わせが欲しいのか?」という問い1つとっても、フィールドセールス側との連携が必要ですし、間にはインサイドセールスやプリセールスが入ることもあります。

また、仮に受注確度が高かったとしても導入後の活用が進まずすぐに解約になってしまう場合は、どういうリードが理想なのかをカスタマーサポートやカスタマーサクセスとすり合わせる必要があります。

この「部門間の連携」は口でいうのは簡単ですが、実行するのはそれなりにパワーが必要です。そこで重要となってくるのが、社内推進者の理解と協力なのです。

定期的なMTGを企画したり、部門間の折衝をしたりするタスクは、社内においてそれなりの推進力と影響力が必要です。もし本気でマーケティングツールの導入と活用をしていくのであれば、社内の推進者を巻き込むことを意識していきましょう。


小さな成功体験

ここまで戦略やら何やら小難しく書いてまいりましたが…ここまで綺麗にステップを踏めるのはトップダウンでなければ難しいかもしれません。ただ一方で、安価なマーケティングツールが台頭してきてからは担当〜課長クラスからボトムアップでツールの活用を推進するケースも増えています。

もちろんそういった場合も、戦略から目標設定、ロードマップなど同様の流れを踏んでいけたらベストです。ただ、いきなりそこに食い込める立場ではない、でも明らかにデジタルマーケティングはやっていくべきだ、というときはもう少し違った攻め方が必要です。

その時に重要となるのが、小さな成功体験(クイックウィン)です。「このツールを使えば、こんな成果が見込める」という肌感覚と実績を得るために、ミニマムで何かしらの成果が生み出せていると、社内も巻き込みやすく上申もしやすくなります。

そういう時にこそ、ぜひフリー版のマーケティングツールが有効なのではないかと考えています。というか、そういう導入の仕方が年々増えているように感じています。


実際にフリープランからはじめていって、本格稼働に乗せて行った事例インタビューも掲載されています。まずは使ってみて、これならいけるなと判断してから実導入する、みたいな流れです。

2020年の7〜9月の間にフリープランを試して「これならいけるな」と判断し、9月末にはデータ移行をし10月からは本稼働させました。それまで利用していたSaaSに登録していた顧客データに加え、全営業マンからは名刺を集めて一気に取り込みました。

部署を拡大するほど成果を実感!デジタルマーケティング経由の案件も50件以上獲得/トーテックアメニティ株式会社 産業システム事業部


もちろん、いきなり有料版からスタートするのも全然ありです。そもそもフリー版では機能が制限されるので、やりたいことが実現できないかもしれません。

ですが、まずはミニマムで十分かつ体制などが整っていないのに、いきなり有料ツールを入れて費用対効果を理由に打ち切られてしまうくらいなら、まずは無料から使えるツールでイメージを作っておき、そこから導入に向けて動いていくと、スムーズに活用まで進めていけると考えています。

とはいえそういった場合でも、ある程度の使い方のイメージがないと時間と労力が無駄になってしまうので、最低限の仮説と使用イメージは持った上で、使ってみることが大事です。なのでまずは、弊社に限らずツールベンダーに一度相談してみるのが良いのでは?と思います。


ツールはあくまでツールでしかない

どんなツールも成果に繋がるかどうかは使い方次第です。安価に導入できる時代とはいえ、まずは戦略や目的あってのツールなので、もし仮に手段と目的が逆転していると気づいたら一度立ち戻って考え直すことをおすすめします。一度トライして失敗を経験してしまうと、次に導入する時のハードルが上がってしまうからです。

今回の話は一般的な流れであって、実際の組織内の事情は千差万別です。ですが、部分的にも共感できる&参考になる内容になっていたら幸いです。

以上、最後までお読みいただきありがとうございました!


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